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第三章 ギャング百名登場で絶体絶命 <第1話>
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<第三章 第1話>
リリアが、呆然とした表情で、見つめていた。ルビー・クールたちが狙撃銃を組み立てるのを。
尋ねてきた。リリアが。
「狩りをするの? イノシシ狩り?」
答えた。狙撃銃を組み立て終わったルビー・クールが。
「イノシシ狩りじゃないわ。ギャング狩りよ」
パール・スノーが、笑った。声をあげて。
「いいわね、それ。ギャング狩り」
三人が狙撃銃を組み立て終わった頃に、食料品店から、配達が届いた。百人分の食料が。
狙撃銃をベッドの上に置き、リビングルームで、食料品を受け取った。
それからしばらくして、ルームサービスも届いた。
食事を取る前に、窓を全部、開け放った。窓は、外側に開く構造だ。窓を開けておけば、銃撃で窓ガラスが割れても、室内には、ガラス片は入ってこない。
ルビー・クールら三名のうち、常に一人が、窓から広場を監視した。交代で、ルームサービスのサンドウィッチを頬張った。
十二時過ぎに、ニコラウスたちが意識を取り戻した。まだ気を失っている仲間を、起こした。記憶が飛んでいる者が多数いたようで、お互いに情報交換をしたようだ。
その後、十二時半頃に、ニコラウスと取り巻きたちは、中央円形広場から西へ延びる街道に消えた。
その街道を西へ徒歩十五分ほど進むと、スラム街が広がっている。そのスラム街の中を、西へさらに十五分ほど歩くと、川港がある。
フロスハーフェン市は、何百年も前から、その川港を中心に発展した都市だ。鉄道の駅ができたのは、十数年前だ。
そのスラム街に、ヴィクトールが経営する娼館と、死神団のアジトがある。
ニコラウスは、親友のヴィクトールに、助太刀を求めるはずだ。
ヴィクトールは、何名のチンピラを連れて来るだろうか。
ニコラウスの取り巻き十名が倒されたことは、伝えられるはずだ。
となると、その三倍の三十名、いや、五倍の五十名の部下を引き連れて、やって来るはずだ。
ひょっとしたら、百名を引き連れて来るかもしれない。
午後一時を過ぎた。
だが、ニコラウスたちは、広場に戻ってこない。
ルビー・クールが、指示した。
「サファイアは、窓から広場を監視して。パールは、あたしにつきあって」
「了解」
サファイア・レインが答えた。オペラグラスを取り出しながら。
ルビー・クールが、声をかけた。
「オペラグラスで、監視できる? あたしの小型双眼鏡を貸すわよ」
「それじゃあ悪いけど、貸してちょうだい。まさか、こんな事態になるとは思わなかったから。双眼鏡なんて、持って来なかったのよ」
ニヤつきながら、口をはさんだ。パール・スノーが。
「あたしは、軍用双眼鏡を持ってきたわ。狙撃が必要になるかも、と思ってね」
「さすがね、パール」
大声を出した。パール・スノーが。驚いた表情で。
「あたしをほめた! ルビーが! これって、凶事の予兆かも!」
「そんなことないわよ。あたしは、あなたを高く評価しているわ」
「美しさを?」
「戦闘能力よ」
「美しさって、言えよ!」
「ツバを吐くのを、やめたらね」
「ツバを吐くのは、クズ野郎だけだよ」
「たとえ相手がクズ野郎でも、そんな行為をする女は、淑女とは言えないわ」
「あんたが、淑女を語るのかよ」
「あたしは、きちんと演技できるわよ。淑女の演技を」
「演技かよ!」
「演技も、淑女のたしなみよ」
パール・スノーを連れて、一階に降りた。
フロントの受付係の青年が、ルビー・クールたちを見て、仰天した表情を見せた。
あたりまえだ。六つのホルスター付きガンベルトを、腰に巻いているのだ。ジャケットの下で見えないが、左右の腋の下にも、ホルスターを身につけている。
「お客様、その格好は?」
ニヤリと笑いながら、パール・スノーがホルスターから拳銃を抜いた。
見せつけた。銃身の短い黒光りする三十二口径リボルバーを。
「これ、なんだと思う?」
「拳銃ですか?」
「正解よ」
「なぜ、拳銃なんて、お持ちなのですか?」
ルビーが、答えた。
「地方都市は、帝都より危険だと聞いたので、護身用に持ってきたのよ」
受付係が、すぐさま反論した。
「この町は安全ですよ。帝都では、殺人事件がたくさん起きると聞きましたが」
「人口が多いから、事件も多いだけよ」
「しかし、昨年のクリスマス前には、大規模な暴動が起きて、たくさんの人が殺されたとか」
「ええ。帝都大乱のことね。たしかに、たくさん殺されたわ」
うなづきながら、言葉を続けた。ルビー・クールが。
「だけど、この町も物騒よ。だってさきほど、広場で変な男に絡まれたわ。その男はギャングの友人がいるそうだから、ギャングたちを引き連れて、このホテルに来るわ。だから、玄関のドアを施錠して。それに、裏口のドアも。一階の窓も全部、鎧窓を閉めて、鍵をかけて」
「絡んできた男って、ひょっとして……」
「ニコラウス・ミューラーっていう若い男よ」
真っ青になった。受付の青年が。
リリアが、呆然とした表情で、見つめていた。ルビー・クールたちが狙撃銃を組み立てるのを。
尋ねてきた。リリアが。
「狩りをするの? イノシシ狩り?」
答えた。狙撃銃を組み立て終わったルビー・クールが。
「イノシシ狩りじゃないわ。ギャング狩りよ」
パール・スノーが、笑った。声をあげて。
「いいわね、それ。ギャング狩り」
三人が狙撃銃を組み立て終わった頃に、食料品店から、配達が届いた。百人分の食料が。
狙撃銃をベッドの上に置き、リビングルームで、食料品を受け取った。
それからしばらくして、ルームサービスも届いた。
食事を取る前に、窓を全部、開け放った。窓は、外側に開く構造だ。窓を開けておけば、銃撃で窓ガラスが割れても、室内には、ガラス片は入ってこない。
ルビー・クールら三名のうち、常に一人が、窓から広場を監視した。交代で、ルームサービスのサンドウィッチを頬張った。
十二時過ぎに、ニコラウスたちが意識を取り戻した。まだ気を失っている仲間を、起こした。記憶が飛んでいる者が多数いたようで、お互いに情報交換をしたようだ。
その後、十二時半頃に、ニコラウスと取り巻きたちは、中央円形広場から西へ延びる街道に消えた。
その街道を西へ徒歩十五分ほど進むと、スラム街が広がっている。そのスラム街の中を、西へさらに十五分ほど歩くと、川港がある。
フロスハーフェン市は、何百年も前から、その川港を中心に発展した都市だ。鉄道の駅ができたのは、十数年前だ。
そのスラム街に、ヴィクトールが経営する娼館と、死神団のアジトがある。
ニコラウスは、親友のヴィクトールに、助太刀を求めるはずだ。
ヴィクトールは、何名のチンピラを連れて来るだろうか。
ニコラウスの取り巻き十名が倒されたことは、伝えられるはずだ。
となると、その三倍の三十名、いや、五倍の五十名の部下を引き連れて、やって来るはずだ。
ひょっとしたら、百名を引き連れて来るかもしれない。
午後一時を過ぎた。
だが、ニコラウスたちは、広場に戻ってこない。
ルビー・クールが、指示した。
「サファイアは、窓から広場を監視して。パールは、あたしにつきあって」
「了解」
サファイア・レインが答えた。オペラグラスを取り出しながら。
ルビー・クールが、声をかけた。
「オペラグラスで、監視できる? あたしの小型双眼鏡を貸すわよ」
「それじゃあ悪いけど、貸してちょうだい。まさか、こんな事態になるとは思わなかったから。双眼鏡なんて、持って来なかったのよ」
ニヤつきながら、口をはさんだ。パール・スノーが。
「あたしは、軍用双眼鏡を持ってきたわ。狙撃が必要になるかも、と思ってね」
「さすがね、パール」
大声を出した。パール・スノーが。驚いた表情で。
「あたしをほめた! ルビーが! これって、凶事の予兆かも!」
「そんなことないわよ。あたしは、あなたを高く評価しているわ」
「美しさを?」
「戦闘能力よ」
「美しさって、言えよ!」
「ツバを吐くのを、やめたらね」
「ツバを吐くのは、クズ野郎だけだよ」
「たとえ相手がクズ野郎でも、そんな行為をする女は、淑女とは言えないわ」
「あんたが、淑女を語るのかよ」
「あたしは、きちんと演技できるわよ。淑女の演技を」
「演技かよ!」
「演技も、淑女のたしなみよ」
パール・スノーを連れて、一階に降りた。
フロントの受付係の青年が、ルビー・クールたちを見て、仰天した表情を見せた。
あたりまえだ。六つのホルスター付きガンベルトを、腰に巻いているのだ。ジャケットの下で見えないが、左右の腋の下にも、ホルスターを身につけている。
「お客様、その格好は?」
ニヤリと笑いながら、パール・スノーがホルスターから拳銃を抜いた。
見せつけた。銃身の短い黒光りする三十二口径リボルバーを。
「これ、なんだと思う?」
「拳銃ですか?」
「正解よ」
「なぜ、拳銃なんて、お持ちなのですか?」
ルビーが、答えた。
「地方都市は、帝都より危険だと聞いたので、護身用に持ってきたのよ」
受付係が、すぐさま反論した。
「この町は安全ですよ。帝都では、殺人事件がたくさん起きると聞きましたが」
「人口が多いから、事件も多いだけよ」
「しかし、昨年のクリスマス前には、大規模な暴動が起きて、たくさんの人が殺されたとか」
「ええ。帝都大乱のことね。たしかに、たくさん殺されたわ」
うなづきながら、言葉を続けた。ルビー・クールが。
「だけど、この町も物騒よ。だってさきほど、広場で変な男に絡まれたわ。その男はギャングの友人がいるそうだから、ギャングたちを引き連れて、このホテルに来るわ。だから、玄関のドアを施錠して。それに、裏口のドアも。一階の窓も全部、鎧窓を閉めて、鍵をかけて」
「絡んできた男って、ひょっとして……」
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真っ青になった。受付の青年が。
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