絶体絶命ルビー・クールの逆襲<炎の反逆者編>

蛇崩 通

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第四章 ギャングのボス登場で絶体絶命 <第1話>

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  <第四章 第1話>
 ルビー・クールが、大声で呼びかけた。
 「ニコラウス! あなたの手下二名に命じてちょうだい! 地面に落ちた拳銃六挺を、歩道まで運ぶように。ただし、手を使わず、足で蹴るのよ。サッカーボールのように、ね」
 「オレ様に、命令すんじゃねえ!」
 冷ややかに言い放った。ルビー・クールが。
 「あたしの指示に従わないと、ヴィクトールの足を撃つわよ!」
 立ち尽くしながら、叫んだ。ヴィクトールが。
 「なぜ、オレ様の足なんだ!」
 「ニコラウスの足を撃って、出血多量で失神したら、彼の手下に命令を出す者が、いなくなるからよ。ヴィクトール、あなたの部下は全滅したから、あなたは失神しても、かまわないわ」
 「ふざけんな! このクソビッチが!」
 発砲した。ルビー・クールが。右手の二十二口径十連発リボルバーで。
 絶叫した。ヴィクトールが。左足の甲を撃たれて。
 後方に、尻もちをついた。絶叫しながら。
 「痛え~!」
 「ニコラウス! 早く手下に命じないと、今度はヴィクトールのひざを撃つわよ。両膝を撃たれたら、あなたの親友は、一生、歩けない身体になるわよ!」
 「クソッ」
 そう吐き捨ててから、ニコラウスが、自分の取り巻き二名に命じた。ルビー・クールの指示に従え、と。
 パール・スノーが、小声でささやいた。
 「全弾、装弾完了」
 サファイア・レインも、小声でささやいた。
 「あたしは、もう少し」
 そう言った直後、弾丸を一発落とした。ボストンバッグの中に。回転弾倉に、装弾し損なって。
 「落ち着いて。サファイア。時間は充分にあるわ」
 小声で尋ねた。パール・スノーが、ルビー・クールに。
 「それで、今後の展開は、どうするの?」
 「まずは、敵の拳銃六挺を回収するわ。そのあとは、待つのよ。死神団のボスが、手勢を引き連れてくるのを」
 「大軍だったりして」
 「かもね」
 あっさりと、ルビー・クールが答えた。左右の銃口を、ニコラウスたちに向けたままで。
 「まだ、四百名以上いるんでしょ? だけど、三十二口径の弾丸は、百発入りの箱を二箱しか、持ってきていないわよ」
 「三人で六百発あるわ」
 「ギリギリで足りないんじゃない? はずすことだって、あるし」
 「三十八口径の狙撃銃があるわ。そちらも弾丸を二箱、持ってきたでしょ」
 「ええ。あんたに指示されたとおりに、ね」
 すでに狙撃銃は、窓脇の壁に、立て掛けてある。三人とも。
 小声でささやいた。サファイア・レインが。
 「全弾、装填完了」
 「パール、拳銃の回収をお願い。洗濯袋を持って行って」
 「どこにあるんだよ。洗濯袋なんて」
 「ベッドルームのクローゼットの中よ」
 腰をかがめ、頭の位置を低くしたまま、パール・スノーが、ベッドルームに走った。
 六挺の拳銃が、歩道の脇まで運ばれた。歩道は、馬車道よりも、階段一段分ほど、高くなっている。そのため、足で蹴って、拳銃を歩道の上に上げることは困難だ。
 声をかけた。ルビー・クールが。
 「二人とも、ニコラウスのところまで戻ってちょうだい」
 二名の青年は、その指示に従った。彼らは、顔面蒼白で、今にも死にそうな表情だ。
 それも、当然だろう。
 彼らは今まで、殺す側だった。権力をかさに着て。これまで、殺される側にまわったことが、ないのだ。
 パール・スノーが、洗濯袋を手に、ベッドルームから戻ってきた。ホテルのクリーニング・サービス用の洗濯袋だ。白い木綿製だ。重い物を入れすぎれば、破れるかもしれない。
 だが、拳銃六挺くらいならば、だいじょうぶだろう。なぜなら、一挺あたり一キログラム前後だとすると、六挺で六キログラム前後だからだ。
 「用心して。いつでも、拳銃をけるように、ね」
 「了解」
 そう答えると彼女は、小走りでスイートルームから出て行った。
 数十秒後、ホテルの玄関ドアが、ひらいた。
 パール・スノーが、現れた。洗濯袋を手に。
 歩道を進み、拳銃を拾おうと、腰をかがめた。
 そのときだった。
 ニコラウスが、叫んだ。
 「その女を、捕まえろ! 人質に取るんだ!」
 その一声で、襲いかかった。十名の男たちが。パール・スノーに。
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