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<第十八章 第2話>
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<第十八章 第2話>
ルビー・クールは、一枚の証書を広げた。
新市長の当選証書だ。文章は、ルビー・クールが手書きで書いた。
読みあげた。大声で。
最後の文言は、選挙管理委員会だ。
通常は、委員長名を記すのだが、この証書には記していない。
大型演壇の上で、ホフマンに手渡した。
選挙管理委員会の女性スタッフたちが、いっせいに、拍手喝采を始めた。
つられて、多くの市民が拍手を始めた。
ルビー・クールも拍手をしながら、ホフマンに立ち位置を指示した。
「写真を撮影するわ。当選証書をカメラマンに見せて」
ホフマン新市長は、当選証書を胸の前で開いて持ち、カメラマンに顔を向けた。
続いて、リリアが花束を持って演壇に上がってきた。ルビー・クールが受け取り、ホフマンに笑顔で手渡した。
すぐに一歩離れ、カメラマンに呼びかけた。撮影を。
ルビー・クールの指示で、ホフマンが大きな花束を掲げた。
「新市長、もっと笑顔で! カメラマンさん、新市長の笑顔をアップで撮影して!」
新聞記者もカメラマンも、気づいていない。写真には、一枚も、ルビー・クールが写っていないことを。
自分たちの身元が、写真を用いて、あとで特定されないようにするためだ。
ホフマンが、就任スピーチを始めた。
五分間で、終了させた。ルビー・クールが、きっちりと。彼自身は、もっと話したい顔をしていたが。
すぐに彼を馬車に押し込み、鉄道の駅に向かった。
九時半発の列車に、間に合った。予定通りに。
乗車するまでは、間に合わなかったら大変だと思い、ハラハラしていた。
乗車したのは、ルビー・クール、ホフマン、新聞記者とその助手、それにカメラマン。合計五名だ。乗車券は、あらかじめ、ルビー・クールが購入しておいた。
列車が走り始めたとたん、ルビー・クールが声をかけた。ホッとした顔で、ホフマンに。
「今日と明日の予定について、話しておくわね。今日と明日に関しては、あたしが臨時で、あなたの秘書を無料で務めてあげる。ただし、雑用はしないから、雑用のための秘書が欲しければ、明日、自分で雇いなさい」
言葉を、続けた。
「本日のこれからの予定は、午後一時半に、州庁舎の州知事室で、州知事閣下と面会します。そこで、新市長の承認式が行われます」
おもむろに、尋ねてきた。ホフマンが、ルビー・クールに。笑顔を浮かべて。
「州知事は、どんな人です?」
「立派な方よ」
ホフマンは、ルビー・クールが州知事と顔見知りだと、思い込んでいる。
そのほうが、好都合だ。
そこで、あたかも知っているかのような口調で、そう答えたのだ。
「承認式について、簡単に説明しておくわね」
ルビー・クールが、説明を始めた。まるで何度も、承認式を見たことがあるかのように。
もちろん実際には、一度も見たことがない。
「帝国の法律では、各自治体の首長は、州知事に承認されて初めて、正式な首長として、認められるのよ」
笑顔で、口をはさんだ。ホフマンが。
「では、承認されなかったら、市長に就任できないということですか?」
「法律上は、ね」
驚いた声をあげた。新聞記者が。
「承認されなかった話なんて、聞いたことない!」
ルビー・クールが、大きく頷いた。
「ええ。普通は、なにごともなく承認されるわ。州知事のいくつかの問いかけに答えただけで。口頭試問で適格であった、としてね」
「口頭試問?」
ホフマンが、不安そうな顔をした。試験が、苦手なタイプなのだろう。彼は若いとき、州都にある商業学校を卒業している。学生時代、試験に苦労したのかも知れない。
「だいじょうぶよ。あたしが、予想問題と模範解答を教えるから。もっとも、フロスハーフェン市の前市長が大きな問題を起こしたので、通常より厳しい口頭試問になる可能性もあるけど」
ホフマンは、ため息をついた。沈んだ顔で。
「よろしく頼みます」
今のところは、順調だ。
ホフマンも新聞記者たちも、ルビー・クールのことを、州知事の関係者だと、思い込んでいる。
これで、ルビー・クールの予想問題が的中すれば、彼らは完全に信じ込む。ルビー・クールは、フロスハーフェン市のために、州知事が非公式に派遣した人物である、と。
「州知事の施政方針は、平和と秩序よ」
ルビー・クールが、話し始めた。自信に満ちあふれた口調で。
ルビー・クールは、一枚の証書を広げた。
新市長の当選証書だ。文章は、ルビー・クールが手書きで書いた。
読みあげた。大声で。
最後の文言は、選挙管理委員会だ。
通常は、委員長名を記すのだが、この証書には記していない。
大型演壇の上で、ホフマンに手渡した。
選挙管理委員会の女性スタッフたちが、いっせいに、拍手喝采を始めた。
つられて、多くの市民が拍手を始めた。
ルビー・クールも拍手をしながら、ホフマンに立ち位置を指示した。
「写真を撮影するわ。当選証書をカメラマンに見せて」
ホフマン新市長は、当選証書を胸の前で開いて持ち、カメラマンに顔を向けた。
続いて、リリアが花束を持って演壇に上がってきた。ルビー・クールが受け取り、ホフマンに笑顔で手渡した。
すぐに一歩離れ、カメラマンに呼びかけた。撮影を。
ルビー・クールの指示で、ホフマンが大きな花束を掲げた。
「新市長、もっと笑顔で! カメラマンさん、新市長の笑顔をアップで撮影して!」
新聞記者もカメラマンも、気づいていない。写真には、一枚も、ルビー・クールが写っていないことを。
自分たちの身元が、写真を用いて、あとで特定されないようにするためだ。
ホフマンが、就任スピーチを始めた。
五分間で、終了させた。ルビー・クールが、きっちりと。彼自身は、もっと話したい顔をしていたが。
すぐに彼を馬車に押し込み、鉄道の駅に向かった。
九時半発の列車に、間に合った。予定通りに。
乗車するまでは、間に合わなかったら大変だと思い、ハラハラしていた。
乗車したのは、ルビー・クール、ホフマン、新聞記者とその助手、それにカメラマン。合計五名だ。乗車券は、あらかじめ、ルビー・クールが購入しておいた。
列車が走り始めたとたん、ルビー・クールが声をかけた。ホッとした顔で、ホフマンに。
「今日と明日の予定について、話しておくわね。今日と明日に関しては、あたしが臨時で、あなたの秘書を無料で務めてあげる。ただし、雑用はしないから、雑用のための秘書が欲しければ、明日、自分で雇いなさい」
言葉を、続けた。
「本日のこれからの予定は、午後一時半に、州庁舎の州知事室で、州知事閣下と面会します。そこで、新市長の承認式が行われます」
おもむろに、尋ねてきた。ホフマンが、ルビー・クールに。笑顔を浮かべて。
「州知事は、どんな人です?」
「立派な方よ」
ホフマンは、ルビー・クールが州知事と顔見知りだと、思い込んでいる。
そのほうが、好都合だ。
そこで、あたかも知っているかのような口調で、そう答えたのだ。
「承認式について、簡単に説明しておくわね」
ルビー・クールが、説明を始めた。まるで何度も、承認式を見たことがあるかのように。
もちろん実際には、一度も見たことがない。
「帝国の法律では、各自治体の首長は、州知事に承認されて初めて、正式な首長として、認められるのよ」
笑顔で、口をはさんだ。ホフマンが。
「では、承認されなかったら、市長に就任できないということですか?」
「法律上は、ね」
驚いた声をあげた。新聞記者が。
「承認されなかった話なんて、聞いたことない!」
ルビー・クールが、大きく頷いた。
「ええ。普通は、なにごともなく承認されるわ。州知事のいくつかの問いかけに答えただけで。口頭試問で適格であった、としてね」
「口頭試問?」
ホフマンが、不安そうな顔をした。試験が、苦手なタイプなのだろう。彼は若いとき、州都にある商業学校を卒業している。学生時代、試験に苦労したのかも知れない。
「だいじょうぶよ。あたしが、予想問題と模範解答を教えるから。もっとも、フロスハーフェン市の前市長が大きな問題を起こしたので、通常より厳しい口頭試問になる可能性もあるけど」
ホフマンは、ため息をついた。沈んだ顔で。
「よろしく頼みます」
今のところは、順調だ。
ホフマンも新聞記者たちも、ルビー・クールのことを、州知事の関係者だと、思い込んでいる。
これで、ルビー・クールの予想問題が的中すれば、彼らは完全に信じ込む。ルビー・クールは、フロスハーフェン市のために、州知事が非公式に派遣した人物である、と。
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