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<第八章 第2話>
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<第八章 第2話>
発砲した。
ルビー・クール、サファイア・レイン、パール・スノーの三名の少女たちが。
次々に、五月雨式に。
最初の発砲から十五秒ほどで、三名の少女たちは、合計十発、発砲した。ルビー・クールは四発、サファイア・レインとパール・スノーは三発ずつだ。
その十発の徹甲弾で、三十名ほどのギャングが、死傷した。
逃げ始めた。三分の一のギャングたちが。
彼らは、前回も逃げた者たちだ。ヴォルフガングが死んだときに。
発砲を続けた。三名の少女たちが。
ギャングたちも、数名が発砲した。拳銃で。
だが、拳銃の有効射程距離を、大幅に超えていた。
そのため、ホテルの窓に飛び込んだ銃弾は、一発もなかった。
最初の発砲から三十秒ほど経った。
ルビー・クールが命じた。
「撃ち方、やめ」
ギャングの死傷者は、五十名を超えていた。残り五十名弱は、すでに逃走していた。その多くは、西側街道口から、消えていた。
多くの娼婦は、最初の銃撃で、恐怖により腰が抜けて、へたり込んでいた。
ルビー・クールが、口を開いた。
「パール、またお願い」
「なんで、あたしばっかりなんだよ。サファイアにも、たまには頼めよ」
「あなたのほうが、接近戦は強いでしょ」
そう言うと、渋い顔だったパール・スノーは、満更でもない表情を浮かべた。
「しかたねえな。キチンと狙撃で援護しろよ」
「ええ。もちろんよ。サファイアと二名体制で援護するわ」
パール・スノーが、スイートルームを出て行った。
二分か三分後、彼女が、ホテルの玄関から出てきた。ホテルの男性従業員二名を、引き連れて。
数分後、ホテルに戻ってきた。数挺の拳銃を、男性従業員が持つ毛布の上に乗せて。それに、三十名ほどの娼婦を引き連れて。
パール・スノーが、スイートルームに戻って来た。
ルビー・クールが、呼びかけた。
「サファイア、ここの指揮権、一時的に預けるわ」
「ちょっと、突然、そんなこと言われても……」
「すぐ、戻ってくるわ。五分か、六分間程度よ」
ルビー・クールは、一階に降りた。
一階のロビーは、女たちで満杯だった。解放した女たちは、約五十名だ。
呼びかけた。ルビー・クールが。彼女たちに。
「みなさん!」
女たちの視線が、集中した。
「みなさんは、もう、自由です。家族のもとに、帰れます」
数名の女たちが、号泣し始めた。
その号泣は、あっという間に伝染し、女たちの半分が、号泣し始めた。残りの半分も、涙を流している。
ルビー・クールが、声を張りあげた。
「極悪市長との戦いは、まだ、終わっていません。そのため、もうしばらく、辛抱してください。銃声が聞こえたら、床に伏せてください。流れ弾に、あたらないように」
言葉を、続けた。
「スープとパンを用意します。順番に、一階レストランで、食事を取ってください。薄着で寒い人には、毛布もあります」
リリアが、立ち上がった。彼女は姉と、きつく抱きしめ合っていた。ロビーのソファーに座って。
「ルビー様! 姉を救出していただき、誠にありがとうございます。このご恩は、一生忘れません。あたしにできることがあれば、なんでも、お申し付けください」
「よかったわね、次姉が無事で」
そのあと、二秒か三秒の間のあと、ルビー・クールが言葉を続けた。
「あなたたち姉妹には、あとで話すことがあるわ。この一件が終わるまで、もうしばらく待ってね」
そう口にしたルビー・クールの表情は、かすかに、悲しげだった。
リリア姉妹は、何のことかわからず、キョトンとしていた。
ルビー・クールは、スイートルームに戻った。
午後四時半を、少し過ぎていた。
「日没は、何時頃かしら?」
そう尋ねた。サファイア・レインとパール・スノーに。
「そんなの知らねえよ」
パール・スノーが、そう答えた。
サファイア・レインが、答えた。
「今頃の季節なら、帝都では、六時過ぎよ」
「あと、一時間半ほどね」
「この町は、帝都から、だいぶ西にあるから、同じとは、かぎらないわよ。帝都とは」
パール・スノーが、尋ねた。
「で、どうすんだよ。このあとの、一手」
「市長を倒すわ」
「その方法は」
「そうね……」
そのときだった。電話が鳴った。
受話器を取った。
市長だった。
発砲した。
ルビー・クール、サファイア・レイン、パール・スノーの三名の少女たちが。
次々に、五月雨式に。
最初の発砲から十五秒ほどで、三名の少女たちは、合計十発、発砲した。ルビー・クールは四発、サファイア・レインとパール・スノーは三発ずつだ。
その十発の徹甲弾で、三十名ほどのギャングが、死傷した。
逃げ始めた。三分の一のギャングたちが。
彼らは、前回も逃げた者たちだ。ヴォルフガングが死んだときに。
発砲を続けた。三名の少女たちが。
ギャングたちも、数名が発砲した。拳銃で。
だが、拳銃の有効射程距離を、大幅に超えていた。
そのため、ホテルの窓に飛び込んだ銃弾は、一発もなかった。
最初の発砲から三十秒ほど経った。
ルビー・クールが命じた。
「撃ち方、やめ」
ギャングの死傷者は、五十名を超えていた。残り五十名弱は、すでに逃走していた。その多くは、西側街道口から、消えていた。
多くの娼婦は、最初の銃撃で、恐怖により腰が抜けて、へたり込んでいた。
ルビー・クールが、口を開いた。
「パール、またお願い」
「なんで、あたしばっかりなんだよ。サファイアにも、たまには頼めよ」
「あなたのほうが、接近戦は強いでしょ」
そう言うと、渋い顔だったパール・スノーは、満更でもない表情を浮かべた。
「しかたねえな。キチンと狙撃で援護しろよ」
「ええ。もちろんよ。サファイアと二名体制で援護するわ」
パール・スノーが、スイートルームを出て行った。
二分か三分後、彼女が、ホテルの玄関から出てきた。ホテルの男性従業員二名を、引き連れて。
数分後、ホテルに戻ってきた。数挺の拳銃を、男性従業員が持つ毛布の上に乗せて。それに、三十名ほどの娼婦を引き連れて。
パール・スノーが、スイートルームに戻って来た。
ルビー・クールが、呼びかけた。
「サファイア、ここの指揮権、一時的に預けるわ」
「ちょっと、突然、そんなこと言われても……」
「すぐ、戻ってくるわ。五分か、六分間程度よ」
ルビー・クールは、一階に降りた。
一階のロビーは、女たちで満杯だった。解放した女たちは、約五十名だ。
呼びかけた。ルビー・クールが。彼女たちに。
「みなさん!」
女たちの視線が、集中した。
「みなさんは、もう、自由です。家族のもとに、帰れます」
数名の女たちが、号泣し始めた。
その号泣は、あっという間に伝染し、女たちの半分が、号泣し始めた。残りの半分も、涙を流している。
ルビー・クールが、声を張りあげた。
「極悪市長との戦いは、まだ、終わっていません。そのため、もうしばらく、辛抱してください。銃声が聞こえたら、床に伏せてください。流れ弾に、あたらないように」
言葉を、続けた。
「スープとパンを用意します。順番に、一階レストランで、食事を取ってください。薄着で寒い人には、毛布もあります」
リリアが、立ち上がった。彼女は姉と、きつく抱きしめ合っていた。ロビーのソファーに座って。
「ルビー様! 姉を救出していただき、誠にありがとうございます。このご恩は、一生忘れません。あたしにできることがあれば、なんでも、お申し付けください」
「よかったわね、次姉が無事で」
そのあと、二秒か三秒の間のあと、ルビー・クールが言葉を続けた。
「あなたたち姉妹には、あとで話すことがあるわ。この一件が終わるまで、もうしばらく待ってね」
そう口にしたルビー・クールの表情は、かすかに、悲しげだった。
リリア姉妹は、何のことかわからず、キョトンとしていた。
ルビー・クールは、スイートルームに戻った。
午後四時半を、少し過ぎていた。
「日没は、何時頃かしら?」
そう尋ねた。サファイア・レインとパール・スノーに。
「そんなの知らねえよ」
パール・スノーが、そう答えた。
サファイア・レインが、答えた。
「今頃の季節なら、帝都では、六時過ぎよ」
「あと、一時間半ほどね」
「この町は、帝都から、だいぶ西にあるから、同じとは、かぎらないわよ。帝都とは」
パール・スノーが、尋ねた。
「で、どうすんだよ。このあとの、一手」
「市長を倒すわ」
「その方法は」
「そうね……」
そのときだった。電話が鳴った。
受話器を取った。
市長だった。
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