絶体絶命ルビー・クールの逆襲<炎の反逆者編>

蛇崩 通

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<第四章 第4話>

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  <第四章 第4話>
 ヴォルフガングが、怒鳴り続けた。拡声器越しに。
 「女ども! 死にたくなければ、武器を捨てて降伏しろ! 拳銃を何挺持っていようが、ライフル銃には勝てんぞ!」
 三名の少女たちは、窓脇の壁に、身を隠している。顔を半分ほど、窓から出して。
 ルビー・クールが、小声で指示した。
 三名とも、狙撃銃を手に取った。壁に隠れたまま。
 市販のライフル銃は、すべて、単発式だ。一発撃つごとに、手動で空薬莢からやっきょうを排出し、次弾を装填そうてんする。かかる時間は、充分に訓練していても、三秒ほど。訓練不足なら、五秒から六秒は、かかる。
 よって、敵が発砲した直後に狙えば、自分たちの安全を確保しつつ、狙撃ができる。
 なお、次弾を撃つまでに必要な時間は、自分の狙撃銃ならば、ルビー・クールは三秒、パール・スノーは四秒、サファイア・レインは四秒半だ。
 持参した狙撃銃は、照準器スコープ付きだ。
 スコープを使用した場合、百メートル先の標的への命中率は、屋内射撃場の練習では、パール・スノーは、ほぼ百発百中だ。サファイア・レインは腕力が弱いため、立射りっしゃの場合、銃口がブレて命中率が低下する。だが、三脚を使えば、両腕で銃身を支える必要がなくなるため、百発百中に近い命中率となる。
 そのため、彼女に指示した。窓枠に銃身を置いて、狙撃するように、と。
 ルビー・クールの場合は、スコープを使わなくとも、百メートル先の標的は、ほぼ百発百中だ。もっとも、無風の屋内射撃場の場合だが。
 死神団の最前列までの距離は、六十五メートルほど。最後尾は、八十メートルほど。
 よって、敵は全員、有効射程距離内だ。
 ヴォルフガングが、怒鳴った。拡声器を手に。
 「女ども! 降伏しなければ、おまえらに地獄を見せてやる!」
 そう言ったあと、拡声器を降ろした。部下たちに、命じた。
 ライフル銃を持った男五名が、前に進んだ。ヴォルフガングより前方に、立った。
 銃を構えた。
 「撃ってくるわよ!」
 そう叫びながら、ルビー・クールは、窓から顔を引っ込めた。
 サファイア・レインとパール・スノーも、窓脇の壁に身を隠した。
 その直後、銃声が響いた。
 五発の銃声が。三秒間ほどの間に。
 一発、飛び込んできた。中央の窓に。
 一名だけだ。警戒すべき射撃の腕を持つ者は。
 ヴォルフガングが、拡声器越しに怒鳴った。
 「どうだ! 思い知ったか!」
 命じた。ルビー・クールが。
 「射撃開始!」
 「了解!」
 現れた。窓のはしに。三名の少女たちが。狙撃銃を手に。
 ルビー・クールとパール・スノーは、立ったまま狙撃銃を構えた。
 サファイア・レインは片膝をつき、銃身を窓枠に置いて構えた。
 発砲した。五月雨式さみだれしきに。
 三名の敵を、射殺した。ライフル銃を所持した男たちを。
 すぐさま、窓脇の壁に、身を隠した。三名の少女たちが。
 銃声が響いた。二発だけ。ライフル銃の銃声だ。仲間を射殺されて動転し、次弾を装填するやいなや、発砲したのだ。ホテルの三階の窓に。
 だが、窓には、銃弾は飛び込んでこなかった。
 「二人は、左右のライフル男を狙撃!」
 そう指示した。次弾を装填しながら、ルビー・クールが。
 その直後、窓の端から現れた。
 狙撃銃を構えたルビー・クールが。
 発砲した。
 撃ちいた。
 ヴォルフガングの頭部を。
 倒れた。彼の巨体が。後方に。切り倒された大木のように。
 絶叫し、悲鳴をあげた。口々に。死神団のギャングたちが。
 このような事態を、誰も想定していなかったからだ。
 その直後、発砲した。サファイア・レインとパール・スノーが。
 射殺した。残りのライフル銃男を。
 すぐさま、身を隠した。発砲直後に。三名の少女たちが。窓脇の壁に。
 銃声が響いた。五月雨式に。
 死神団のギャングたちが、発砲を始めたのだ。散弾銃と拳銃で。パニック状態に陥って。
 あっという間に、弾丸を撃ち尽くした。散弾銃も拳銃も。
 ギャングたちが、弾丸の装填を始めた。
 発砲した。三名の少女たちが。
 射殺した。散弾銃を持つ男三名を。
 すぐに、次弾を装填した。
 発砲した。次々に。三名の少女たちが。
 出現した。阿鼻叫喚あびきょうかんの地獄絵図が。
 ギャングたちが、悲鳴をあげた。激痛と恐怖で。
 徹甲弾てっこうだんを、使用したからだ。
 徹甲弾とは、鉛の弾頭の上に固い金属をかぶせ、弾芯に鉄などを用いた弾丸で、貫通力が高い。戦場で、立木などの遮蔽物しゃへいぶつかげにいる敵兵を、殺傷するための軍用の銃弾だ。
 そのため、人間の肉体など、何名分でも、簡単に貫通する。
 ギャングたちは密集しているため、一発の徹甲弾で、十名前後が死傷した。
 次々に、発砲し続けた。少女たちが、徹甲弾を。
 ルビー・クールは、狙撃し続けた。氷のような表情で。
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