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第十二章 革命の夜 <第1話>

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   <第十二章 第1話>
 市長が、怒鳴りまくった。
 「よくも、ワシの一人息子を! 絶対に殺す! おまえも、おまえの家族も! おまえの友人も親族も、全員ぶっ殺す!」
 ルビー・クールが、冷ややかに尋ねた。
 「あら、どうやって? もうあなたには、なにもないのよ。権力も、部下も」
 「まだ、カネがある。金庫の中の三百万キャピタだ。おい判事、なんとかしろ」
 悪徳判事が、動揺した。
 「そんなこと言われても……」
 「おい弁護士、なんとかしろ。ワシを救えたら、百万キャピタやる」
 悪徳弁護士が、叫んだ。冷や汗を流しながら。
 「司法取引を提案します!」
 一瞬、市長が満足げな表情で、うなずいた。
 「私を釈放してくれるなら、市長の犯罪を全部話します!」
 市長が、わめいた。動揺した様子で。
 「なに言ってるんだ、おまえは。今まで散々、高い報酬を払ってきただろ!」
 悪徳弁護士が、市長に向かって怒鳴った。
 「自分の命に、えられるか!」
 自分も、死刑になると思ったのだ。悪徳弁護士は。
 冷静な表情で、ルビー・クールが答えた。悪徳弁護士に。
 「証言内容に、よります。証人の証言で明らかにされていない新たな犯罪事実を明らかにすれば、罪を減じます。極めて凶悪な犯罪行為を明らかにしたならば、刑は、この町からの追放処分にします」
 町からの追放処分ならば、事実上の無罪放免だ。悪徳弁護士にとって、悪くない話だ。
 ペラペラと、話し始めた。悪徳弁護士が、市長の犯罪行為の数々を。
 市長は長年に渡り、死神団を、事実上、自分の配下に置いていた。
 死神団を使って、多くの市民を殺してきた。その際の橋渡し役が、悪徳弁護士だった。
 市長がギャングと、直接、顔を合わせるのは、やはりまずい。そこで、悪徳弁護士が死神団のアジトに行き、市長の命令を伝えていた。
 市長は、使い分けていた。人を殺す際に、殺し屋魔女ヒルダと、死神団を。
 ヒルダを使うのは、病死や突然死に、したいときだ。警察が捜査することになると、都合が悪い人物の場合だ。市警を掌中に収めたとは言え、被害者の遺族が州警察に訴え、州警察の捜査官が市に来訪すると、まずいことになる。
 そうしたケースで、ヒルダを使った。
 一方、死神団を使う場合は、市民に恐怖を植え付けることが目的だ。市長に盾突たてつく一般市民を、強盗殺人事件に見せかけて、殺害する。
 犯人は、たいてい、捕まらない。
 もっとも、ときおりは逮捕される。
 もちろん、真犯人ではない。死神団に盾突いたチンピラや、農村から職を求めて出てきた青年を、犯人に仕立て上げる。証拠を、でっち上げて。
 これまでに、無実の農村青年が何名も、逮捕された。彼らは、市内の市営簡易刑務所に収監されている。
 この話にさしかかったとき、群衆の怒りが、一気に高まった。
 異様なムードとなった。広場に集まった数千人の群衆たちが。
 彼らの怒りは、爆発寸前だ。
 暴動が発生すると、まずい。
 非常に、まずい。
 ルビー・クールが、大声を張りあげた。
 「無実の青年たちの名前を、答えなさい!」
 悪徳弁護士が、次々に答えた。ぎぬで逮捕された青年たちの名前を。
 すぐに、命令を出した。ルビー・クールが、新警察の一個分隊に。市営簡易刑務所に向かい、無実の青年たちを釈放するように、と。
 悪徳弁護士によると、悪徳判事も、グルのようだ。悪徳判事は、濡れ衣だと知っていながら、でっちあげの証拠に基づいて、無実の青年たちに、有罪判決を出していた。
 もっとも、強盗殺人事件であるにもかかわらず、死刑判決は、一件も出していなかった。
 やはり、無実の人間を死刑にするのは、気がとがめたのだ。
 悪徳判事は、「自分は知らなかった」「証拠に基づき判決を下しただけ」「ニセの証拠だとは思わなかった」などと弁解した。
 悪徳弁護士の自白が、すべて終わった。
 ルビー・クールが、大声で叫んだ。
 「それでは、これより、極悪市長に、判決を下します!」
 数千人の群衆が、息をんだ。
 静寂が、おとずれた。
 「判決は、死刑!」
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