絶体絶命ルビー・クールの逆襲<炎の反逆者編>

蛇崩 通

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<第十二章 第4話>

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   <第十二章 第4話>
 革命の女神ルビー、か。
 女神というがらでは、ないのだが。
 思わずルビー・クールは、心の中で肩をすくめた。
 群衆が、ルビーという名を知っていたのにも、少し驚いた。
 さきほど新聞記者に、自分の名前をルビーと言ったので、それが群衆に伝わったのか。
 あるいは、広場で昼間、サファイア・レインやパール・スノーが、ルビーと呼んでいるのを聞いて、それを誰かが覚えていて、他の人々に伝えたのか。
 まあ、どちらでもよい。その点は、重要な問題ではない。大切なのは、本名がバレないことだ。
 身分証は、帝都で作った偽造だ。帝都で亡くなった農村出身女性の名前を、かたった。住民登録料と住民税を支払ったら、簡単に住民登録書を発行してもらえた。役所は、性善説に基づいているためだ。
 偽造といっても、住民登録書自体は、真正だ。
 サファイア・レインもパール・スノーも、同様の方法で、偽名の身分証明書を入手した。
 十数分間、ルビー・クールは待った。市民の興奮が、収まるまで。
 広場が静かになってから、拡声器を使って、話し始めた。わざと、重々しい口調で。
 「市民裁判の続きを、行います。まずは、執事に判決を下します」
 判決理由から、説明を始めた。執事は、殺された少女の死体を裏庭に埋める際に、使用人たちの指揮を っていた。しかし、直接、殺人に関わっていたわけではない。
 そこで、懲役十五年を宣告した。市営簡易刑務所に収監するように、新任警官たちに命じた。
 執事は初老のため、刑務所から生きて出所する可能性は低い。
 その判決に対し、広場の数千名の市民たちは、「異議なし!」と答えた。
 続いて、悪徳弁護士に判決を下した。
 彼は本来ならば、市長が行った殺人事件の共犯者として、死刑にするべきだ。
 だが、何名もの青年が、強盗殺人事件のぎぬを着せられていたことを、あきらかにした。
 その功績により、死刑を回避し、懲役二十年とした。執事と同様に、市営簡易刑務所に収監することにした。
 悪徳弁護士は四十歳前後のため、彼も、刑務所から生きて出所するのは、難しいだろう。
 なぜなら帝国では、男性は、五十歳前後で亡くなる者が多いからだ。
 広場の市民たちからも、異議は出なかった。
 悪徳判事には、懲役十年の判決を宣告した。
 彼も初老のため、刑務所から生きて出ることは無理だろう。
 罷免ひめんした悪徳警官十三名に対しては、懲役五年から十年の不定期刑とした。
 広場の市民たちからは、異議は出なかった。おおむね、満足しているようだ。
 ルビー・クールが拡声器を使い、大声で呼びかけた。
 「親愛なる市民の皆さん、今日は、ここで解散です。皆さん、できるだけ多くの友人知人に、来週の市長選挙のことを、伝えてください。ご協力、お願いします!」
 そのあと、拡声器を使わずに、呼びかけた。グランドパレスホテル前の新任警官たちに。
 「新任警官の皆さん、このあと、明日の打ち合わせをするので、残ってください」
 夜食用に用意したサンドイッチを、新任警官たちに渡してから、指示を伝えた。お願い、という形式で。
 なぜなら日曜日は、本来、休息日だからだ。信心深いクリスチャンならば、日曜日の業務は、拒否する。
 指示を、伝えた。
 明日の日曜日の午後に、死神団のアジトを捜索する。死神団の残党を、逮捕するためだ。売春を強要されている女性がまだ残っていたら、救出する。死神団が貯め込んでいた資金があれば、没収し、新市警の予算に組み込む。
 誰も、日曜日の業務を、拒否しなかった。
 信仰心が薄いわけではなく、正義感が強いようだ。
 罷免した悪徳警官十三名と、悪徳弁護士、悪徳判事、それに執事を、警察署の留置場に入れるように指示した。
 それが終わったあと、明日の午後一時に、グランドパレスホテル前に、集合するよう指示した。
 集合時間を午後にしたのは、日曜日の午前は、教会に行く人が多いと思ったからだ。
 そのあと、解散した。
 時刻は、午後八時半を過ぎていた。
 殺し屋魔女ヒルダを、約束通り、自由の身とした。
 彼女には、今夜のうちに、町を出るように言った。午後十時発の夜行列車があることを教えて。
 これで、市民裁判は、すべて終了した。
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