33 / 41
<第五章 第2話:アメリア、溺愛を語る>
しおりを挟む
<第五章 第2話:アメリア、溺愛を語る>
問いただした。マリアンヌが。
「愛があれば、失った足が生えるなんて話、聞いたことないわ」
即座に答えた。アメリアが。
「黒魔術の秘薬よ。クマート様が、作ってくださったの。あたしのために。何日も、危険な魔獣の森で、薬草を探し回って。大型魔獣と戦いながら」
何日も、と言うのは、間違いではない。
だが、たった二日間だ。
薬草は、探し回った、というほどでもない。
地元の猟師たちが、薬草の群生地を、知っていた。だいたいの位置なので、多少は探すはめになったが。
黒魔術の秘薬は、実は黒魔術ではない。
魔法の首飾りの能力を、試したかった。
それで、「黒魔術の秘薬」と称するものを、作ったのだ。
魔法の首飾りは、一つ目のダンジョンで入手した。
その能力は、ほぼ無限の再生能力だ。
身につけた者は、傷を負っても、すぐに傷が治る。切り傷くらいならば。
剣で斬られ、槍で刺されても、戦闘中に、傷が塞がる。数秒で。
魔法の首飾りを身につけた直後、それを理解した。
ほかの究極魔法具と同様に、魔法の首飾りは、身につけると数秒で、体内に吸収された。
とはいえ、魔法の首飾りは、万能ではない。肉体の再生には、エネルギーが必要だ。
切り傷の再生程度ならば、皮下脂肪を燃焼させて生み出したエネルギーで、充分だ。
だが、腕や足を切り落とされた場合、失った腕や足を再生するには、多くのエネルギーを必要とする。蓄えた皮下脂肪だけでは、足りない。
毎日、大量のカロリーを摂取して、ようやく、手足を再生できる。
魔法の首飾りを身につけたときに、思った。
いや、正確には、その前から、アニメ版の知識に基づき、考えていた。
魔法の首飾りを身につけた自分の血液には、再生能力があるのではないか、と。
自分の血液を飲ませれば、負傷者のケガが、治るのではないか、と。
そこで、試してみることにした。
アメリアを実験台にして。
魔法の首飾りの存在を隠すために、数種類の薬草を赤葡萄酒に漬け込み、それに、自分の血液を混ぜた。飲みやすくするために、蜂蜜をたっぷり混ぜて。
それを、肉体を再生させる「黒魔術の秘薬」として、アメリアに飲ませた。
それに、エネルギーをたっぷり取ってもらうために、毎日、一キログラムの肉を食べてもらった。
魔獣の肉だ。薬草を採取する際に、狩った魔獣だ。
朝食は二百グラム、昼食は三百グラム。夕食には五百グラムだ。
飽きが来ないように、毎日、料理方法を変えた。
とはいえ、料理のレパートリーは、少ない。
ステーキ以外には、唐揚げ、とんかつ、挽肉にしてハンバーグ、程度だ。
「黒魔術の秘薬」を飲ませると、失われた両足が、伸び始めた。毎日。少しずつ。
アメリアの両足は、太ももの真ん中あたりで、食いちぎられていた。
だが、一日あたり三十数ミリメートル程度ずつ、伸び始めた。重量にすると、一キログラム弱程度だ。
三週間ほどで、アメリアの両足は、完全に再生した。
その後、自由に歩けるようになるまで、さらに三週間ほど、リハビリが必要だったが。
アメリアは、語り続けた。
クマートが、アメリアのために、いかに献身的に尽くしたかを。
その愛のおかげで、自分の両足が再生し、また歩けるように、それどころか、走れるようにも、なったことを。
彼女の話を聞いて、クマートは内心驚いていた。
アメリアは、そのように解釈していたのか、と。
クマート自身としては、魔法の首飾りの能力を、確かめたかった。そのため、詳細なデータを取ろうとした。
それが、アメリアにとっては、溺愛による献身的な看病と治療に、写ったようだ。
「それだけじゃ、ないのよ」
アメリアが、はにかんだ。
「あたし、クマート様に溺愛されているの。だから、たくさんのプレゼントをもらったのよ」
プレゼント?
なにか、あげたっけ?
クマートが、そう思ったときだった。
アメリアは、顔を紅潮させ、語り始めた。
「クマート様は、あたしのために、たくさんの服を作ってくれたのよ。大部分は、夏用だけど」
や、やめてくれ。その話は。恥ずかしいから。
問いただした。マリアンヌが。
「愛があれば、失った足が生えるなんて話、聞いたことないわ」
即座に答えた。アメリアが。
「黒魔術の秘薬よ。クマート様が、作ってくださったの。あたしのために。何日も、危険な魔獣の森で、薬草を探し回って。大型魔獣と戦いながら」
何日も、と言うのは、間違いではない。
だが、たった二日間だ。
薬草は、探し回った、というほどでもない。
地元の猟師たちが、薬草の群生地を、知っていた。だいたいの位置なので、多少は探すはめになったが。
黒魔術の秘薬は、実は黒魔術ではない。
魔法の首飾りの能力を、試したかった。
それで、「黒魔術の秘薬」と称するものを、作ったのだ。
魔法の首飾りは、一つ目のダンジョンで入手した。
その能力は、ほぼ無限の再生能力だ。
身につけた者は、傷を負っても、すぐに傷が治る。切り傷くらいならば。
剣で斬られ、槍で刺されても、戦闘中に、傷が塞がる。数秒で。
魔法の首飾りを身につけた直後、それを理解した。
ほかの究極魔法具と同様に、魔法の首飾りは、身につけると数秒で、体内に吸収された。
とはいえ、魔法の首飾りは、万能ではない。肉体の再生には、エネルギーが必要だ。
切り傷の再生程度ならば、皮下脂肪を燃焼させて生み出したエネルギーで、充分だ。
だが、腕や足を切り落とされた場合、失った腕や足を再生するには、多くのエネルギーを必要とする。蓄えた皮下脂肪だけでは、足りない。
毎日、大量のカロリーを摂取して、ようやく、手足を再生できる。
魔法の首飾りを身につけたときに、思った。
いや、正確には、その前から、アニメ版の知識に基づき、考えていた。
魔法の首飾りを身につけた自分の血液には、再生能力があるのではないか、と。
自分の血液を飲ませれば、負傷者のケガが、治るのではないか、と。
そこで、試してみることにした。
アメリアを実験台にして。
魔法の首飾りの存在を隠すために、数種類の薬草を赤葡萄酒に漬け込み、それに、自分の血液を混ぜた。飲みやすくするために、蜂蜜をたっぷり混ぜて。
それを、肉体を再生させる「黒魔術の秘薬」として、アメリアに飲ませた。
それに、エネルギーをたっぷり取ってもらうために、毎日、一キログラムの肉を食べてもらった。
魔獣の肉だ。薬草を採取する際に、狩った魔獣だ。
朝食は二百グラム、昼食は三百グラム。夕食には五百グラムだ。
飽きが来ないように、毎日、料理方法を変えた。
とはいえ、料理のレパートリーは、少ない。
ステーキ以外には、唐揚げ、とんかつ、挽肉にしてハンバーグ、程度だ。
「黒魔術の秘薬」を飲ませると、失われた両足が、伸び始めた。毎日。少しずつ。
アメリアの両足は、太ももの真ん中あたりで、食いちぎられていた。
だが、一日あたり三十数ミリメートル程度ずつ、伸び始めた。重量にすると、一キログラム弱程度だ。
三週間ほどで、アメリアの両足は、完全に再生した。
その後、自由に歩けるようになるまで、さらに三週間ほど、リハビリが必要だったが。
アメリアは、語り続けた。
クマートが、アメリアのために、いかに献身的に尽くしたかを。
その愛のおかげで、自分の両足が再生し、また歩けるように、それどころか、走れるようにも、なったことを。
彼女の話を聞いて、クマートは内心驚いていた。
アメリアは、そのように解釈していたのか、と。
クマート自身としては、魔法の首飾りの能力を、確かめたかった。そのため、詳細なデータを取ろうとした。
それが、アメリアにとっては、溺愛による献身的な看病と治療に、写ったようだ。
「それだけじゃ、ないのよ」
アメリアが、はにかんだ。
「あたし、クマート様に溺愛されているの。だから、たくさんのプレゼントをもらったのよ」
プレゼント?
なにか、あげたっけ?
クマートが、そう思ったときだった。
アメリアは、顔を紅潮させ、語り始めた。
「クマート様は、あたしのために、たくさんの服を作ってくれたのよ。大部分は、夏用だけど」
や、やめてくれ。その話は。恥ずかしいから。
1
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる