絶体絶命ルビー・クールの逆襲<炎の反逆者編>

蛇崩 通

文字の大きさ
上 下
1 / 138

プロローグ 警官隊に包囲されて絶体絶命、からの逆襲

しおりを挟む
  プロローグ 警官隊に包囲されて絶体絶命、からの逆襲
 五月の最初の土曜日。午後三時頃。
 三階建てのホテルは、警官隊に包囲されていた。
 大男の警部が、拡声器を手に、怒鳴った。
 「武器を捨てて、投降しなさい! 人質を、今すぐ解放しなさい!」
 人質とは、ホテルの従業員のことだろう。
 赤毛の美少女ルビー・クールが、怒鳴り返した。三階の窓から。
 「おことわりよ! なぜなら、逮捕される理由なんて、ないからよ!」
 警部も、怒鳴り返した。
 「なに言ってんだ! これだけのことを、しでかして!」
 「なにをしたって言うの? あたしが」
 「殺人だ!」
 「誰を、殺したって言うの?」
 血相けっそうを変えて、警部が怒鳴りつけた。
 「死体だらけだろ! あたり一面!」
 すっとぼけた。ルビー・クールが。
 「あたしが殺したっていう証拠が、どこにあるのかしら?」
 怒鳴り散らした。警部が。
 「ふざけるな! シラを切るつもりか! この状況で!」
 そのときだった。
 立ち上がった。背の高い金髪の青年が。
 「オレが、証人だ!」
 その青年は、負傷していた。左足の甲から、血を流している。
 彼が、言葉を続けた。
 「あの赤毛の女が、殺しまくったんだ! 三階の窓から、拳銃を乱射して! オレの友人たちも、全員、殺された!」
 警部が怒鳴った。
 「これで決まりだ! 証人もいる。おまえを、殺人罪で逮捕する!」
 言い放った。平然と。間髪を入れずに。ルビー・クールが。
 「拒否するわ!」
 怒鳴った。警部が。顔を真っ赤にして。
 「おまえに拒否する権利など、あるか! おまえに残された権利は、裁判を受ける権利だけだ!」
 「違うわ! あたしには、戦う権利がある! 武器を持って戦う権利が、ね」
 「そんな権利あるか! どの法律の、どの条文に書いてある!」
 「抵抗権よ! 抵抗権は、法律が制定される前からある権利、自然権しぜんけんよ!」
 絶句した。警部が。数秒間だけだったが。
 気を、取り直した。警部が。
 怒鳴った。拡声器を手に。
 「この建物は、すでに包囲した! 銃で武装した警官隊によって! 無駄な抵抗をやめて、投降しろ! さもなくば、射殺するぞ!」
 言い返した。ルビー・クールが。
 「あたしも、あなたたちを射殺できるわよ!」
 動揺した。その言葉に。警部が。
 それに、警官たちも。
 彼らは、自分たちが銃で撃たれる可能性を、想定していなかったのだ。真剣には。
 実に、平和ボケした警官たちだ。
 警部が気を取り直し、大声で怒鳴りつけた。
 「我々は警官だぞ! 警官の制服は、国家体制の象徴だ! ゆえに、制服警官への攻撃は、国家体制への反逆を意味する! 国家反逆罪は、死刑だぞ! おまえだけでなく、おまえの家族も、終わりだぞ!」
 はなで笑った。ルビー・クールが。
 言葉を続けた。警部が。
 「おまえは、包囲されている。銃で武装した警官隊に。おまえはもう、絶体絶命だ! おとなしく、武器を捨てて投降しろ! さもなくば、国家への反逆者として射殺する! 一斉射撃で、はちの巣だぞ!」
 思わず、わらった。大声で。カラカラと。ルビー・クールが。
 うろたえた。警部が。一瞬だけ、だったが。
 怒鳴りつけた。ルビー・クールを。
 「なにが、おかしい!」
 答えた。ルビー・クールが。不敵なみを、浮かべながら。
 「反逆者ですって? いいわね、それ。それじゃあ今から、反逆者になるわ。あたしは」
 怒鳴りまくった。警部が。大きく動揺しながら。
 「バカか、おまえは! 理解しているのか? ことの重大性を! おまえも、おまえの家族も、終わりだぞ! もう絶体絶命だ! 観念して、おとなしく投降せよ!」
 冷ややかに、言い放った。ルビー・クールが。
 「絶体絶命は、あなたたちよ。なぜなら、すでにもう、あたしの逆襲の時間だから」
 その直後、大声で叫んだ。ルビー・クールが。窓から、上半身を乗り出して。
 「さあ! 反逆の開始よ!」
 とどろいた。銃声が。一斉いっせいに。

   第一章「見知らぬ土地で絶体絶命」に続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

【R15】アリア・ルージュの妄信

皐月うしこ
ミステリー
その日、白濁の中で少女は死んだ。 異質な匂いに包まれて、全身を粘着質な白い液体に覆われて、乱れた着衣が物語る悲惨な光景を何と表現すればいいのだろう。世界は日常に溢れている。何気ない会話、変わらない秒針、規則正しく進む人波。それでもここに、雲が形を変えるように、ガラスが粉々に砕けるように、一輪の花が小さな種を産んだ。

強制憑依アプリを使ってみた。

本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。 校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈ これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。 不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。 その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。 話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。 頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。 まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...