絶体絶命ルビー・クールの逆襲<炎の反逆者編>

蛇崩 通

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第八章 またまた人質取られて絶体絶命 <第1話>

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   <第八章 第1話>
 「なら、さっさと撃てよ」
 パール・スノーの口調は、不機嫌そうだ。
 「情報を収集してからよ。悪いけどパール、また銃の回収を……」
 そこまで言ったときだった。
 リリアが叫んだ。窓から。
 「お姉ちゃん!」
 その直後、彼女が走り出した。スイートルームの玄関へ。ドアを開けると、脱兎だっとのごとく、階段を駆け下りた。
 「パール、彼女の護衛も、お願い。人質の女性たち全員を保護して、このホテルまで連れてきて。それに、すべての銃を回収して。なにかあったら、狙撃で援護するから」
 「ライフル十挺は、四十キロから五十キロになるよ。ホテルの従業員の男、使っていい?」
 「ええ、もちろんよ」
 パール・スノーは、両手に三十二口径リボルバーを持ち、スイートルームを出て行った。
 窓から、様子を見た。
 リリアが一直線に、姉のもとへ走っていた。
 へたり込んでいる姉に、抱きついた。
 執事が、立ち上がった。ナイフを手に。
 リリア姉妹のもとに向かった。ナイフを振り上げて。
 その瞬間、狙撃した。ルビー・クールが。
 絶叫した。執事が。右手を撃たれて。
 ナイフを落とし、右手を抱えて、うずくまった。
 苦しみ続けた。執事が。
 数分後、パール・スノーが、ホテルの玄関から出てきた。四名の男性従業員を引き連れて。従業員の一人は、毛布を一枚、手にしている。
 その数分後、パール・スノーたちが、ホテルに戻って来た。銃を回収し、十七名の人質だった女たちを連れて。
 それに、負傷した執事も、連れてきた。ホテルの前に。警部の隣に、立たせた。
 ルビー・クールが、一階の受け付けに、内線電話をかけた。十七名分のスープとパンを、人質だった女たちに提供するように、指示した。それに、十七名分の毛布も。五月なので、寒い季節ではない。だが夕方になったので、気温が下がってきた。彼女たちの中には、薄着の者もいる。だから、毛布を用意させた。
 パール・スノーが、スイートルームに戻って来た。ホテルの男性従業員を引き連れて。毛布に乗せたライフル銃十挺と共に。
 「ルビー、で、次の一手は?」
 「そうねえ……」
 「考えてないのかよ! だったら、あたしに譲れよ! チーム・リーダーの座を」
 「パールは、なにか良い考えがあるの?」
 「ない!」
 きっぱりと、言い切った。パール・スノーが。
 「それじゃあ、譲れないわね。ガンマ班のチーム・リーダーの座は」
 サファイア・レインが、口をはさんだ。
 「馬鹿話している暇は、ないわよ。新たな敵が、現れたわ。西側街道口付近に」
 「死神団の残存勢力かしら?」
 「ええ、そのようね。たくさんの娼婦を連れているわ」
 「解放するように、要求したからね」
 小型双眼鏡で、確認した。ルビー・クールが。
 西側街道口付近に、続々と男女が現れた。
 数分間待つと、彼らが、整列を始めた。
 前列に娼婦が三十名ほど。横一列に並ばされた。
 彼女たちは服装が派手で、露出度が高いので、遠目でも、娼婦だとわかる。
 その後ろに、百名ほどの男が並んだ。横に、三列から四列で。
 笑い始めた。パール・スノーが。軍用双眼鏡を、のぞきながら。
 「市長のバカと、同じ人質戦法なんて」
 サファイア・レインが、たしなめた。
 「あなた、なに笑ってるのよ」
 笑いながら、答えた。パール・スノーが。
 「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として。だから今、笑ってるんだよ」
 狙撃銃のスコープをのぞきながら、サファイア・レインが、不安げな表情で言った。
 「今回は身長差が、あまりないわよ。人質にあてずに、男だけにあてるのは、さっきよりも困難よ」
 たしかに、そうだ。死神団のギャングたちの身長は、百五十五センチから百六十五センチメートルくらいが多い。
 一方、娼婦たちの身長は、百四十センチから百五十センチくらいが多い。
 身長差は、十五センチメートルくらいだ。
 彼らが、移動し始めた。娼婦たちを人間の盾にして。
 ルビー・クールが、指示した。
 「全員、狙撃銃と徹甲弾を用意」
 「了解」
 男たちの最前列中央には、背の高い男がいた。百七十センチメートル以上ある。
 「男たちの最前列中央は、あたしが仕留めるわ」
 そう言ってから、狙撃対象を割り振った。
 死神団の残存戦力が、まっすぐに前進してきた。西側街道口から、グランドパレスホテルへ。
 おそらく、ほぼ全員だ。死神団の生き残りの。
 ルビー・クールは、狙撃銃の狙いをつけた。
 「狙撃、用意」
 「了解」
 冷静な表情だった。三名の少女は。
 敵集団の行進が、止まった。
 ルビー・クールたちから五十メートルほどの距離で。
 背の高い下級幹部が、拡声器越しに怒鳴った。
 「人質の女どもを、殺されたくなければ……」
 冷ややかに命じた。ルビー・クールが。彼の言葉の途中で。
 「撃ち方、始め!」
 銃声が、とどろいた。
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