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<第七章 第3話>

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   <第七章 第3話>
 ニヤつきながら、パール・スノーが尋ねてきた。
 「誰からの電話?」
 「この町の市長よ。つまり、ニコラウスの父親」
 ルビー・クールは、電話の内容を説明した。サファイア・レインとパール・スノーに。
 それに、現在の状況も。おおまかに、整理しながら。
 パール・スノーが、尋ねた。
 「敵の戦力は、もう、ほとんど残っていないんじゃない?」
 「ええ、そうね。死神団は、あと百名前後、いるかもしれないけれど。広場から逃げ出した連中は、戦意喪失状態のはずよ。ほかに、市長の子飼いの用心棒が、いるでしょうね。たぶん人数は、数十名」
 ニコラウスの取り巻きが十名だった。そのため、市長の用心棒が、三十名から五十名ほどいても、不思議ではない。百名の可能性も、ある。
 心配そうな顔で、サファイア・レインが尋ねた。
 「腕利きの用心棒がいたら、危険よね」
 「そうね。特に、特殊部隊あがりの男とか」
 ルビー・クールのその言葉を、パール・スノーが、すぐさま否定した。
 「そんな男、めったにいないよ」
 「あら、なんで簡単に否定するの?」
 「あたし、そんな男に会ったことない」
 「あたしは、あるわよ。戦ったことも、あるし」
 「それは、帝都の話だろ。こんな田舎町で、ありえないだろ」
 「そう言われると、そんな気もするけど、一人くらい、高給で雇っていても、おかしくないから、気をつけないとね」
 「どうやって?」
 サファイア・レインのその問いに、ニヤリと微笑んだ。ルビー・クールが。
 「ニコラウスに、聞いてみましょう」
 大声で、呼びかけた。
 「ねえ、ニコラウス。あなた、さっきから静かだけど、生きてる?」
 「オレ様も、病院へ運べ!」
 「あら、元気そうね。なによりだわ」
 「元気なわけ、ねえだろ! 左足の感覚が、なくなってきた!」
 「ところで、あなたの父は、子飼いの用心棒は、どのくらい、いるのかしら?」
 「そんなことより、オレ様を病院へ運べ! カネなら、払う」
 「お金を払うのは、あなたの父親かしら?」
 「そうだ」
 「さきほど、あなたの父親と、電話で話したわ。息子を助けたければ、一千万キャピタ払え。そう言ったら、激怒して電話を切ったわよ」
 (著者注:一千万キャピタは日本円で十億円相当)
 「そんな大金、払えるわけないだろ!」
 「あら、残念ね」
 ルビー・クールが、言葉を続けた。
 「ところで市長には、子飼いの用心棒が何人くらい、いるのかしら? 百人くらい?」
 「そんなに、いるわけないだろ!」
 「それじゃあ、五十人より多い? それとも少ない?」
 「誰が、おまえなんかに答えるか!」
 「じゃあ、ヴィクトールに尋ねるわ。答えなかったら、膝を撃つわよ。一生歩けない身体になるわよ」
 そのとたんヴィクトールは、ペラペラと供述した。ルビー・クールの質問に対し。
 市長公邸には、男性使用人が、三十名ほどいるようだ。その半分は、従軍経験者で、戦場で、殺人の経験があるらしい。この町の出身で、そういう男たちを、積極的に雇用しているようだ。
  加えて、市長公邸の男性使用人たちは、定期的に射撃訓練をしているようだ。
 「週に何回? それとも、月に何回かしら?」
 そう尋ねた。
 どうやら、一年に数回程度らしい。河原で、射撃訓練をするそうだ。実弾を使って。
 となると、射撃の腕は、たいした腕ではない。近距離で撃ち合わないかぎり、危険は少ない。
 そのときだった。
 サファイア・レインが、小声でささやいた。
 「ルビー、ギャングの小集団発見。広場の西側街道口付近よ」
 小型双眼鏡で観察した。
 人数は十名ほどだ。
 偵察だろう。アジトにいた下級幹部が、状況把握のために、派遣したのだろう。
 ヴィクトールに、呼びかけた。ルビー・クールが。
 「あなたの仲間が、来ているわよ。伝令役として使えるから、そばに呼びなさい」
 身振り手振りを交えながら、ヴィクトールが、彼らを大声で呼んだ。
 やってきた。十名のギャングが。
 ルビー・クールは、ヴィクトールに要求した。電話で、アジトにいた下級幹部に伝えたのと、同じ内容を。
 大声で、ヴィクトールが命じた。十名のギャングに。
 「あの赤毛の女の要求に、したがえ」
 その直後、小声で、なにかを指示した。彼らに。
 小声のため聞こえなかったが、どうせ、よからぬ作戦の指示だろう。
 指示を受けた十名のギャングは、全速力で広場から走り去った。アジトに向かって。
 その直後、電話が鳴った。
 受話器を取った。
 市長だった。
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