13 / 33
<第四章 第3話>
しおりを挟む
<第四章 第3話>
装填が完了した。回転弾倉を戻した。
まだ、空き瓶は飛んでこない。
一瞬、ホッとした。
その瞬間、銃声が響いた。
視線を向けると、一番右端の中隊が、発砲したようだ。銃身の長いリボルバーを持った中隊長は、四十メートル近く離れている。
この距離では、お互いに命中しない可能性が高い。一番端の中隊は、無視することにした。
梁の右端から、右ななめ前方の中隊と、絞首刑台の正面の中隊に対し、二発ずつ発砲した。その後、梁の中央まで移動し、左前方の中隊に、二発撃ち込んだ。
六発全弾、撃ち尽くした。
回転弾倉を開けて、空薬莢を排出した。
「赤毛の女は、弾切れだぞ!」
また、ジャン=ジャックが叫んだ。
だが間髪入れず、ルビー・クールが大声で叫んだ。
「まだまだ、弾丸はあるわよ!」
ジャン=ジャックのほうを向き、見せつけるように、右膝をたてた。左膝を梁の上について。
ロングスカートの右裾を、まくり上げた。太ももの付け根まで。
弾丸ベルトが二本、現れた。太ももには、白い手製弾丸ベルトが、二本巻かれていた。二本とも十八発入りで、そのうち六発が徹甲弾だ。
右の太ももだけではなく、左の太ももにも、弾丸ベルトを二本巻いている。左の足首の外側にもホルスターを装着し、三十二口径のリボルバーを収めてある。
すでに徹甲弾は十二発使ったため、残りは十二発だ。
十月の市民ホール占拠事件のときは、弾丸ベルトを、左右の太ももに、一本ずつしか巻いていなかった。二挺のリボルバーに装填してある弾丸を含めて、身につけていた弾丸数は四十八発。そのため、百五十名のテロリスト相手に、苦労した。そのときの経験を、踏まえることにした。二ヶ月ぶりの平民区への訪問となった今回は、弾丸ベルトを左右二本ずつ巻いておいた。まさか、一万人と戦うはめになるとは、想像もしていなかったが。
ルビー・クールは、徹甲弾を弾丸ベルトから抜き取り、回転弾倉に詰め始めた。
ジャン=ジャックは驚愕の表情で、怒鳴り散らした。
「なんなんだ! おまえは! なんでそんなにたくさんの弾丸を身につけているんだ! それに、その弾丸は、なんなんだ! ふつうの威力じゃないだろ!」
ルビー・クールが、怒鳴り返した。わざと大声で、広場中に聞こえるように。徹甲弾を、装填しながら。
「知らないなら、教えてあげるわ! この弾丸は、軍用の徹甲弾よ! 貫通力が、ふつうの拳銃弾より、はるかに優れているわ! 人間の身体なんて、何人でも、スパスパと貫通して穴を開けるのよ!」
ジャン=ジャックが怒鳴り返した。
「なんでおまえが、そんなものを持っているんだ!」
「決まってるでしょ! あなたのような悪人どもと、戦うためよ!」
「我々は悪人じゃない! 我々は革命家だ!」
「違うわ! あなたたちは、革命家の名を騙るただの犯罪者よ! なぜなら、罪なきおんな子どもまで殺すからよ」
「罪なら、ある!」
ジャン=ジャックが声を張りあげた。
「貴族は我々を抑圧し、資本家は我々を搾取している! ゆえに、貴族や資本家は、おんな子どもであっても殺すべき罪人なのだ!」
「その話は、聞き飽きたわ! 二ヶ月前の南二区の市民ホールでね!」
ジャン=ジャックは、絶句した。まさか、ルビー・クールが市民ホール占拠事件の際に、現場に居合わせたとは、思いもよらなかったのだろう。
「おまえは、人質の生き残りだったのか!」
「違うわ。あたしが人質を解放したのよ。百五十名のテロリストと一人で戦ってね」
ジャン=ジャックは、また、絶句した。
ルビー・クールは、好機と見て、たたみかけた。
「あなたたちは、もう終わりよ。ここで、あたしに殺されるか、治安出動した帝国陸軍に殺されるか、そのどちらかよ」
そこで、一呼吸置いた。
大きな声で、叫んだ。広場にいる一万人全員に、聞こえるように。
「あなたたちも知ってのとおり、帝都防衛軍は五十万人よ! 兵士が所持する歩兵銃の徹甲弾は、あたしの拳銃の徹甲弾より、はるかに貫通力が高いわ! 帝国陸軍が治安出動すれば、あなたたちは皆殺し! 死にたくなければ、帝都から早く脱出したほうが良いわよ!」
帝都のすぐ隣には、帝国陸軍の中央基地がある。帝都を守る最終防衛部隊のため、通称、帝都防衛軍と呼ばれている。だが実際には、大規模戦争が起きると、十万人を残して、四十万人が戦場に派遣される。そのため、帝都防衛軍という通称は、実態と一致していない。
法律上は、帝都で警察が収拾できないほどの暴動や革命が発生した場合、帝都防衛軍の一部が、治安出動することになっている。
とはいえ、帝都防衛軍が治安出動するのは、早くても四日目以降だろう。最初の三日は、警察大臣が、警察力で暴徒を鎮圧しようとするはずだ。三日以内にそれができなければ、帝都防衛軍が治安出動するはずだ。六月のゲート襲撃事件のあと、ある新聞の社説に、そうした予測が論じられていた。
ジャン=ジャックが怒鳴り散らした。
「帝都防衛軍の治安出動なんて、そんな話聞いたことがない! ハッタリだ!」
ルビー・クールも、怒鳴り返した。広場中の男たちに聞こえるように。
「あなた、法律を知らないの? 帝国の法律では、そうなってるのよ!」
ジャン=ジャックは、押し黙った。
ルビー・クールが、たたみかけた。
「子どもたちを解放しなさい! そうしたら、あなたたちの逃走を黙認するわ」
数秒間、ジャン=ジャックは沈黙した。考えているのだ。最善の策を。
ジャン=ジャックが、大声で怒鳴った。広場中に聞こえるような大声で。
「すべての党員、党友に告ぐ! 今が、革命のときだ! 革命の狼煙を上げよ! あの赤毛のビッチに、全員で総攻撃だ! ありとあらゆる手段で、攻撃せよ! 赤毛のビッチを殺せ! それが、我々の革命の第一歩だ!」
ルビー・クールは、広場の群衆に視線を向けた。
先ほどまでとは、広場の空気が一変していた。
まずい、まずい、まずい。これはまずい。
ジャン=ジャックの一喝で、広場の党員・党友の戦意は、高まってしまった。
あと一押しで、中央付近の三個中隊は、戦意を喪失して逃げ出すところだったのに。
ルビー・クールは、心の中で、頭を抱えた。
装填が完了した。回転弾倉を戻した。
まだ、空き瓶は飛んでこない。
一瞬、ホッとした。
その瞬間、銃声が響いた。
視線を向けると、一番右端の中隊が、発砲したようだ。銃身の長いリボルバーを持った中隊長は、四十メートル近く離れている。
この距離では、お互いに命中しない可能性が高い。一番端の中隊は、無視することにした。
梁の右端から、右ななめ前方の中隊と、絞首刑台の正面の中隊に対し、二発ずつ発砲した。その後、梁の中央まで移動し、左前方の中隊に、二発撃ち込んだ。
六発全弾、撃ち尽くした。
回転弾倉を開けて、空薬莢を排出した。
「赤毛の女は、弾切れだぞ!」
また、ジャン=ジャックが叫んだ。
だが間髪入れず、ルビー・クールが大声で叫んだ。
「まだまだ、弾丸はあるわよ!」
ジャン=ジャックのほうを向き、見せつけるように、右膝をたてた。左膝を梁の上について。
ロングスカートの右裾を、まくり上げた。太ももの付け根まで。
弾丸ベルトが二本、現れた。太ももには、白い手製弾丸ベルトが、二本巻かれていた。二本とも十八発入りで、そのうち六発が徹甲弾だ。
右の太ももだけではなく、左の太ももにも、弾丸ベルトを二本巻いている。左の足首の外側にもホルスターを装着し、三十二口径のリボルバーを収めてある。
すでに徹甲弾は十二発使ったため、残りは十二発だ。
十月の市民ホール占拠事件のときは、弾丸ベルトを、左右の太ももに、一本ずつしか巻いていなかった。二挺のリボルバーに装填してある弾丸を含めて、身につけていた弾丸数は四十八発。そのため、百五十名のテロリスト相手に、苦労した。そのときの経験を、踏まえることにした。二ヶ月ぶりの平民区への訪問となった今回は、弾丸ベルトを左右二本ずつ巻いておいた。まさか、一万人と戦うはめになるとは、想像もしていなかったが。
ルビー・クールは、徹甲弾を弾丸ベルトから抜き取り、回転弾倉に詰め始めた。
ジャン=ジャックは驚愕の表情で、怒鳴り散らした。
「なんなんだ! おまえは! なんでそんなにたくさんの弾丸を身につけているんだ! それに、その弾丸は、なんなんだ! ふつうの威力じゃないだろ!」
ルビー・クールが、怒鳴り返した。わざと大声で、広場中に聞こえるように。徹甲弾を、装填しながら。
「知らないなら、教えてあげるわ! この弾丸は、軍用の徹甲弾よ! 貫通力が、ふつうの拳銃弾より、はるかに優れているわ! 人間の身体なんて、何人でも、スパスパと貫通して穴を開けるのよ!」
ジャン=ジャックが怒鳴り返した。
「なんでおまえが、そんなものを持っているんだ!」
「決まってるでしょ! あなたのような悪人どもと、戦うためよ!」
「我々は悪人じゃない! 我々は革命家だ!」
「違うわ! あなたたちは、革命家の名を騙るただの犯罪者よ! なぜなら、罪なきおんな子どもまで殺すからよ」
「罪なら、ある!」
ジャン=ジャックが声を張りあげた。
「貴族は我々を抑圧し、資本家は我々を搾取している! ゆえに、貴族や資本家は、おんな子どもであっても殺すべき罪人なのだ!」
「その話は、聞き飽きたわ! 二ヶ月前の南二区の市民ホールでね!」
ジャン=ジャックは、絶句した。まさか、ルビー・クールが市民ホール占拠事件の際に、現場に居合わせたとは、思いもよらなかったのだろう。
「おまえは、人質の生き残りだったのか!」
「違うわ。あたしが人質を解放したのよ。百五十名のテロリストと一人で戦ってね」
ジャン=ジャックは、また、絶句した。
ルビー・クールは、好機と見て、たたみかけた。
「あなたたちは、もう終わりよ。ここで、あたしに殺されるか、治安出動した帝国陸軍に殺されるか、そのどちらかよ」
そこで、一呼吸置いた。
大きな声で、叫んだ。広場にいる一万人全員に、聞こえるように。
「あなたたちも知ってのとおり、帝都防衛軍は五十万人よ! 兵士が所持する歩兵銃の徹甲弾は、あたしの拳銃の徹甲弾より、はるかに貫通力が高いわ! 帝国陸軍が治安出動すれば、あなたたちは皆殺し! 死にたくなければ、帝都から早く脱出したほうが良いわよ!」
帝都のすぐ隣には、帝国陸軍の中央基地がある。帝都を守る最終防衛部隊のため、通称、帝都防衛軍と呼ばれている。だが実際には、大規模戦争が起きると、十万人を残して、四十万人が戦場に派遣される。そのため、帝都防衛軍という通称は、実態と一致していない。
法律上は、帝都で警察が収拾できないほどの暴動や革命が発生した場合、帝都防衛軍の一部が、治安出動することになっている。
とはいえ、帝都防衛軍が治安出動するのは、早くても四日目以降だろう。最初の三日は、警察大臣が、警察力で暴徒を鎮圧しようとするはずだ。三日以内にそれができなければ、帝都防衛軍が治安出動するはずだ。六月のゲート襲撃事件のあと、ある新聞の社説に、そうした予測が論じられていた。
ジャン=ジャックが怒鳴り散らした。
「帝都防衛軍の治安出動なんて、そんな話聞いたことがない! ハッタリだ!」
ルビー・クールも、怒鳴り返した。広場中の男たちに聞こえるように。
「あなた、法律を知らないの? 帝国の法律では、そうなってるのよ!」
ジャン=ジャックは、押し黙った。
ルビー・クールが、たたみかけた。
「子どもたちを解放しなさい! そうしたら、あなたたちの逃走を黙認するわ」
数秒間、ジャン=ジャックは沈黙した。考えているのだ。最善の策を。
ジャン=ジャックが、大声で怒鳴った。広場中に聞こえるような大声で。
「すべての党員、党友に告ぐ! 今が、革命のときだ! 革命の狼煙を上げよ! あの赤毛のビッチに、全員で総攻撃だ! ありとあらゆる手段で、攻撃せよ! 赤毛のビッチを殺せ! それが、我々の革命の第一歩だ!」
ルビー・クールは、広場の群衆に視線を向けた。
先ほどまでとは、広場の空気が一変していた。
まずい、まずい、まずい。これはまずい。
ジャン=ジャックの一喝で、広場の党員・党友の戦意は、高まってしまった。
あと一押しで、中央付近の三個中隊は、戦意を喪失して逃げ出すところだったのに。
ルビー・クールは、心の中で、頭を抱えた。
2
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ
ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。
【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】
なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。
【登場人物】
エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。
ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。
マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。
アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。
アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。
クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【R15】アリア・ルージュの妄信
皐月うしこ
ミステリー
その日、白濁の中で少女は死んだ。
異質な匂いに包まれて、全身を粘着質な白い液体に覆われて、乱れた着衣が物語る悲惨な光景を何と表現すればいいのだろう。世界は日常に溢れている。何気ない会話、変わらない秒針、規則正しく進む人波。それでもここに、雲が形を変えるように、ガラスが粉々に砕けるように、一輪の花が小さな種を産んだ。
どんでん返し
あいうら
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~
ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが…
(「薪」より)
四次元残響の檻(おり)
葉羽
ミステリー
音響学の権威である変わり者の学者、阿座河燐太郎(あざかわ りんたろう)博士が、古びた洋館を改装した音響研究所の地下実験室で謎の死を遂げた。密室状態の実験室から博士の身体は消失し、物証は一切残されていない。警察は超常現象として捜査を打ち切ろうとするが、事件の報を聞きつけた神藤葉羽は、そこに論理的なトリックが隠されていると確信する。葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、奇妙な音響装置が残された地下実験室を訪れる。そこで葉羽は、博士が四次元空間と共鳴現象を利用した前代未聞の殺人トリックを仕掛けた可能性に気づく。しかし、謎を解き明かそうとする葉羽と彩由美の周囲で、不可解な現象が次々と発生し、二人は見えない恐怖に追い詰められていく。四次元残響が引き起こす恐怖と、天才高校生・葉羽の推理が交錯する中、事件は想像を絶する結末へと向かっていく。
失踪した悪役令嬢の奇妙な置き土産
柚木崎 史乃
ミステリー
『探偵侯爵』の二つ名を持つギルフォードは、その優れた推理力で数々の難事件を解決してきた。
そんなギルフォードのもとに、従姉の伯爵令嬢・エルシーが失踪したという知らせが舞い込んでくる。
エルシーは、一度は婚約者に婚約を破棄されたものの、諸事情で呼び戻され復縁・結婚したという特殊な経歴を持つ女性だ。
そして、後日。彼女の夫から失踪事件についての調査依頼を受けたギルフォードは、邸の庭で謎の人形を複数発見する。
怪訝に思いつつも調査を進めた結果、ギルフォードはある『真相』にたどり着くが──。
悪役令嬢の従弟である若き侯爵ギルフォードが謎解きに奮闘する、ゴシックファンタジーミステリー。
ピエロの嘲笑が消えない
葉羽
ミステリー
天才高校生・神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美から奇妙な相談を受ける。彼女の叔母が入院している精神科診療所「クロウ・ハウス」で、不可解な現象が続いているというのだ。患者たちは一様に「ピエロを見た」と怯え、精神を病んでいく。葉羽は、彩由美と共に診療所を訪れ、調査を開始する。だが、そこは常識では計り知れない恐怖が支配する場所だった。患者たちの証言、院長の怪しい行動、そして診療所に隠された秘密。葉羽は持ち前の推理力で謎に挑むが、見えない敵は彼の想像を遥かに超える狡猾さで迫ってくる。ピエロの正体は何なのか? 診療所で何が行われているのか? そして、葉羽は愛する彩由美を守り抜き、この悪夢を終わらせることができるのか? 深層心理に潜む恐怖を暴き出す、戦慄の本格推理ホラー。
映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション
来住野つかさ
ミステリー
それは一人の映画コレクターの死から始まった――
高名な映画コレクターの佐山義之氏が亡くなった。日比野恵の働く国立映画資料館の元にその一報が入ったのは、彼のコレクションを極秘に保全してほしいという依頼が死去当日に届いたから。彼の死を周りに悟られないようにと遺族に厳命を受け、ひっそり向かった佐山邸。貴重な映画資料に溢れたコレクションハウスと化したそこは厳重なセキュリティがかけられていたはずなのに、何故か無人の邸の地下に別の映画コレクターの他殺体が見つかる――。手に入れられる訳がないと思われていた幻のコレクションの存在とその行方は? カルト映画『夜を殺めた姉妹』との関連性とは? 残された資料を元に調査に乗り出すうちに、日比野達はコレクター達の欲と闇に巻き込まれて行く。
※この作品はフィクションです。実在の場所、人物、映画とは一切関係ありません。
※残酷描写、暴力描写、流血描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる