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第十六章 市長選挙で絶体絶命 <第1話>
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<第十六章 第1話>
州知事の秘書官と州警察の捜査官たちを、馬車で鉄道の駅まで送った。
彼らを駅のホームで見送ってから、グランドパレスホテルに戻った。
午後三時近くに、なっていた。
サファイア・レインから、立候補の受付業務について、報告を受けた。
午後三時ちょうどに、立候補の受付を締め切った。
電話を、かけた。ホテルのスイートルームから。
市議会の議事堂に。
受付の女性職員が、でた。
「市議会議長に繋いでちょうだい」
「どちら様でしょうか?」
「市長選挙の選挙管理委員会よ」
すぐに、繋いでくれた。彼は、市議会議事堂内の議長室にいた。
「誰だ?」
「あたしよ。グランドパレスホテルのスイートルームに宿泊中の赤毛の女よ」
「何の用だ?」
「一応、報告しておくわ。あなたにも、関係あることだから」
無言だった。市議会議長は。
「さきほど、州知事の秘書官と州警察の捜査官二名に、市長公邸に来ていただいて、報告したわ。市長親子の犯罪行為の数々を。裏庭の遺体三十体を見ていただいて、検視結果を報告したわ。それに、贋金の現物も見ていただいたわ。召喚した悪徳弁護士と市長の執事を、捜査官たちが尋問したわ」
市議会議長は、無言だった。
彼は、思い込んだはずだ。
ルビー・クールが、州知事の秘書官と州警察の捜査官たちを、この町に呼んだ、と。
それゆえに、州知事、もしくは州知事の側近と、顔見知りだ、と。
言葉を、続けた。ルビー・クールが。
「彼らは、さきほど州都に帰ったわ。午後二時半発の列車で。秘書官は、本日中に州知事に報告するわ。市長親子の犯罪の数々を」
口を開いた。市議会議長が。
「市長選挙は、州知事の意思なのか?」
ほくそ笑んだ。ルビー・クールは、心の中で。
もう、信じ始めている。市議会議長は。ルビー・クールが、州知事の意を受けて行動している、と。
「大きな問題が起こることなく市長選挙が成功すれば、州知事は肯定するわ。市長選挙を。一方、大きな問題が生じて市長選挙が失敗したら、肯定しないわ。その場合は、州知事自身が、新市長の選抜に影響力を行使することになるけれど、それは彼の本意ではないわ。なぜなら、彼が据えた新市長に多くの市民が反発したら、彼の名声が失墜するからよ」
数秒間の沈黙のあと、市議会議長が口を開いた。
「なるほど、な。貴族は、自分の命よりも、名声のほうが大切だ、と聞くからな」
ルビー・クールが、話を転じた。
「市議会の事務局長が市長選挙に立候補したけれど、彼は、あなたが擁立したんでしょ。市長選挙に協力してくれて、感謝するわ」
市議会議長が、自分の親族を擁立しなかったのは、市長選挙が、州知事に咎められる可能性があると、思ったからだろう。
そこで、血はつながっていないが、自分の言いなりになる人物を、立候補させた。
それが、市議会事務局長だ。
彼は朝の九時に、立候補の申請に来た。ルビー・クールが、受け付けた。メガネをかけた四十歳くらいの男で、とても真面目そうだった。
言葉を、続けた。
「選挙管理委員会として、立候補者全員に伝えていることだけど、選挙運動は、自由よ。ビラやチラシを配ったり、知り合いに声をかけて票固めをするなど、積極的にしてちょうだい。選挙違反にあたるのは、脅迫や買収行為よ。市長選挙に当選したあとでも、金品を配ったのが発覚したら、当選無効で刑務所行きよ。本人だけでなく、買収を指示した人も、ね」
吐き捨てるように言った。市議会議長が。
「不正行為なんて、誰がするか」
ルビー・クールが、言葉を続けた。彼の言葉を無視して。
「あたしの目的は、市長選挙を成功させること。誰が当選しても、かまわないわ。この町の市民全員を、幸せにしてくれる人物なら、ね。できれば、周辺の農村から働きに出てきた若者たちのことも」
電話を、終えた。
受話器を、置いた。
スイートルームの玄関ドアは、開いている。
玄関の外には、広い階段ホールが広がっている。
三階の階段ホールには、イスが数脚、置いてある。
順番待ちの立候補者のためだ。
そのイスには、少年と、メガネをかけた中年男が座っている。
少年は、新聞売りのポールだ。
メガネの中年男は、印刷屋だろう。
ルビー・クールと市議会議長の電話は、彼らには全部、聞こえていたはずだ。
もちろん、計画通りだ。
手招きして、彼らを呼んだ。
心の中で、ほくそ笑みながら。
州知事の秘書官と州警察の捜査官たちを、馬車で鉄道の駅まで送った。
彼らを駅のホームで見送ってから、グランドパレスホテルに戻った。
午後三時近くに、なっていた。
サファイア・レインから、立候補の受付業務について、報告を受けた。
午後三時ちょうどに、立候補の受付を締め切った。
電話を、かけた。ホテルのスイートルームから。
市議会の議事堂に。
受付の女性職員が、でた。
「市議会議長に繋いでちょうだい」
「どちら様でしょうか?」
「市長選挙の選挙管理委員会よ」
すぐに、繋いでくれた。彼は、市議会議事堂内の議長室にいた。
「誰だ?」
「あたしよ。グランドパレスホテルのスイートルームに宿泊中の赤毛の女よ」
「何の用だ?」
「一応、報告しておくわ。あなたにも、関係あることだから」
無言だった。市議会議長は。
「さきほど、州知事の秘書官と州警察の捜査官二名に、市長公邸に来ていただいて、報告したわ。市長親子の犯罪行為の数々を。裏庭の遺体三十体を見ていただいて、検視結果を報告したわ。それに、贋金の現物も見ていただいたわ。召喚した悪徳弁護士と市長の執事を、捜査官たちが尋問したわ」
市議会議長は、無言だった。
彼は、思い込んだはずだ。
ルビー・クールが、州知事の秘書官と州警察の捜査官たちを、この町に呼んだ、と。
それゆえに、州知事、もしくは州知事の側近と、顔見知りだ、と。
言葉を、続けた。ルビー・クールが。
「彼らは、さきほど州都に帰ったわ。午後二時半発の列車で。秘書官は、本日中に州知事に報告するわ。市長親子の犯罪の数々を」
口を開いた。市議会議長が。
「市長選挙は、州知事の意思なのか?」
ほくそ笑んだ。ルビー・クールは、心の中で。
もう、信じ始めている。市議会議長は。ルビー・クールが、州知事の意を受けて行動している、と。
「大きな問題が起こることなく市長選挙が成功すれば、州知事は肯定するわ。市長選挙を。一方、大きな問題が生じて市長選挙が失敗したら、肯定しないわ。その場合は、州知事自身が、新市長の選抜に影響力を行使することになるけれど、それは彼の本意ではないわ。なぜなら、彼が据えた新市長に多くの市民が反発したら、彼の名声が失墜するからよ」
数秒間の沈黙のあと、市議会議長が口を開いた。
「なるほど、な。貴族は、自分の命よりも、名声のほうが大切だ、と聞くからな」
ルビー・クールが、話を転じた。
「市議会の事務局長が市長選挙に立候補したけれど、彼は、あなたが擁立したんでしょ。市長選挙に協力してくれて、感謝するわ」
市議会議長が、自分の親族を擁立しなかったのは、市長選挙が、州知事に咎められる可能性があると、思ったからだろう。
そこで、血はつながっていないが、自分の言いなりになる人物を、立候補させた。
それが、市議会事務局長だ。
彼は朝の九時に、立候補の申請に来た。ルビー・クールが、受け付けた。メガネをかけた四十歳くらいの男で、とても真面目そうだった。
言葉を、続けた。
「選挙管理委員会として、立候補者全員に伝えていることだけど、選挙運動は、自由よ。ビラやチラシを配ったり、知り合いに声をかけて票固めをするなど、積極的にしてちょうだい。選挙違反にあたるのは、脅迫や買収行為よ。市長選挙に当選したあとでも、金品を配ったのが発覚したら、当選無効で刑務所行きよ。本人だけでなく、買収を指示した人も、ね」
吐き捨てるように言った。市議会議長が。
「不正行為なんて、誰がするか」
ルビー・クールが、言葉を続けた。彼の言葉を無視して。
「あたしの目的は、市長選挙を成功させること。誰が当選しても、かまわないわ。この町の市民全員を、幸せにしてくれる人物なら、ね。できれば、周辺の農村から働きに出てきた若者たちのことも」
電話を、終えた。
受話器を、置いた。
スイートルームの玄関ドアは、開いている。
玄関の外には、広い階段ホールが広がっている。
三階の階段ホールには、イスが数脚、置いてある。
順番待ちの立候補者のためだ。
そのイスには、少年と、メガネをかけた中年男が座っている。
少年は、新聞売りのポールだ。
メガネの中年男は、印刷屋だろう。
ルビー・クールと市議会議長の電話は、彼らには全部、聞こえていたはずだ。
もちろん、計画通りだ。
手招きして、彼らを呼んだ。
心の中で、ほくそ笑みながら。
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