絶体絶命ルビー・クールの逆襲<炎の反逆者編>

蛇崩 通

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<第二章 第2話>

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  <第二章 第2話>
 しかし、国家反逆罪とは。ずいぶんと、大きく出たものだ。
 平静さをよそおいながら、ルビー・クールがたずねた。
 「あら、なぜ国家反逆罪が、適用されるのかしら?」
 「おまえは、無知なのか? いいだろう。無知なおまえに、教えてやろう。警官の制服は、国家の象徴の一つだ! ゆえに、制服警官への反逆は、国家への反逆になるのだ!」
 新聞で、読んだことがある。制服警官への暴力行為は、国家体制への反逆行為である。ゆえに、たとえ未成年者であっても、投石などの制服警官への暴力行為は、厳罰にするべきだ、という主張を。
 厳罰と言っても、執行猶予をつけず、実刑にすべし、という主張だ。国家反逆罪の適用では、ない。
 そもそも国家反逆罪は、国家体制の打倒や、政権転覆を目指すクーデター、それに、外国の諜報機関への協力などが、対象だ。制服警官に暴行した程度では、適用されない。
 だが、この町の警官たちは、そう言って市民を脅し、カネをむしり取っているのだろう。
 激昂げきこうしたパール・スノーが、怒鳴り散らした。
 「ふざけるな! 悪徳警官が! 市民のピンチに逃げ出しやがったヤツが! 被害者の少女を助けたあたしたちに、カネを要求しやがって! しかも、千五百キャピタも!」
 襲いかかった。パール・スノーが。制服警官に。鋼鉄製の日傘を振り上げて。
 振り下ろした。鋼鉄製の日傘を。
 一撃で、失神した。青年警官が。
 ガクリと、両膝を石畳についた。白目をむいて。青年警官が。
 さらに振り上げた。パール・スノーが。鋼鉄製日傘を。
 振り下ろした。青年警官の脳天に。
 だが、止まった。その日傘が。途中で。
 ルビー・クールが、自分の日傘で、受け止めたのだ。青年警官の脳天に、パール・スノーの日傘が、打ち下ろされる直前に。
 ジロリと、にらんだ。パール・スノーが、ルビー・クールを。
 「なぜ、めるんだよ? あんた、この悪徳警官の味方を、するのか?」
 答えた。ルビー・クールが。無表情のまま。
 「違うわ、パール。あたしは、あなたの味方よ」
 「だったら、ジャマすんじゃねえ!」
 「すでに、気絶してるわ。この男は」
 ルビー・クールが、そう言った直後、青年警官は、後方にバタリと倒れた。
 サファイア・レインが叫んだ。パニックにおちいって。
 「どうすんのよ! どうすんのよ! 制服警官を、二人とも殴り倒して! ああ、もうおしまいよ! 国家反逆罪で! 家族も、もうおしまいよ!」
 「だいじょうぶよ」
 ルビー・クールが、なだめるように声をかけた。
 「国家反逆罪の適用なんて、ありえないわ。悪徳警官の単なる脅し文句よ。市民からカネを巻き上げるために、そうやってだましていただけよ」
 「騙されていたのか! オレたちは!」
 群衆の中から、誰かが、そう叫んだ。
 ルビー・クールが、大声で答えた。
 「ええ、そうよ! 国家反逆罪なんて、めったなことでは、適用されないわ!」
 群衆が、口々に叫んだ。悪徳警官たちから、散々、そう言って脅され、カネをむしり取られていた、と。
 パニック状態がおさまったサファイア・レインが、尋ねた。ルビー・クールに。
 「だけど、これって、まずい状況よね。制服警官に暴行したのだから」
 「脳天に一撃を喰らわせたから、運がよければ、殴られる前の数十秒間の記憶が、消えたかもしれないわ」
 そう答えたルビー・クールに、パール・スノーが口をはさんだ。
 「思いっきり、ぶったたいたから、一日分の記憶が飛んでいるかもね」
 「それなら、なお好都合ね」
 うなづきながら、そう答えた。ルビー・クールが。
 そのときだった。
 ニコラウスの取り巻き数名が、意識を取り戻した。立ち上がり始めた。
 すぐさま指示した。ルビー・クールが。
 「パール! あの連中の脳天に、もう一発、喰らわせて!」
 「了解!」
 駆け出した。パール・スノーが。
 十秒足らずで、失神させた。もう一度。意識を取り戻した青年数名を。
 サファイア・レインが、ルビー・クールに、呼びかけた。
 「今のうちよ。逃げましょう」
 「違うわ、サファイア。籠城ろうじょうして、迎え撃つのよ」
 「どういうこと?」
 冷ややかなみを、浮かべた。口もとだけで。ルビー・クールが。
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