13 / 138
<第三章 第4話>
しおりを挟む
<第三章 第4話>
床に伏せる際に、帽子が舞い上がった。ツバの幅が広いため、空気抵抗が大きいからだ。
その帽子に、銃弾があたったように見えたのだろう。
ヴィクトールが、ニコラウスに詫びた。
「悪かったな。だが、まだ美女が二名いるんだろ?」
床に落ちた帽子を放置したまま、ルビー・クールは匍匐前進で、中央の窓の左側に、移動した。
立ち上がり、窓の横から顔を半分だけ出して、外を見た。
小声で指示した。サファイア・レインとパール・スノーに。手振りも交えて。
彼女たちは、左右の窓の脇の壁に、背中をつけている。
無言で二人が、うなずいた。
小声で、ささやいた。ルビー・クールが。
「三、二、一、ゼロ」
窓から、身を乗り出した。三名の少女が。
発砲した。同時に。二挺拳銃で。三名の少女が。
ルビー・クールが左手で撃った弾丸は、ヴィクトールの拳銃を弾き飛ばした。
彼の後方にいた下級幹部五名が、倒れた。少女たちの銃撃によって。
そのうち四名は、即死だった。
もう一名は、右肩を撃たれた。サファイア・レインが左手で撃った男だ。彼女は三人の中では、最も腕力が弱い。そのため左手の射撃は、命中精度が落ちる。
だが、その直後、撃ち殺した。負傷した下級幹部を。ルビー・クールが。
次々に、発砲した。三名の少女たちが。
六秒から七秒で、全弾撃ち尽くした。三名合計で三十六発を。
ヴィクトールの部下百名のうち、三分の一以上が死傷した。
彼らは、呆然と立ち尽くしていた。銃弾の雨に、曝されているのに。
起きている事態を、理解できないのだ。
三名の少女たちは、弾切れの拳銃をホルスターに戻すと、新しい拳銃を二挺、抜いた。
かかった時間は、ルビー・クールは二秒、パール・スノーは三秒、サファイア・レインは三秒半だ。
続けざまに発砲した。三名の少女たちが。ルビー・クールは、集団の後方を。パール・スノーは前方右側、サファイア・レインは前方左側を、銃撃した。
ふたたび、全弾撃ち尽くした。六秒から七秒で。
阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
絶叫し、泣き叫んでいた。負傷者も、無傷の者も。激痛と、恐怖で。
三名の少女たちは、みたび、新しい拳銃二挺を、ホルスターから抜いた。
銃撃を再開した。全弾、撃ち尽くすまで。
撃ち尽くした。三十二口径の弾丸を。三名で、総計百八発。
全滅した。ヴィクトール率いるギャングたちが。三十秒ほどで。
最も後方の少年二名が、走って逃げ出した。
パール・スノーが、叫んだ。
「ルビー! 二名逃げたわよ。あんたの担当エリアでしょ!」
「わざと逃がしたのよ。死神団のボスを、おびき出すために、ね」
サファイア・レインとパール・スノーは、壁に背をつけて片膝をついた。弾切れとなった拳銃に、新しい弾丸を装填し始めた。空薬莢は床には捨てず、ボストンバッグの中に排出した。
証拠品を、残さないためだ。
ルビー・クールは、腰の左右のホルスターから、二十二口径十連発リボルバーを抜いて、窓の外に銃口を向けた。
二十二口径は威力が弱いため、脳か心臓に確実にあてないかぎり、即死させることはできない。
時間稼ぎを、しなければならない。サファイア・レインとパール・スノーが、三十二口径の弾丸を装填し終わるまで。
地面に落ちた拳銃を拾った者がいたら、銃撃するつもりだった。
しかし、その必要は、ないようだ。
なぜなら、ヴィクトールの部下のうち、わざと逃がした二名を除いた九十八名は、全員、死亡か重傷だったからだ。
ルビー・クールは、一発も、はずさなかった。全員、頭部を撃ち抜いて射殺した。
パール・スノーは、胴体の中心を狙って銃撃した。半分ほどは狙いをはずさず、即死させた。残りの半分は、数センチメートルほどズレたため即死しなかったが、重傷だ。重傷者は、そのまま放置すれば、出血多量で死亡する。
サファイア・レインは、右手の射撃は、誤差が十センチメートル以内だったため、死亡か重傷だ。
だが、左手の射撃は、誤差が十センチメートルを超えた。そのため、軽傷で済んだ者が、半数ほどいた。
軽傷者に対しては、右手の拳銃で、二発目を撃ち込み、確実に仕留めた。
それに、彼女が仕留め損なった標的の一部は、ルビー・クールが射殺した。
絶叫した。ヴィクトールが。
「なんなんだ、これは!」
冷ややかに笑った。ルビー・クールが。左右の銃口を、ヴィクトールとニコラウスに向けながら。
「当然でしょ。人を殺そうとしたら、殺し合いになるのは。それとも、その覚悟もなく、人に向けて発砲したの?」
怒鳴りまくった。ヴィクトールが。
「てめえ、ただですむと思うなよ! こんなことしやがって!」
鼻で笑った。ルビー・クールが。
ニコラウスと、取り巻きの青年十名は、真っ青な顔で、立ち尽くしている。
言い放った。冷ややかに。ルビー・クールが。
「あたしの逆襲の時間は、始まったばかり。極悪非道の所業を続けてきたあなたたちが、地獄を見るのは、これからよ!」
第四章「ギャングのボス登場で絶体絶命」に続く
床に伏せる際に、帽子が舞い上がった。ツバの幅が広いため、空気抵抗が大きいからだ。
その帽子に、銃弾があたったように見えたのだろう。
ヴィクトールが、ニコラウスに詫びた。
「悪かったな。だが、まだ美女が二名いるんだろ?」
床に落ちた帽子を放置したまま、ルビー・クールは匍匐前進で、中央の窓の左側に、移動した。
立ち上がり、窓の横から顔を半分だけ出して、外を見た。
小声で指示した。サファイア・レインとパール・スノーに。手振りも交えて。
彼女たちは、左右の窓の脇の壁に、背中をつけている。
無言で二人が、うなずいた。
小声で、ささやいた。ルビー・クールが。
「三、二、一、ゼロ」
窓から、身を乗り出した。三名の少女が。
発砲した。同時に。二挺拳銃で。三名の少女が。
ルビー・クールが左手で撃った弾丸は、ヴィクトールの拳銃を弾き飛ばした。
彼の後方にいた下級幹部五名が、倒れた。少女たちの銃撃によって。
そのうち四名は、即死だった。
もう一名は、右肩を撃たれた。サファイア・レインが左手で撃った男だ。彼女は三人の中では、最も腕力が弱い。そのため左手の射撃は、命中精度が落ちる。
だが、その直後、撃ち殺した。負傷した下級幹部を。ルビー・クールが。
次々に、発砲した。三名の少女たちが。
六秒から七秒で、全弾撃ち尽くした。三名合計で三十六発を。
ヴィクトールの部下百名のうち、三分の一以上が死傷した。
彼らは、呆然と立ち尽くしていた。銃弾の雨に、曝されているのに。
起きている事態を、理解できないのだ。
三名の少女たちは、弾切れの拳銃をホルスターに戻すと、新しい拳銃を二挺、抜いた。
かかった時間は、ルビー・クールは二秒、パール・スノーは三秒、サファイア・レインは三秒半だ。
続けざまに発砲した。三名の少女たちが。ルビー・クールは、集団の後方を。パール・スノーは前方右側、サファイア・レインは前方左側を、銃撃した。
ふたたび、全弾撃ち尽くした。六秒から七秒で。
阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
絶叫し、泣き叫んでいた。負傷者も、無傷の者も。激痛と、恐怖で。
三名の少女たちは、みたび、新しい拳銃二挺を、ホルスターから抜いた。
銃撃を再開した。全弾、撃ち尽くすまで。
撃ち尽くした。三十二口径の弾丸を。三名で、総計百八発。
全滅した。ヴィクトール率いるギャングたちが。三十秒ほどで。
最も後方の少年二名が、走って逃げ出した。
パール・スノーが、叫んだ。
「ルビー! 二名逃げたわよ。あんたの担当エリアでしょ!」
「わざと逃がしたのよ。死神団のボスを、おびき出すために、ね」
サファイア・レインとパール・スノーは、壁に背をつけて片膝をついた。弾切れとなった拳銃に、新しい弾丸を装填し始めた。空薬莢は床には捨てず、ボストンバッグの中に排出した。
証拠品を、残さないためだ。
ルビー・クールは、腰の左右のホルスターから、二十二口径十連発リボルバーを抜いて、窓の外に銃口を向けた。
二十二口径は威力が弱いため、脳か心臓に確実にあてないかぎり、即死させることはできない。
時間稼ぎを、しなければならない。サファイア・レインとパール・スノーが、三十二口径の弾丸を装填し終わるまで。
地面に落ちた拳銃を拾った者がいたら、銃撃するつもりだった。
しかし、その必要は、ないようだ。
なぜなら、ヴィクトールの部下のうち、わざと逃がした二名を除いた九十八名は、全員、死亡か重傷だったからだ。
ルビー・クールは、一発も、はずさなかった。全員、頭部を撃ち抜いて射殺した。
パール・スノーは、胴体の中心を狙って銃撃した。半分ほどは狙いをはずさず、即死させた。残りの半分は、数センチメートルほどズレたため即死しなかったが、重傷だ。重傷者は、そのまま放置すれば、出血多量で死亡する。
サファイア・レインは、右手の射撃は、誤差が十センチメートル以内だったため、死亡か重傷だ。
だが、左手の射撃は、誤差が十センチメートルを超えた。そのため、軽傷で済んだ者が、半数ほどいた。
軽傷者に対しては、右手の拳銃で、二発目を撃ち込み、確実に仕留めた。
それに、彼女が仕留め損なった標的の一部は、ルビー・クールが射殺した。
絶叫した。ヴィクトールが。
「なんなんだ、これは!」
冷ややかに笑った。ルビー・クールが。左右の銃口を、ヴィクトールとニコラウスに向けながら。
「当然でしょ。人を殺そうとしたら、殺し合いになるのは。それとも、その覚悟もなく、人に向けて発砲したの?」
怒鳴りまくった。ヴィクトールが。
「てめえ、ただですむと思うなよ! こんなことしやがって!」
鼻で笑った。ルビー・クールが。
ニコラウスと、取り巻きの青年十名は、真っ青な顔で、立ち尽くしている。
言い放った。冷ややかに。ルビー・クールが。
「あたしの逆襲の時間は、始まったばかり。極悪非道の所業を続けてきたあなたたちが、地獄を見るのは、これからよ!」
第四章「ギャングのボス登場で絶体絶命」に続く
1
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
【R15】アリア・ルージュの妄信
皐月うしこ
ミステリー
その日、白濁の中で少女は死んだ。
異質な匂いに包まれて、全身を粘着質な白い液体に覆われて、乱れた着衣が物語る悲惨な光景を何と表現すればいいのだろう。世界は日常に溢れている。何気ない会話、変わらない秒針、規則正しく進む人波。それでもここに、雲が形を変えるように、ガラスが粉々に砕けるように、一輪の花が小さな種を産んだ。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる