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第十章 最後の切り札で絶体絶命 <第1話>
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<第十章 第1話>
ルビー・クールは、一階の受け付けに、内線電話をかけた。地元大手新聞社のフロスハーフェン支局に、繋いでもらった。
「特ダネが、あるわ。いますぐ、グランドパレスホテルの前まで、来てちょうだい」
ミネラルウォーターの瓶を片手に、リビングルーム中央の窓に、戻った。
ヒルダに、呼びかけた。
「ねえ、あなた。この町の出身かしら?」
「違うわ」
「市長とは、どんな関係かしら?」
「カネで、雇われているだけの関係よ」
「いつ頃から?」
「もう、五年に、なるわね」
「市長の命令で、何人殺したの?」
「覚えてないわ。一年目に、七名か八名を殺したわ。それ以降は、年に一名か二名、多いときで三名くらいよ」
「殺しの理由は?」
「知らないわ。都合の悪い男だったんじゃないかしら。魔法攻撃による殺人なら、心臓麻痺による死だから、目撃者がいないかぎり、殺人じゃない。ただの病死になるから」
数秒の間のあと、ヒルダが尋ねた。
「あなた、なぜあたしを、殺さなかったの? あたしの魔法攻撃でも死なないということは、あたしを上回る魔法力を、つまり、あたしを殺せるだけの魔法力を、持ってるんでしょ」
そう思ったのは、想定通りだ。そう思わせておいたほうが、都合が良い。
「もうすぐ、新聞記者たちが来るわ。彼らに、市長の命令による殺人を、すべて話しなさい。そうすれば、あなたを見逃してあげる。よその町に、逃げていいわよ」
「ちょっと、ルビー」
サファイア・レインが、小声でささやいた。
「こんな危険な魔女、野放しにして、いいの?」
ルビー・クールも、小声で答えた。
「この女を刑務所に入れることは、不可能よ。普通の看守など、魔法で殺して脱獄するから」
そのときだった。
パール・スノーが、叫んだ。軍用双眼鏡を、のぞきながら。
「市庁舎に、動きあり。建物の脇から、馬車が出てきた」
ルビー・クールも、すぐに確認した。小型双眼鏡で。
四頭立てで、黒塗りの高級馬車だ。
叫んだ。パール・スノーが。
「ライフルの銃身が、窓から出てる!」
確認した。ルビー・クールも。
馬車の左右の窓から、ライフル銃の銃身が、突き出ている。
それに、馬車の前面の木製窓が開いており、そこからもライフル銃の銃身が、突き出ている。
さらに、双眼鏡で確認した。
馭者は、腰にホルスターを身につけている。しかも、左右に二つ。
彼も用心棒だ。市長の。
鋭い声で、叫んだ。ルビー・クールが。
「全員、狙撃銃と徹甲弾を用意!」
「了解!」
小声で、尋ねた。サファイア・レインが。
「角度的に、狙いにくいわよ」
たしかに、その通りだ。馬車は、環状馬車道を、時計回りに進み始めた。
加速し始めた。四頭立て馬車が。
パール・スノーが叫んだ。
「早く狙撃命令を!」
その瞬間だった。
発砲した。馬車のライフル銃が。五月雨式。
悲鳴をあげた。サファイア・レインが。
「だいじょうぶ?」
思わず尋ねた。ルビー・クールが。
「今の、近かったわ」
「身を隠して! 安全第一の戦い方をして!」
「なんだよ、それ!」
そう吐き捨てた。パール・スノーが。
窓から顔を半分だけ出しながら、ルビー・クールが答えた。
「あたしの使命は、あなたたち二人を、無事に家に連れ帰ること。それが、指揮官としてのあたしの使命よ」
「かっこいいこと言ってるけど、接近戦になったら、こっちが不利じゃない? 人数の点で」
「こっちには、遮蔽物があるわ。石造りの壁が。一方、向こうは木製の馬車だけ。徹甲弾の前には、無力よ」
全速力で、走ってきた。四頭立ての馬車が。ライフル銃を乱射しながら。環状馬車道を。
察知した。ルビー・クールは。
この馬車は、ニコラウスの救出が目的だ。彼を馬車に乗せたあと、そのまま全速力で、走り去るつもりだ。
馬車の馭者が、怒鳴った。
「ニコラウスのぼっちゃん! 馬車に飛び乗る準備を!」
その瞬間だった。
轟いた。銃声が。
ルビー・クールは、一階の受け付けに、内線電話をかけた。地元大手新聞社のフロスハーフェン支局に、繋いでもらった。
「特ダネが、あるわ。いますぐ、グランドパレスホテルの前まで、来てちょうだい」
ミネラルウォーターの瓶を片手に、リビングルーム中央の窓に、戻った。
ヒルダに、呼びかけた。
「ねえ、あなた。この町の出身かしら?」
「違うわ」
「市長とは、どんな関係かしら?」
「カネで、雇われているだけの関係よ」
「いつ頃から?」
「もう、五年に、なるわね」
「市長の命令で、何人殺したの?」
「覚えてないわ。一年目に、七名か八名を殺したわ。それ以降は、年に一名か二名、多いときで三名くらいよ」
「殺しの理由は?」
「知らないわ。都合の悪い男だったんじゃないかしら。魔法攻撃による殺人なら、心臓麻痺による死だから、目撃者がいないかぎり、殺人じゃない。ただの病死になるから」
数秒の間のあと、ヒルダが尋ねた。
「あなた、なぜあたしを、殺さなかったの? あたしの魔法攻撃でも死なないということは、あたしを上回る魔法力を、つまり、あたしを殺せるだけの魔法力を、持ってるんでしょ」
そう思ったのは、想定通りだ。そう思わせておいたほうが、都合が良い。
「もうすぐ、新聞記者たちが来るわ。彼らに、市長の命令による殺人を、すべて話しなさい。そうすれば、あなたを見逃してあげる。よその町に、逃げていいわよ」
「ちょっと、ルビー」
サファイア・レインが、小声でささやいた。
「こんな危険な魔女、野放しにして、いいの?」
ルビー・クールも、小声で答えた。
「この女を刑務所に入れることは、不可能よ。普通の看守など、魔法で殺して脱獄するから」
そのときだった。
パール・スノーが、叫んだ。軍用双眼鏡を、のぞきながら。
「市庁舎に、動きあり。建物の脇から、馬車が出てきた」
ルビー・クールも、すぐに確認した。小型双眼鏡で。
四頭立てで、黒塗りの高級馬車だ。
叫んだ。パール・スノーが。
「ライフルの銃身が、窓から出てる!」
確認した。ルビー・クールも。
馬車の左右の窓から、ライフル銃の銃身が、突き出ている。
それに、馬車の前面の木製窓が開いており、そこからもライフル銃の銃身が、突き出ている。
さらに、双眼鏡で確認した。
馭者は、腰にホルスターを身につけている。しかも、左右に二つ。
彼も用心棒だ。市長の。
鋭い声で、叫んだ。ルビー・クールが。
「全員、狙撃銃と徹甲弾を用意!」
「了解!」
小声で、尋ねた。サファイア・レインが。
「角度的に、狙いにくいわよ」
たしかに、その通りだ。馬車は、環状馬車道を、時計回りに進み始めた。
加速し始めた。四頭立て馬車が。
パール・スノーが叫んだ。
「早く狙撃命令を!」
その瞬間だった。
発砲した。馬車のライフル銃が。五月雨式。
悲鳴をあげた。サファイア・レインが。
「だいじょうぶ?」
思わず尋ねた。ルビー・クールが。
「今の、近かったわ」
「身を隠して! 安全第一の戦い方をして!」
「なんだよ、それ!」
そう吐き捨てた。パール・スノーが。
窓から顔を半分だけ出しながら、ルビー・クールが答えた。
「あたしの使命は、あなたたち二人を、無事に家に連れ帰ること。それが、指揮官としてのあたしの使命よ」
「かっこいいこと言ってるけど、接近戦になったら、こっちが不利じゃない? 人数の点で」
「こっちには、遮蔽物があるわ。石造りの壁が。一方、向こうは木製の馬車だけ。徹甲弾の前には、無力よ」
全速力で、走ってきた。四頭立ての馬車が。ライフル銃を乱射しながら。環状馬車道を。
察知した。ルビー・クールは。
この馬車は、ニコラウスの救出が目的だ。彼を馬車に乗せたあと、そのまま全速力で、走り去るつもりだ。
馬車の馭者が、怒鳴った。
「ニコラウスのぼっちゃん! 馬車に飛び乗る準備を!」
その瞬間だった。
轟いた。銃声が。
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