絶体絶命ルビー・クールの逆襲＜炎の反逆者編＞

＜第五章 第4話＞

　　＜第五章　第4話＞
　警官隊が、布陣した。歩道から、馬車道へ後退して。
　一列横隊だ。グランドパレスホテルの正面に。
　警部が、仁王立ちした。リビングルーム中央の窓の正面に。
　歩道なら、距離が五メートル以内だが、馬車道の広場寄りまで後退すれば、十五メートルほどの距離になる。
　警官たちは、一メートル間隔で、並んだ。ライフル銃を持った警官は、警部の右手に三名、左手には二名。その左右に、拳銃を所持した警官が十名ずつ。さらにその左右に、銃を持たず、警棒だけの警官が、合計十五名。警部の右手側に五名、左手側に十名だ。
　警部が後ろを振り返り、ニコラウスとヴィクトールに声をかけた。小さな声だったので、なにを話したのかは、聞こえなかった。
　ヴィクトールを逮捕する気は、ないようだ。
　警部が、ルビー・クールたちに呼びかけた。拡声器を手に。
　「武器を捨てて、投降しなさい！　人質を、今すぐ解放しなさい！」
　
　　＊　＊　＊　＊　＊　＊

　答えた。ルビー・クールが。不敵な笑えみを、浮かべながら。
　「反逆者ですって？　いいわね、それ。それじゃあ今から、反逆者になるわ。あたしは」
　怒鳴りまくった。警部が。大きく動揺しながら。
　「バカか、おまえは！　理解しているのか？　事ことの重大性を！　おまえも、おまえの家族も、終わりだぞ！　もう絶体絶命だ！　観念して、おとなしく投降せよ！」
　冷ややかに、言い放った。ルビー・クールが。
　「絶体絶命は、あなたたちよ。なぜなら、すでにもう、あたしの逆襲の時間だから」
　その直後、大声で叫んだ。ルビー・クールが。窓から上半身を乗り出して。
　「さあ！　反逆の開始よ！」
　発砲した。右手の拳銃で。
　弾はじき飛ばした。警部の右手の拳銃を。
　その直後、窓脇の壁に、身を隠した。
　轟とどろいた。銃声が。一斉いっせいに。
　警官たちが、発砲したのだ。
　彼らは、動転していた。自分たちが、銃撃されて。
　拳銃を持つ警官たちは、わずか六秒ほどで、全弾、撃ち尽くした。
　ライフル銃を持つ警官たちも、一発目を撃ったあと、次弾を装填して、二発目を撃った。五秒か六秒後に。
　銃を持つ警官は全員、装弾を開始した。
　今が、好機だ。
　ルビー・クールが、叫んだ。
　「射撃開始！」
　三名の少女たちが、窓から姿を現した。二挺拳銃で。
　発砲した。次々に。
　最初の一秒で、ライフル銃を持つ警官五名を倒した。
　続いて、拳銃を所持する警官二十名を、倒した。二十名を倒すのにかかった時間は、わずか三秒だった。
　三秒間に、サファイア・レインとパール・スノーは、六名ずつ倒した。
　ルビー・クールは、その三秒間に、左右の拳銃を四発ずつ発砲し、八名を射殺した。
　わずか、五秒弱だった。
　五秒弱で、銃で武装した警官二十五名を、倒した。
　銃口を向けた。警部に。ルビー・クールが。
　「動かないで！　動くと、撃つわよ！」
　驚愕きょうがくしていた。警部が。
　まさか、制服警官を射殺するとは、思ってもいなかったのだ。
　怒鳴り散らした。警部が。
　「おまえら、なにをしたか、わかってるのか！　制服警官を殺したんだぞ！　国家反逆罪だぞ！」
　「違うわ」
　冷ややかに、言い放った。ルビー・クールが。
　「あたしたちが殺したのは、警官じゃない」
　「警官だ！」
　「いえ、違うわ。あなたたちは、警官じゃない」
　「警官だ！　本物の！」
　「違うわ。本物の警官は、市民の安全を守る者のことよ。あなたたちは、市民女性が拉致されて、殺されているのを、見て見ぬふりをしている。そのうえ、市民に言いがかりをつけて、カネをむしり取っている。それは、悪党の所業よ」
　「どこに、そんな証拠がある！」
　「証拠？　あなたたちが悪徳警官であるか否かは、これからのあなたたちの行動で、明白になるわ」
　三秒か四秒沈黙したあと、警部が怒鳴った。
　「どういうことだ！」
　「その前に、あなたたちの銃を回収するわ。警部、部下二名に命じて。拳銃とライフル銃を、歩道まで運ぶように」
　怒鳴った。警部が、怒りの表情を浮かべて。
　「誰が、おまえらの命令など聞くか！」
　「あたしの指示に従ってくれたら、医者を呼んで、負傷した警官の治療をしてあげるわ。今すぐ止血すれば、助かる警官もいるわよ。さあ、自分の部下の命と、くだらない自分のプライド、どちらが重要かしら」
　クソッと、吐き捨ててから、警部は部下二名に命じた。ルビー・クールの指示に従うように、と。
　ここまでは、順調だ。
　だが、ここからが、正念場だ。
　ルビー・クールは、気持ちを引き締めた。