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<第一章 第2話>

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  <第一章 第2話>
 パール・スノーが、吐き捨てた。
 「なんなの? 間抜けづらのこの男は」
 金髪長身青年が、取り巻きの青年たちに命じた。
 「あの極上女どもを、捕まえろ」
 茶髪の青年が、制止した。
 「まずいですよ、ニコラウス様。あの女たち、どう見ても、よその町から来た金持ちです。この町で行方不明になったら、ニコラウス様のお父上に、ご迷惑が、かかりますよ」
 「問題ない。さっさと捕まえろ!」
 三名の取り巻きが、近づいてきた。ルビー・クールに。ニヤけながら。
 取り巻きの青年たちは、労働者階級よりも、やや背が高かった。全員、身長は百六十センチから百七十センチメートルくらいだ。
 普通の男性労働者は、百五十五センチから百六十五センチメートルくらいだ。
 一方、貴族や平民富裕層の男性の身長は、百七十センチから百八十センチメートルくらいだ。
 両者の身長の差は、子ども時代の肉類摂取量の差だ。労働者階級の家庭では、経済的な理由で、肉類をあまり摂取できないため、背が伸びない。
 女性の身長も、貴族と平民富裕層が百五十五センチから百六十五センチメートルくらいなのに対し、労働者階級は百四十センチから百五十センチメートルくらいだ。
 ルビー・クールとパール・スノーの身長は、百六十センチくらいで、サファイア・レインは百六十五センチメートルくらいだ。
 サファイア・レインが、小声でささやいた。
 「ルビー、どうする?」
 その瞬間、右足で踏み込んだ。ルビー・クールが。
 日傘の先端が、正面にいた青年のみぞおちに、突き刺さった。
 次の瞬間には、右足を左に踏み出し、日傘を突き刺した。
 その直後、今度は右側に右足を踏み出し、日傘を突いた。
 計三名の青年が、みぞおちを押さえ、うずくまった。
 すばやく、叩き込んだ。彼らの脳天に。日傘の一撃を。
 三名とも、一撃で失神した。
 あたりまえだ。
 その日傘は、傘の骨は鋼鉄製で、重量は五キログラムもある。護身用の特注品だ。
 パール・スノーたちが持っている日傘も、鋼鉄製の特注品だ。
 ただし、サファイア・レインの日傘だけ、重量が三キログラム半だ。彼女は、自分の腕力を考慮して、軽めにしたのだ。
 ニコラウスが、驚愕きょうがくしていた。
 いや、彼だけではない。彼の取り巻きたちも、周囲の傍観者たちもだ。
 わずか、五秒ほどの間の出来事だったからだ。
 なにが起こったのか、彼らは理解できないようだ。すぐには。
 小声で、ささやいてきた。サファイア・レインが。
 「まずいわよ、ルビー。地元の人と衝突を起こすなんて」
 「見て見ぬふりは、できないわ。それに、そんな事を言っても、もう遅いわ」
 ニヤつきながら、パール・スノーが口を開いた。
 「取り巻き連中は、あと七名よ」
  気を、取り直した。ニコラウスが。
 「野郎ども、あの女たちを捕まえろ! 顔以外は、殴ってもかまわん」
 取り巻きの青年たちが、接近してきた。今度は、警戒しながら。
 ルビー・クールが、小声で指示を出した。
 「右側二名はパール、左側二名はサファイアに任せるわ」
 「了解」
 そう答えながら、サファイア・レインはルビー・クールの左側に、パール・スノーは右側に、並び立った。
 無表情で、ルビー・クールは待った。日傘の射程距離内に、青年たちが入るのを。
 茶髪青年が、口を開いた。ルビー・クールに対し。
 「おとなしくしろ。さもないと……」
 その瞬間、踏み込んだ。ルビー・クールが。
 みぞおちを、突いた。日傘の先端で。
 その直後、サファイア・レインとパール・スノーも、踏み込んだ。日傘を突き出しながら。
 今回も、五秒ほどだった。
 ルビー・クールは正面の三名を失神させた。みぞおちを突いたあと、脳天に日傘を振り下ろして。
 サファイア・レインとパール・スノーも、同様の方法で失神させた。二名ずつを、五秒ほどで。
 愕然がくぜんとした表情をしていた。ニコラウスが。
 数秒間、石像のように硬直したあと、叫んだ。
 「なんなんだ! おまえたちは!」
 ルビー・クールが、口を開いた。冷ややかに、見つめながら。
 「さあ、その少女を放しなさい」
 ニコラウスが、少女の首に、左腕を回した。右手で、ふところから短剣を取り出した。
 切っ先を、少女の首に突きつけた。
 極悪そうなみを、浮かべた。ニコラウスが。
 「この女を救いたければ、武器を捨てて降伏しろ! このメスブタどもめ!」
 ルビー・クールは、心の中で、頭を抱えた。
 刃物を出すなんて。
 ろくでもない悪党だ。
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