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<第八章 第3話>
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<第八章 第3話>
「カネを払う。だから、息子を解放しろ」
ルビー・クールが、鼻で笑った。
「あなたの戦力は、もう、ほとんど残ってないでしょ」
「そんなことはない。州警察には、顔が利く。州警察に連絡すれば、おまえらなど、終わりだぞ」
「州警察に今から連絡しても、到着するのは明日よ。その前に、あなたを殺すことなんて、簡単よ。戦力差からいっても」
「おまえの目的は、なんだ?」
「この町に、自由をもたらすこと。それには、あなたたち親子を、排除しなければならない」
そこで、いったん言葉を句切った。
市長は、なにも口を、はさまなかった。
ルビー・クールが、言葉を続けた。
「あなたたち親子が生きのびる唯一の方法は、すべての殺人を自供して、州警察に逮捕され、州裁判所で裁判を受けることよ。常識的に考えれば、三十名以上の少女を殺したあなたの息子は死刑になるはずだけど、一流の弁護士を雇って、精神疾患などを主張したら、死刑を回避できるでしょうね。一生の間、精神病院で過ごすことになるでしょうけど」
沈黙が、流れた。
市長は、考えているのだ。最善の選択を。
脅しをかけた。ルビー・クールが。
「一千万キャピタ払うなら、今の線で、許してあげるわ。払わないなら、今から、あなたのところに、殺しに行くわよ」
数秒の沈黙のあと、市長が口を開いた。
「ワシには、切り札がある。ワシを殺すことなど、不可能だ」
「切り札って、何かしら?」
「最強の用心棒がいる。ワシには、な」
「その最強用心棒って、帝国陸軍特殊部隊の元隊員とか、かしら?」
一瞬、押し黙った。市長が。
そのあと、押し殺した声で、答えた。
「そうだ」
「最近雇った男かしら?」
「なぜ、そんなこと聞く?」
「最近雇った男なら、知り合いかもしれないと、思ったからよ。先月、帝国陸軍特殊部隊の元隊員一名を、失業させてしまってね」
「十年以上前から雇っている男だ」
「そう。それなら、あたしの知り合いではないわね」
「おまえは、何者なんだ!」
その問いには答えず、言葉を続けた。
「帝国陸軍特殊部隊の元隊員たちは、皆、凄腕よ。昨年十二月の帝都大乱のときに、彼らと一緒に戦った。ブルジョアの用心棒をしていた元隊員たちとね。だけど、そのうちの一人と、殺し合ったわ。彼は、大金に目が眩んで、雇い主を裏切ったからよ。もちろん、彼を殺したのは、あたしよ」
市長が怒鳴った。受話器越しに。
「そんな話は、嘘っぱちだ! おまえのような小娘が、特殊部隊の元隊員より、強いわけがない!」
「あたし、これまでに何度も、凄まじい殺し合いを生きのびてきたのよ。田舎町の井の中の蛙には、想像もつかないような壮絶な戦いを。帝都でね」
唸った。市長が。
今が、好機だ。
たたみかけた。ルビー・クールが。
「降伏しなさい。すべての殺人を認めて、州裁判所の裁判を受けるのよ。それが、あなたたち親子が生きのびる唯一の選択よ」
数秒の沈黙のあと、市長が口を開いた。苦しげな口調で。
「だがワシには、別の切り札もある」
「なにかしら、それは?」
「今から、その切り札を送る」
電話が切れた。
サファイア・レインが尋ねた。
「説明して、ルビー。なにか、新たな展開があった?」
「ええ。市長が、新たな切り札を送り込んでくるようよ」
「新たな切り札って?」
「わからないわ。市長の用心棒の中には、帝国陸軍特殊部隊の元隊員が一名いるそうだから、引き続き狙撃に注意して。送り込むのは、彼以外の切り札のようよ」
「で、どうすんだよ。チーム・リーダーさんよ」
パール・スノーの問いに、答えた。ルビー・クールが。そっけなく。
「まあ、しばらく様子を見ましょう。その切り札とやらが、来るまで」
「市長の屋敷に、殴り込みに行こうぜ」
パール・スノーのその言葉を、サファイア・レインが、すぐさま否定した。
「危険よ。それに、攻者三倍の法則があるから、今度は、あたしたちのほうが不利になるわ」
攻者三倍の法則とは、両軍の武器、兵士の士気、指揮官の能力が同等の場合、攻撃側は、防御側の三倍の戦力があって、初めて互角に戦えるという経験則だ。
「なら、こちらの戦力を、拡大させましょう」
平然と、言い放った。ルビー・クールが。
「どうやって?」
パール・スノーのその問いに、答えた。
「あたしに、良い考えがあるわ。まあ、見ていて」
自信ありげに、微笑んだ。ルビー・クールが。
第九章「殺し屋魔女登場で絶体絶命」に続く
「カネを払う。だから、息子を解放しろ」
ルビー・クールが、鼻で笑った。
「あなたの戦力は、もう、ほとんど残ってないでしょ」
「そんなことはない。州警察には、顔が利く。州警察に連絡すれば、おまえらなど、終わりだぞ」
「州警察に今から連絡しても、到着するのは明日よ。その前に、あなたを殺すことなんて、簡単よ。戦力差からいっても」
「おまえの目的は、なんだ?」
「この町に、自由をもたらすこと。それには、あなたたち親子を、排除しなければならない」
そこで、いったん言葉を句切った。
市長は、なにも口を、はさまなかった。
ルビー・クールが、言葉を続けた。
「あなたたち親子が生きのびる唯一の方法は、すべての殺人を自供して、州警察に逮捕され、州裁判所で裁判を受けることよ。常識的に考えれば、三十名以上の少女を殺したあなたの息子は死刑になるはずだけど、一流の弁護士を雇って、精神疾患などを主張したら、死刑を回避できるでしょうね。一生の間、精神病院で過ごすことになるでしょうけど」
沈黙が、流れた。
市長は、考えているのだ。最善の選択を。
脅しをかけた。ルビー・クールが。
「一千万キャピタ払うなら、今の線で、許してあげるわ。払わないなら、今から、あなたのところに、殺しに行くわよ」
数秒の沈黙のあと、市長が口を開いた。
「ワシには、切り札がある。ワシを殺すことなど、不可能だ」
「切り札って、何かしら?」
「最強の用心棒がいる。ワシには、な」
「その最強用心棒って、帝国陸軍特殊部隊の元隊員とか、かしら?」
一瞬、押し黙った。市長が。
そのあと、押し殺した声で、答えた。
「そうだ」
「最近雇った男かしら?」
「なぜ、そんなこと聞く?」
「最近雇った男なら、知り合いかもしれないと、思ったからよ。先月、帝国陸軍特殊部隊の元隊員一名を、失業させてしまってね」
「十年以上前から雇っている男だ」
「そう。それなら、あたしの知り合いではないわね」
「おまえは、何者なんだ!」
その問いには答えず、言葉を続けた。
「帝国陸軍特殊部隊の元隊員たちは、皆、凄腕よ。昨年十二月の帝都大乱のときに、彼らと一緒に戦った。ブルジョアの用心棒をしていた元隊員たちとね。だけど、そのうちの一人と、殺し合ったわ。彼は、大金に目が眩んで、雇い主を裏切ったからよ。もちろん、彼を殺したのは、あたしよ」
市長が怒鳴った。受話器越しに。
「そんな話は、嘘っぱちだ! おまえのような小娘が、特殊部隊の元隊員より、強いわけがない!」
「あたし、これまでに何度も、凄まじい殺し合いを生きのびてきたのよ。田舎町の井の中の蛙には、想像もつかないような壮絶な戦いを。帝都でね」
唸った。市長が。
今が、好機だ。
たたみかけた。ルビー・クールが。
「降伏しなさい。すべての殺人を認めて、州裁判所の裁判を受けるのよ。それが、あなたたち親子が生きのびる唯一の選択よ」
数秒の沈黙のあと、市長が口を開いた。苦しげな口調で。
「だがワシには、別の切り札もある」
「なにかしら、それは?」
「今から、その切り札を送る」
電話が切れた。
サファイア・レインが尋ねた。
「説明して、ルビー。なにか、新たな展開があった?」
「ええ。市長が、新たな切り札を送り込んでくるようよ」
「新たな切り札って?」
「わからないわ。市長の用心棒の中には、帝国陸軍特殊部隊の元隊員が一名いるそうだから、引き続き狙撃に注意して。送り込むのは、彼以外の切り札のようよ」
「で、どうすんだよ。チーム・リーダーさんよ」
パール・スノーの問いに、答えた。ルビー・クールが。そっけなく。
「まあ、しばらく様子を見ましょう。その切り札とやらが、来るまで」
「市長の屋敷に、殴り込みに行こうぜ」
パール・スノーのその言葉を、サファイア・レインが、すぐさま否定した。
「危険よ。それに、攻者三倍の法則があるから、今度は、あたしたちのほうが不利になるわ」
攻者三倍の法則とは、両軍の武器、兵士の士気、指揮官の能力が同等の場合、攻撃側は、防御側の三倍の戦力があって、初めて互角に戦えるという経験則だ。
「なら、こちらの戦力を、拡大させましょう」
平然と、言い放った。ルビー・クールが。
「どうやって?」
パール・スノーのその問いに、答えた。
「あたしに、良い考えがあるわ。まあ、見ていて」
自信ありげに、微笑んだ。ルビー・クールが。
第九章「殺し屋魔女登場で絶体絶命」に続く
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