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<第四章 第5話>

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  <第四章 第5話>
 狙撃し続けた。三名の少女たちが。徹甲弾てっこうだんで。
 一発の徹甲弾で、十名前後が死傷し続けた。
 ギャングたちも、発砲し続けた。拳銃で。恐怖に駆られて、五月雨式さみだれしきに。
 だが、拳銃では遠すぎた。ルビー・クールたちが陣取ったホテルは。
 おそらく、理解不能だろう。彼らには。なにが、起きているのかを。死神団の前列付近の者以外は。
 集団の中央付近や、後方にいる者たちは、前に立つ男たちが障壁となって、なにが起きているのか、わからないはずだ。
 周囲で、絶叫や悲鳴が聞こえ、どうするべきかと立ち尽くしている間に、自分も銃弾を喰らい、激痛が走る。
 気づく間もなく即死するか、気づいたときには重軽傷をっているか。
 三十秒ほどで、二十五発の徹甲弾を撃った。三名合計で。
 死神団の六割ほどが、死傷した。
 だが、四割ほどが、まだ立っている。
 最前列付近の者の中には、死傷した下級幹部の拳銃を拾い、発砲する者もいる。
 とはいえ、ギャングの多くは、状況を理解し始めた。障壁となる人間が減ったためだ。
 そのため、彼らは浮き足立ち始めた。
 狙撃を続けた。三名の少女たちが。
 最初の狙撃から五十秒ほどで、拳銃を手にした男を、全員射殺した。
 撃った徹甲弾の数は、三名合計で四十発だ。
 銃撃の後半は、立っている敵の数が減ったため、一発の徹甲弾で数名しか、死傷させることができなかった。
 そのため、四十発で死傷したギャングの数は、三百五十名ほどだ。
 逃げ始めた。生き残りのギャングたちが。五月雨式に。
 「撃ち方、やめ!」
 命じた。ルビー・クールが。
 「ヤツらを逃がすのかよ!」
 不満げだ。パール・スノーは。
 後方と、右手側と左手側に、それぞれ十数名が、走って逃げている。
 中央円形広場は、直径百メートルだ。十秒ほどもあれば、馬車道を横断し、建物のかげに飛び込める。
 「そのまま逃がして、いいわ。恐怖は伝染するから。生き残りがいたほうが、この場にいない死神団のメンバーにも、恐怖が伝わるわ。そのほうが、好都合よ」
 「で、これから、どうするの?」
 パール・スノーの質問に、ルビー・クールが答えた。
 「警戒しながら、待機よ。軽傷者が銃を手に取ったら、射殺して。たとえ、拳銃であっても。万が一、ということがあるから」
 「了解。これからも、徹甲弾を使う?」
 「普通の弾丸に変更よ。今の状況なら、貫通力の強い徹甲弾を使えば、後方の建物に、あたりかねないから」
 口をはさんだ。サファイア・レインが。
 「後方の建物って、警察署じゃないの?」
 「ええ、そうよ」
 素っ気なく答えた。ルビー・クールが。
 今、陣取っている老舗ホテルのグランドパレスは、中央円形広場の北東にある。広場の南西にあるのが、警察署だ。
 そのため、広場をはさんで真正面に、警察署がある。
 警察署の建物も、三階建てだ。
 もっとも、広場の周囲の建物は、すべて三階建てだ。
 グランドパレスホテルから、警察署の建物までの距離は、馬車道と歩道を含めると、百三十メートルだ。
 ルビー・クールたちは、狙撃の練習は、屋内射撃場でしか、したことがない。その屋内射撃場では、最も遠い標的の距離は、百メートルだ。
 そのため、百三十メートルの距離での狙撃は、練習でも、したことがない。
 心配そうな顔で、サファイア・レインが尋ねた。
 「全部、見られてたんじゃないの? 警察に。警察署の建物から」
 「ええ、そうでしょうね」
 「どうすんのよ! 逮捕されたら!」
 泣きそうな顔だ。サファイア・レインは。
 「なんの罪で?」
 平然とルビー・クールが尋ねると、なぜか、パール・スノーが笑った。
 「笑いごとじゃないわよ!」
 叫んだ。サファイア・レインが。悲痛な表情で。
 答えた。ルビー・クールが。
 「正当防衛よ。あたしたちの行為は。まともな警察なら、ギャングに襲われた女たちを、逮捕なんてしないわ。もっとも、この町の警察は、まともじゃなさそうだけどね。まともな警察なら、ヴィクトールたちと銃撃戦になる前に、駆けつける。腰抜けの警察なら、ヴィクトールたちとの銃撃戦のあとに、駆けつける」
 ニヤつきながら、パール・スノーが口を開いた。双眼鏡を、のぞきながら。
 「まだ動きは、なさそうよ。警察署は。ということは、どんだけ腰抜けなの? この町の警察は」
 「単なる腰抜けじゃないわ。ズブズブの関係なのよ。死神団とは。だから、死神団のやることに、手を出さない」
 吐き捨てた。パール・スノーが。
 「腐ってやがる。警察全体が」
 そのときだった。
 サファイア・レインが、叫んだ。狙撃銃のスコープを、のぞきながら。
 「動きが出たわ。警察署の三階の窓よ」

   第五章「警官隊に包囲されて絶体絶命」に続く
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