絶体絶命ルビー・クールの逆襲<炎の反逆者編>

蛇崩 通

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<第六章 第6話>

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   <第六章 第6話>
 三台の馬車が、動き出した。馬車道を数メートル前進してから、右折し、中央円形広場に、入ろうとし始めた。
 馬車道と広場の間には、段差がある。
 そのため、馬車を押している警官たちは、苦労しているようだ。
 それにより、馬車の陰から、多くの警官の姿が、はみ出した。
 パール・スノーが、ぼやいた。
 「今なら、何名も狙撃できるのに」
 ルビー・クールは、そのぼやきを無視し、小声で指示を出した。サファイア・レインとパール・スノーに。
 サファイア・レインが、小声で報告した。
 「左側の馬車は、警官が十五名。横に三名、縦に五名。ライフル銃が二挺」
 パール・スノーも報告した。
 「右側も、同様よ」
 ルビー・クールも、二人に話した。
 「中央の馬車の陰には、十二名の警官と、金髪の警部が一名、ライフル銃は二挺よ」
 馬車は、三名の警官が押している。中央の馬車は、その三名の後ろに、警部が、腰をかがめている。ライフル銃を持って。
 警部が、身振り手振りで指示を出した。
 馬車の後方の警官たちが、馬車の陰に隠れた。
 隊列の間隔を、狭めたのだ。全員が、馬車の陰に隠れることが、できるように。
 中央の馬車の場合、車体の陰から出ているのは、二挺のライフル銃の銃身だけだ。
 警部は、銃口を上に向けている。
 一方、もう一挺のライフル銃は、銃口を左横に向けている。
 三台の馬車が、一列横隊で、前進し始めた。ゆっくりと。グランドパレスホテルの方角に、向かって。
 三台の馬車が、中央円形広場の中央付近に、近づいてきた。
 小声で、指示した。ルビー・クールが。
 「狙撃、用意」
 「了解」
 今回は、ルビー・クールも、狙撃銃に照準器スコープを装着している。
 できれば、車内に入れた椅子の間隙かんげきを、狙いたかったからだ。
 だが、馬車をスコープでのぞくと、馬車前面の窓は木製で、閉まっていた。
 これでは、内部の状況は、わからない。
 馬車が、広場中央のギャングの死体近くに、迫ってきた。
 もうそろそろ、八十メートルだ。
 するどい声で、命じた。
 「狙撃開始!」
 「了解!」
 発砲した。
 次々に。三名の少女たちが。
 ルビー・クールは、馬車の車体中央を狙った。その付近ならば、徹甲弾てっこうだんが貫通すれば、姿勢を低くしている警部の腹か胸に、あたるはずだ。
 空薬莢からやっきょうを、排出した。
 次弾を、装填そうてんしようとしたときだった。
 警官たちも、発砲してきた。
 三発だ。銃声は。
 一発、飛び込んできた。中央の窓に。
 鋭い声で、叫んだ。ルビー・クールが。
 「壁に隠れて! 装填のときは!」
 次弾を装填した。
 発砲した。今度は、車体の左側を狙った。
 パール・スノーとサファイア・レインも、二発目を発砲した。
 ルビー・クールは、いったん窓脇の壁に身を隠し、次弾を装填した。
 三発目を、発砲した。
 今度は、車体の右側を狙った。
 パール・スノーとサファイア・レインも、三発目を発砲した。
 身を隠しながら、次弾を装填した。
 窓から、顔を出した。
 数秒待ったが、警官たちからの反撃は、なかった。
 小型双眼鏡で、馬車の周囲を観察した。
 中央の馬車の近くには、ライフル銃が一挺、落ちている。それに、死亡した警官の腕も、見える。
 パール・スノーが、嬉しそうに報告した。軍用双眼鏡を、のぞきながら。
 「右側の馬車の敵、全滅の模様!」
 ルビー・クールも、報告した。二人のために。
 「中央の馬車も、全滅の模様」
 サファイア・レインが、口を開いた。狙撃銃のスコープを、のぞきながら。
 「もうちょっと、待って。双眼鏡と違って、スコープは視界が狭いから」
 数秒後、彼女が報告した。
 「左側の馬車の敵、全滅の模様」
 歓声をあげた。パール・スノーが。
 ルビー・クールは、小型双眼鏡で、三台の馬車を観察した。
 三台の馬車の陰から、複数の警官の腕が出ている。
 いくつかの腕は、動いている。
 負傷者だ。
 彼らは、石畳の上に倒れ、もがき苦しんでいるのだ。
 徹甲弾は、腹や胸を貫通したのだろう。
 車内に入れた木製の椅子は、遮蔽物しゃへいぶつとして、役に立たなかったようだ。
 徹甲弾一発で、四名から五名の警官が死傷したようだ。
 小型双眼鏡で、しばらく観察し続けた。戦闘可能な者が、まだ残っていないかどうか。
 だが、数分間ほど経っても、ライフル銃を手に取る者は、いなかった
 ルビー・クールが、窓から下を見下ろし、よびかけた。中年太りの茶髪警部に。彼は、ホテルの前で、呆然ぼうぜんと立ち尽くしている。
 「警部さん、取引しましょう」
 
    第七章「人質取られて絶体絶命」に続く
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