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<第十五章 第6話>

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   <第十五章 第6話>
 ルビー・クールは、説明を続けた。淡々と。
 「市長は、殺し屋を雇っていたようです。その殺し屋は、すでに、この町を離れたようです。殺人事件にしたくないケースで、殺し屋を使って、病死に見せかけていたようです」
 「証拠は?」
 「殺し屋による暗殺のケースは、すべて病死とされたため、証拠はありません。そのため、立件はできません」
 秘書官が、口を開いた。食事の手を止めて。
 「銃撃戦が、発生したのか?」
 ここが、正念場だ。
 ルビー・クールは、心の中で、気を引き締めた。
 無表情で、答えた。
 「はい。土曜日の午後に。激しい銃撃戦でした。多数の警官と、市長の手下たち、それに、たくさんのギャングたちが、死傷しました」
 「ギャングたち?」
 その秘書官の問いに、即答した。
 「はい。市長は、この町のギャング組織、死神団と、ズブズブの関係でした。それについては、証人がいます。市長の顧問弁護士です。今、呼びましょうか?」
 「呼んでくれ」
 即答した。捜査官の一人が。
 ルビー・クールが、ソファーから立ち上がり、電話台に向かった。
 警察署に、電話をかけた。
 また、女性事務員が出た。
 「あたしよ。市長の顧問弁護士を、市長公邸に連れてきて。制服警官二名を、警備につけて、ね」
 電話を切った。
 「すぐに来ますわ」
 事務部長と男性事務員二名は、緊張した様子で、突っ立ったままだ。
 ルビー・クールが、声をかけた。
 「事務部長さん、こちらが州知事閣下の秘書官様です」
 「は、初めまして」
 事務部長は緊張しすぎたせいか、声が裏返っていた。
 「こちらのお二方ふたかたが、州警察の捜査官です」
 「これは、どうも。遠路はるばる……」
 そこで、言葉が詰まってしまった。
 ルビー・クールが、事務部長たちに尋ねた。
 「ところで、あなたたち、昼食はまだでしょ」
 「はい」
 視線を、捜査官に向けた。
 「彼らを昼食休憩に、行かせて良いかしら?」
 「ああ」
 「待て」
 捜査官二名の答えは、異なった。
 待てと言った捜査官が、言葉を続けた。
 「事務部長に、尋ねたいことがある。銃撃戦のとき、おまえは、どこにいた?」
 「警察署の中です」
 「銃撃音は、聞こえたか?」
 「もちろんです。銃撃戦は、中央円形広場で発生しましたから」
 ルビー・クールが補足した。中央円形広場は、市長公邸の前にある広場で、その周囲には警察署もある、と。
 「では、銃撃戦を目撃したな」
 「まさか! 窓の近くは危険なので、窓から離れていました」
 「署長や副署長が殉職するのを、目撃したか?」
 「見ていません」
 数秒間、沈黙が流れた。
 「私からの質問は、以上だ」
 ルビー・クールが、秘書官に尋ねた。
 「秘書官様からは、彼に、お尋ねになることは、ありますか?」
 「特にないな」
 ルビー・クールは、事務部長たちを帰らせた。
 とりあえず、ホッとした。
 銃撃戦に関しては、これで、山を越えた。
 そう、思った。
 秘書官も捜査官たちも、思い込んでいるはずだ。
 署長率いる市警が、市長親子を逮捕しようとした。それに対し、市長が激しく抵抗した。市長の手下たちとギャングたちが、警官たちに向かって発砲した。それにより、激しい銃撃戦となった。その銃撃戦で、署長と副署長が殉職した。
 そう、思い込んだはずだ。
 これで、気づかない。署長と副署長を射殺したのが、ルビー・クールだということに。
 メイドが一人、リビングルームに来た。
 「ルビー様、正門警備の警官が来ました。なにか、確認したいとか」
 すぐに、席を立った。
 リビングルームのドアを閉め、玄関ホールに移動した。
 制服警官が、一名いた。
 悪徳弁護士が、到着したようだ。
 連行してきた警官たちは、連行の理由を説明できなかった。
 そのため、正門警備の警官たちは、思った。ルビー・クールの命令は、市営簡易刑務所への移送ではないか。それを、彼らが誤解したのだ、と。
 「誤解じゃないわ。今すぐここに、連れてきて」
 すぐに、悪徳弁護士が連行されてきた。玄関ホールに。二名の制服警官に、両腕をつかまれて。
 彼らに、説明を始めた。
 「州知事閣下の秘書官と、州警察の捜査官二名に、来ていただいています」
 この説明で、思ったはずだ。ルビー・クールが、秘書官たちを、この町に呼んだ、と。
 言葉を、続けた。
 「彼らは今、市長の悪事について調査しています」
 悪徳弁護士を、まっすぐに見つめた。
 「市長が関わった犯罪、特に、死神団に命じた殺人事件について、正直に、すべて話しなさい」
 即座に答えた。悪徳弁護士が。
 「取引だ。拒否したら、なにも話さないぞ」
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