絶体絶命ルビー・クールの逆襲<炎の反逆者編>

蛇崩 通

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<エピローグ 第5話>

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   <エピローグ 第5話>
 「それって、今日中に決めなければ、ならないことですか?」
 そのホフマンの質問に、ルビー・クールが答えた。
 「今日じゃなくても良いわよ。それに、あなたには、強制しないわ」
 そこでいったん、言葉を切った。真剣な表情で、話し始めた。
 「彼女たちは、被害者よ。ニコラウスによって拉致監禁された。新市長として、彼女たちには、最大限の配慮をするべきだと思うわ」
 ホフマンの表情が、曇った。
 「それはそうですが……」
 そこで、言葉を句切った。ホフマンが。
 「彼女たちには、市の予算から、慰謝料を払うべきでしょうか?」
 「それは、あなたと市議会が相談して決めることよ。現在、この町の弁護士たちを雇って、被害者救済弁護団を結成したわ。ミュラー前市長の財産の差し押さえを、申請する予定よ。市営裁判所にね。だから早く、市営裁判所の判事を決定してちょうだい」
 被害者救済弁護団の結成は、昨日の木曜日に、サファイア・レインがしてくれた。ルビー・クールの指示に基づいて。
 午後一時過ぎ。食事を終えて、もう一度、市庁舎に移動した。さきほどは、ホフマン新市長と、市役所の幹部との顔合わせだけだった。今回は、市役所幹部からの業務報告が、行われる予定だ。市長室で。
 ルビー・クールは、市庁舎前でホフマンと別れた。徒歩で、この町唯一の銀行に移動した。
 その銀行は、大手銀行のフロスハーフェン支店だ。中央円形広場に面した三階建て建物だ。
 銀行のエントランスロビーでは、すでに、サファイア・レイン、パール・スノー、それにリリアが、待っていた。
 パール・スノーは、大型ボストンバッグを、背中に背負せおっている。
 「遅いぜ。どんだけ、待たせんだよ」
 そう、文句を言ってきた。パール・スノーが。
 「数分くらいでしょ。予定より遅れた時間は」
 そう、あっさりと答えた。ルビー・クールが。
 「背中の荷物、重いんだよ。どんだけの時間、背負わせるつもりだよ」
 「たった十キログラムでしょ。その程度で重いだなんて、あなたの背筋はいきん、鍛え方が足りないわね」
 「喧嘩、売ってんのかよ」
 鼻で笑った。ルビー・クールが。
 「背筋対決なら、してもいいわよ。三十キログラムのバーベルを両肩に背負って、何回スクワットできるかを」
 「それは、背筋対決じゃないだろ。足腰の筋力だし」
 割って入った。サファイア・レインが。
 「今日の午後の予定は、山積みなのよ。言い争いなんてしてないで、さっさと銀行の要件を、すませましょう」
 窓口に、向かった。
 窓口で、女性行員に話した。
 「百万キャピタほど、預金したいのだけど」
 (著者注:百万キャピタは、日本円で一億円相当)
 女性行員の表情が、引きつった。あわてて、上司を呼びに行った。
 男性の預金課長が、現れた。
 彼に、事情を説明した。
 南帝都女性友愛会のフロスハーフェン支部は、拉致被害者の女性およそ五十名に、見舞金として、一人一万キャピタを支払う。それにより、合計で約五十万キャピタを支払う。支払い方法は、分割払いで、毎月二千キャピタずつ、小切手で支払う。そのため、この支店には、毎月約五十名の女性が、小切手を持って換金しにくる。その小切手のお金を、南帝都女性友愛会フロスハーフェン支部の口座から支払う。
 ちなみに、分割払いにした理由は、一度に渡すと、盗まれたり、強盗に襲われたり、詐欺に引っかかるなどで、一度に全額を失ってしまう可能性があるからだ。
 それに、一ヶ月に二千キャピタ(著者注:日本円で約二十万円)あれば、田舎町ならば、充分に生活できる。働かなくとも。
 したがって、新しい仕事を見つけるまで、五ヶ月間ほどの時間的余裕が生まれる。
 その五ヶ月の間に、食堂などが軌道に乗って、必要な雇用数を生み出せれば、良いのだが。
 一抹いちまつの不安を、覚えた。
 だが、頭を振った。心の中で。ルビー・クールは。
 自分に、言い聞かせた。心の中で。
 不安など、無意味な感情だ、と。
 今は、行動あるのみだ。
 失敗したら、そのとき、対応策を考えれば、良いのだから。
 自分ならば、どのような困難も、乗り越えることができる。
 今まで、そうしてきたのだから。
 預金を終えたあと、サファイア・レインたちに、明るい声で呼びかけた。
 「次は、不動産屋に行くわよ」
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