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<第七章 第4話>

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   <第七章 第4話>
 「女たちは、全員解放する。広場に連れて行くから、撃つなよ」
 その市長の声には、怒気が、こもっていた。
 観念した声では、ない。
 「ええ。わかったわ」
 あっさりと、ルビー・クールが答えた。疑うそぶりを、みじんも見せずに。
 電話が、切れた。
 サファイア・レインとパール・スノーに、電話の内容を説明した。油断しないように、伝えた。
 小型双眼鏡で、市庁舎の三階の窓を見た。市長室のあるあたりの窓だ。
 だが、ブラインドが降りているため、室内の様子は、わからない。
 十三名の警官たちが、六名の負傷警官を、運んでいた。
 すでに、三台の馬車と、病院との間の往復は、三往復目だ。
 声をかけた。ルビー・クールが、警部に。
 「負傷者を全員病院に運んだら、すぐにこの場所に戻ってくるように、部下に伝えなさい。もし、部下たちが戻ってこなかったら、あなたの足を撃つわよ。しかも、逃げた警官一人につき、一発ずつよ」
 クソッと吐き捨てたあと、警部は、部下たちに厳命した。
 数分後、十三名の警官たちは、病院から戻ってきた。駆け足で。
 彼らを、馬車道に、横一列に整列させた。いつでも、射殺しやすいように。
 それから、しばらく待った。ミネラルウォーターを、チビチビと飲みながら。
 時計を見た。時刻は、午後四時を少し過ぎていた。
 市庁舎脇の道路から、集団が現れた。
 女たちが十数名。そのあとから、男たち。
 小型双眼鏡を使って、人数を数えた。
 女は十七名、男は二十一名だ。
 「あいつら、ライフル持ってるよ」
 パール・スノーが、そう吐き捨てた。
 「想定の範囲内よ」
 冷ややかに答えた。ルビー・クールが。
 すばやく数えた。
 ライフル銃は、十挺だ。
 ほかに、拳銃も所持しているかもしれないが、双眼鏡では、確認できない。
 女たちを、横一列に整列させた。市庁舎の前で。
 男たちは、女たちの後方に、横一列に並んだ。
 人間の盾に、するつもりだろう。
 女たちの服装は、様々だ。
 小型双眼鏡で、確認した。
 メイド服の女が五名。
 露出度の高い服が五名。彼女たちは、全員ミニスカートで、赤や青などの派手な色の服だ。
 それに、農家の娘風の服が四名。
 残りの三名は、裸の上に、男物のワイシャツを着ている。屋敷にいたときは、裸だったのだろう。そのため、自分の服がないのだ。
 男たちが女たちをおどして、前進し始めた。二列横隊で。
 男たちの中央にいる男は、執事のような服装で、背が高かった。右手に、拡声器を持っている。武器は、手にしていない。
 彼らが、広場の中央付近まで、来た。
 女たちは、大量の死体を見ておびえていた。足が動かなくなる者、しゃがみ込んでしまう者などが、続出した。
 それを、男たちが無理矢理立たせ、歩かせた。
 彼らは、ギャングたちの死体を避けて、回り込んだ。北東側に。ルビー・クールたちのいるホテルから見て、真正面だ。
 行進が、止まった。
 ギャングたちの大量の死体の前に、布陣した。
 ルビー・クールたちとの距離は、五十数メートルほどだ。
 背の高い執事が、拡声器を手に、怒鳴った。
 「武器を捨てて降伏しろ! さもないと、この女たちを、殺すぞ!」
 そんなことだろうと、思った。心の中で、肩をすくめた。ルビー・クールが。
 そのときだった。
 飛び込んできた。リリアが。ベッドルームから、リビングルームに。
 「ルビー様! お姉ちゃんです! お姉ちゃんを助けてください!」
 彼女の叫びは、絶叫に近かった。
 ルビー・クールのそばによると、窓から、右手で指さした。
 「左側のほうです! 胸の部分が赤いチェックの服で、金髪です!」
 彼女の後ろには、背の高い男が立っている。身長差は、二十センチメートルくらいか。
 そのときだった。
 ヴィクトールが叫んだ。大声で。
 「赤いチェックの服の金髪女だ! そいつが、あばずれどもの身内だ!」
 リリアの姉、ミラの後方の男が、これ見よがしに大型ナイフを、ミラの首筋に突きつけた。
 まいったわね、これは。敵に、こちらの弱みがバレるなんて。しかも、そうそうに。
 ルビー・クールは、心の中で、頭を抱えた。
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