異世界極悪令嬢と同じクラスになってしまった!

蛇崩 通

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<第五章 第5話:ヒロインの決断>

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  <第五章 第5話:ヒロインの決断>
 「なぜなら」
 ニーナが、言葉を続けた。
 「王子が目をつけた女を横取りしたら、王子の不興ふきょうを買います。それは、クマート様にとっても、オスターラント家にとっても、良いことではありません」
 それに対し、シーナが反論した。
 「だけどさ、クマートは、この女にれているから、この屋敷に連れて来たんだろ」
 アメリアが、口をはさんだ。
 「クマート様が愛しているのは、このあたしです!」
 ベアーナも、口をはさんだ。
 「あたしも、クマート様に愛されてる! たぶん」
 「たぶんかよ」
 そうツッコミを入れながら、シーナが、ガハハと笑った。
 ウォルナも、口をはさんだ。
 「あたしも、愛されてる。たぶん。だってクマート様、あたしにも優しいから」
 「おまえら、黙ってろよ。話がそれるだろ!」
 エルナが、たしなめた。ベアーナたちを。
 シーナが身を乗り出し、クマートに尋ねた。真剣な表情で。
 「それで、どうすんだよ。惚れた女を守りたいのはわかるけど、王子が目をつけた女を、どうやって守るんだ?」
 「来週の月曜日に、学園長に掛け合って、マリアンヌさんを一組から、私のいる六組に、クラス替えしてもらおうと思います。そうすれば、マリアンヌさんを守れます」
 「クラス替えは、無理」
 即答した。シーナが。
 「なぜですか?」
 「学年途中のクラス替えなんて無理。あたしも教師生活長いからさあ、時々いたんだよね。そういうこと言ってくるヤツ。あいつがイヤだ。こいつとは、あわない。そんなこと言って、クラスの変更を求めるヤツ」
 「なぜ無理なんですか?」
 「各クラスとも、バランスが良くなるように、生徒の割り振りをしているから。学年の途中では、無理」
 ニーナが、口をはさんだ。
 「それで、王子の不興を買うことに対する対策は、どうされるおつもりですか?」
 「その点は、心配ないでしょう。すぐに、ほかの女性に目が移るでしょう」
 「それは、そうだろうな。王子ならば、女なんて、見取みどりだろうしな」
 その点については、シーナはクマートに同意した。
 「そうでしょうか。世の中には、根に持つタイプの人もいますわ」
 ニーナは、懐疑的だ。
 だが、王子の謀略は、魔法の王冠のテレパシー能力で、思考を読んで知っている。
 アニメ版では、四名の不良貴族に襲われそうになったマリアンヌを、偶然通りがかった王子が救う。
 今回の一件で明らかになったのは、王子が通りがかったのは、偶然ではなかったということだ。全部、王子が仕組んだことだった。
 アニメ版では、その後、王子とマリアンヌはかれあい、きを繰り返すようになる。
 しかし、ある日、グレースにバレてしまう。二人の逢い引きが。
 激怒したグレースは、マリアンヌの暗殺を試みる。
 王子の思考を読んで、わかった。逢い引きがバレたのは、わざとだった。王子が、わざとバレるようにした。
 王子の考えでは、激怒したグレースは、婚約破棄を通告してくるはずだ。
 なぜならグレースは、平民を見下し、虫けらのように毛嫌いしているからだ。そのため、平民女とキスした男のことも、嫌いになるはずだ。
 王子はそう考え、マリアンヌを利用した婚約破棄作戦を思いついたのだ。
 「王子以外にも、この女を狙っている不良貴族たちがいるんだろ。そいつらからは、どう守る?」
 シーナのその問いに、クマートが即答した。
 「平民寮に戻るのは危険ですから、この屋敷に住んでもらおうと思っています。そうすれば、毎日、私と一緒に登下校するので、安全です」
 突然、シーナが大きな声を出した。
 「おまえ、どんだけ惚れんてんだよ!」
 ニーナも、大きな声を出した。
 「あたしは反対です。愛人にすることも、この屋敷に住まわせることも。素性の知れない女を、同じ屋敷に住まわせるなんて、危険ですわ」
 シーナが、声を荒げた。
 「クマートが、こんだけ惚れてるんだ! クマートの好きにさせろ。あたしは賛成だ。この女を愛人にすることに」
 そのときだった。マリアンヌが立ち上がった。
 「勝手に決めないでください! あたしを愛人にするとか、しないとか。あたしの人生は、あたしが決めます!」
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