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<第十章 第4話>
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<第十章 第4話>
二秒だった。
わずか二秒間で、勝負がついた。
拳銃を、石畳に落とした。十名の男が。
その直後、倒れた。崩れるように。十名の男が。
誰一人、銃口を向けることができなかった。拳銃を、ジャケットの下から取り出す途中か、取り出した直後に、撃たれた。三名の少女に。
ルビー・クールは、四名倒した。二挺拳銃で。男たちの頭部を撃ち抜いて。
サファイア・レインとパール・スノーは、三名ずつ倒した。左右の拳銃で。
右手の拳銃で二名、左手の拳銃では一名だ。
距離が十メートルほどだったため、サファイア・レインも、はずさなかった。左手の射撃でも。
絶叫した。市長が。
「なんだこれは!」
冷ややかに、言い放った。ルビー・クールが。
「市長、あなたも学ばない男ね。今までの戦いを見れば、わかるはずよ。あたしたちが、早撃ちだってことは。十対三なら、勝てるとでも思ったのかしら。でも、素人じゃ無理よ」
市長が怒鳴った。
「ヒルダ! 魔法で、あの赤毛を殺せ!」
「無理よ」
素っ気なく答えた。ヒルダが。
「あの赤毛の女は、あたしの魔法攻撃で死ななかった。魔法の鉄杭でも、魔法の炎でも」
「もう一度やれ!」
「同じ種類の魔法攻撃は、二回目以降は、威力が低下するのよ。魔法攻撃の幻痛に、慣れてくるから」
「だったら、雷魔法で殺せ!」
「あれはフェイクよ。あたしの雷魔法は、人を殺せるレベルじゃない。ただ、脅しに使っていただけ」
ルビー・クールが、大きな声で呼びかけた。
「それでは、市長が持参した金貨が贋金かどうか、確認しましょう」
そう言って、警官たちに指示した。死んだギャングたちのナイフを使い、金貨の表面に傷をつけるように、と。
十三名の警官全員が、おとなしく指示に従った。
作業を始めてすぐに、一人の警官が声をあげた。
「中身は銀色だ!」
ルビー・クールが尋ねた。
「固い素材かしら?」
「ああ、固い」
「じゃあ、ニッケルね」
その後、次々に、警官たちが叫んだ。自分も、金メッキのニッケル硬貨だったと。
市長は、一枚も、本物の金貨を含めていなかった。
通常の詐欺師は、一番上の金貨、もしくは上から三枚目くらいまでは、本物の金貨にするのだが。
十三名の警官には、すべての金貨をナイフで削るように指示した。五千枚のニセ金貨を十三名で作業すれば、一枚あたり三秒ならば、二十分間ほどで終わるはずだ。
ルビー・クールが、新聞記者に呼びかけた。
「市長が大量の贋金を保有! これって、特ダネじゃないかしら? 証拠は、目の前にあるし」
「そのとおりですね」
カメラマンが、写真を撮り始めた。
市長が怒鳴った。
「勝手に写真を撮るな! おい、新聞記者ふぜいが、記事にしたらどうなるか、わかってるのか!」
新聞記者が、言い返した。
「ギャングの銃撃戦なんかより、市長の贋金のほうが特ダネだ。これで、本社に戻れる。こんな小さな町の支局とも、おさらばできる」
そのときだった。
続々と、市民男性たちが、広場に集まってきた。
新しい警察に志願する元兵士たちのようだ。
彼らの数は、すぐに百名を超えた。
どうやら、銃撃戦が完全に終わるまで、周囲の建物の陰に、潜んでいたようだ。
ルビー・クールが、ヒルダに呼びかけた。市長の命令による殺人について、すべて話すように。
ヒルダは、淡々と話し始めた。新聞記者の質問にも、答えた。
彼女は、殺す相手の名前を知らないことも多かったが、殺した相手の身体的特徴については、よく覚えていた。
五年前、市長の命令で最初に殺したのは、当時の警察署長だった。彼は、市長の違法な命令に、したがわなかったからだ。
その次に殺したのは、副署長だ。
ほかにも、市長に逆らう警官を、次々に暗殺した。
検視の結果、全員、心臓麻痺で病死とされた。
彼女の暗躍により、市警は恐怖に縛られ、市長に逆らえなくなった。市警は、市長の私兵と化した。
さらに、数名の市議も、暗殺した。
それ以降、市議長派の市議たちは、用心棒を雇い、警戒するようになった。
彼女の話を聞いていた元兵士たちが、憤り始めた。市長の暗殺命令に。
警官たちの作業が、終わった。
結局、本物の金貨は、一枚もなかった。
ルビー・クールが、呼びかけた。
「勇敢なる元兵士のみなさん!」
その一言で、百名を超える元兵士たちが、高揚した面持ちとなった。
「みなさんを、新しい市警の警官に任命します。みなさんの最初の仕事は、極悪市長の逮捕です。容疑は、大量の贋金保有の現行犯です」
それまで頭を抱えていた市長が、怒鳴り散らした。
「ふざけるな! なにが逮捕だ! ワシは市長だぞ!」
冷ややかに、言い放った。ルビー・クールが。
「違うわ。あなたは、ただの極悪人よ」
第十一章「市民裁判で絶体絶命」に続く
二秒だった。
わずか二秒間で、勝負がついた。
拳銃を、石畳に落とした。十名の男が。
その直後、倒れた。崩れるように。十名の男が。
誰一人、銃口を向けることができなかった。拳銃を、ジャケットの下から取り出す途中か、取り出した直後に、撃たれた。三名の少女に。
ルビー・クールは、四名倒した。二挺拳銃で。男たちの頭部を撃ち抜いて。
サファイア・レインとパール・スノーは、三名ずつ倒した。左右の拳銃で。
右手の拳銃で二名、左手の拳銃では一名だ。
距離が十メートルほどだったため、サファイア・レインも、はずさなかった。左手の射撃でも。
絶叫した。市長が。
「なんだこれは!」
冷ややかに、言い放った。ルビー・クールが。
「市長、あなたも学ばない男ね。今までの戦いを見れば、わかるはずよ。あたしたちが、早撃ちだってことは。十対三なら、勝てるとでも思ったのかしら。でも、素人じゃ無理よ」
市長が怒鳴った。
「ヒルダ! 魔法で、あの赤毛を殺せ!」
「無理よ」
素っ気なく答えた。ヒルダが。
「あの赤毛の女は、あたしの魔法攻撃で死ななかった。魔法の鉄杭でも、魔法の炎でも」
「もう一度やれ!」
「同じ種類の魔法攻撃は、二回目以降は、威力が低下するのよ。魔法攻撃の幻痛に、慣れてくるから」
「だったら、雷魔法で殺せ!」
「あれはフェイクよ。あたしの雷魔法は、人を殺せるレベルじゃない。ただ、脅しに使っていただけ」
ルビー・クールが、大きな声で呼びかけた。
「それでは、市長が持参した金貨が贋金かどうか、確認しましょう」
そう言って、警官たちに指示した。死んだギャングたちのナイフを使い、金貨の表面に傷をつけるように、と。
十三名の警官全員が、おとなしく指示に従った。
作業を始めてすぐに、一人の警官が声をあげた。
「中身は銀色だ!」
ルビー・クールが尋ねた。
「固い素材かしら?」
「ああ、固い」
「じゃあ、ニッケルね」
その後、次々に、警官たちが叫んだ。自分も、金メッキのニッケル硬貨だったと。
市長は、一枚も、本物の金貨を含めていなかった。
通常の詐欺師は、一番上の金貨、もしくは上から三枚目くらいまでは、本物の金貨にするのだが。
十三名の警官には、すべての金貨をナイフで削るように指示した。五千枚のニセ金貨を十三名で作業すれば、一枚あたり三秒ならば、二十分間ほどで終わるはずだ。
ルビー・クールが、新聞記者に呼びかけた。
「市長が大量の贋金を保有! これって、特ダネじゃないかしら? 証拠は、目の前にあるし」
「そのとおりですね」
カメラマンが、写真を撮り始めた。
市長が怒鳴った。
「勝手に写真を撮るな! おい、新聞記者ふぜいが、記事にしたらどうなるか、わかってるのか!」
新聞記者が、言い返した。
「ギャングの銃撃戦なんかより、市長の贋金のほうが特ダネだ。これで、本社に戻れる。こんな小さな町の支局とも、おさらばできる」
そのときだった。
続々と、市民男性たちが、広場に集まってきた。
新しい警察に志願する元兵士たちのようだ。
彼らの数は、すぐに百名を超えた。
どうやら、銃撃戦が完全に終わるまで、周囲の建物の陰に、潜んでいたようだ。
ルビー・クールが、ヒルダに呼びかけた。市長の命令による殺人について、すべて話すように。
ヒルダは、淡々と話し始めた。新聞記者の質問にも、答えた。
彼女は、殺す相手の名前を知らないことも多かったが、殺した相手の身体的特徴については、よく覚えていた。
五年前、市長の命令で最初に殺したのは、当時の警察署長だった。彼は、市長の違法な命令に、したがわなかったからだ。
その次に殺したのは、副署長だ。
ほかにも、市長に逆らう警官を、次々に暗殺した。
検視の結果、全員、心臓麻痺で病死とされた。
彼女の暗躍により、市警は恐怖に縛られ、市長に逆らえなくなった。市警は、市長の私兵と化した。
さらに、数名の市議も、暗殺した。
それ以降、市議長派の市議たちは、用心棒を雇い、警戒するようになった。
彼女の話を聞いていた元兵士たちが、憤り始めた。市長の暗殺命令に。
警官たちの作業が、終わった。
結局、本物の金貨は、一枚もなかった。
ルビー・クールが、呼びかけた。
「勇敢なる元兵士のみなさん!」
その一言で、百名を超える元兵士たちが、高揚した面持ちとなった。
「みなさんを、新しい市警の警官に任命します。みなさんの最初の仕事は、極悪市長の逮捕です。容疑は、大量の贋金保有の現行犯です」
それまで頭を抱えていた市長が、怒鳴り散らした。
「ふざけるな! なにが逮捕だ! ワシは市長だぞ!」
冷ややかに、言い放った。ルビー・クールが。
「違うわ。あなたは、ただの極悪人よ」
第十一章「市民裁判で絶体絶命」に続く
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