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<第五章 第2話:アメリア、溺愛を語る>
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<第五章 第2話:アメリア、溺愛を語る>
問いただした。マリアンヌが。
「愛があれば、失った足が生えるなんて話、聞いたことないわ」
即座に答えた。アメリアが。
「黒魔術の秘薬よ。クマート様が、作ってくださったの。あたしのために。何日も、危険な魔獣の森で、薬草を探し回って。大型魔獣と戦いながら」
何日も、と言うのは、間違いではない。
だが、たった二日間だ。
薬草は、探し回った、というほどでもない。
地元の猟師たちが、薬草の群生地を、知っていた。だいたいの位置なので、多少は探すはめになったが。
黒魔術の秘薬は、実は黒魔術ではない。
魔法の首飾りの能力を、試したかった。
それで、「黒魔術の秘薬」と称するものを、作ったのだ。
魔法の首飾りは、一つ目のダンジョンで入手した。
その能力は、ほぼ無限の再生能力だ。
身につけた者は、傷を負っても、すぐに傷が治る。切り傷くらいならば。
剣で斬られ、槍で刺されても、戦闘中に、傷が塞がる。数秒で。
魔法の首飾りを身につけた直後、それを理解した。
ほかの究極魔法具と同様に、魔法の首飾りは、身につけると数秒で、体内に吸収された。
とはいえ、魔法の首飾りは、万能ではない。肉体の再生には、エネルギーが必要だ。
切り傷の再生程度ならば、皮下脂肪を燃焼させて生み出したエネルギーで、充分だ。
だが、腕や足を切り落とされた場合、失った腕や足を再生するには、多くのエネルギーを必要とする。蓄えた皮下脂肪だけでは、足りない。
毎日、大量のカロリーを摂取して、ようやく、手足を再生できる。
魔法の首飾りを身につけたときに、思った。
いや、正確には、その前から、アニメ版の知識に基づき、考えていた。
魔法の首飾りを身につけた自分の血液には、再生能力があるのではないか、と。
自分の血液を飲ませれば、負傷者のケガが、治るのではないか、と。
そこで、試してみることにした。
アメリアを実験台にして。
魔法の首飾りの存在を隠すために、数種類の薬草を赤葡萄酒に漬け込み、それに、自分の血液を混ぜた。飲みやすくするために、蜂蜜をたっぷり混ぜて。
それを、肉体を再生させる「黒魔術の秘薬」として、アメリアに飲ませた。
それに、エネルギーをたっぷり取ってもらうために、毎日、一キログラムの肉を食べてもらった。
魔獣の肉だ。薬草を採取する際に、狩った魔獣だ。
朝食は二百グラム、昼食は三百グラム。夕食には五百グラムだ。
飽きが来ないように、毎日、料理方法を変えた。
とはいえ、料理のレパートリーは、少ない。
ステーキ以外には、唐揚げ、とんかつ、挽肉にしてハンバーグ、程度だ。
「黒魔術の秘薬」を飲ませると、失われた両足が、伸び始めた。毎日。少しずつ。
アメリアの両足は、太ももの真ん中あたりで、食いちぎられていた。
だが、一日あたり三十数ミリメートル程度ずつ、伸び始めた。重量にすると、一キログラム弱程度だ。
三週間ほどで、アメリアの両足は、完全に再生した。
その後、自由に歩けるようになるまで、さらに三週間ほど、リハビリが必要だったが。
アメリアは、語り続けた。
クマートが、アメリアのために、いかに献身的に尽くしたかを。
その愛のおかげで、自分の両足が再生し、また歩けるように、それどころか、走れるようにも、なったことを。
彼女の話を聞いて、クマートは内心驚いていた。
アメリアは、そのように解釈していたのか、と。
クマート自身としては、魔法の首飾りの能力を、確かめたかった。そのため、詳細なデータを取ろうとした。
それが、アメリアにとっては、溺愛による献身的な看病と治療に、写ったようだ。
「それだけじゃ、ないのよ」
アメリアが、はにかんだ。
「あたし、クマート様に溺愛されているの。だから、たくさんのプレゼントをもらったのよ」
プレゼント?
なにか、あげたっけ?
クマートが、そう思ったときだった。
アメリアは、顔を紅潮させ、語り始めた。
「クマート様は、あたしのために、たくさんの服を作ってくれたのよ。大部分は、夏用だけど」
や、やめてくれ。その話は。恥ずかしいから。
問いただした。マリアンヌが。
「愛があれば、失った足が生えるなんて話、聞いたことないわ」
即座に答えた。アメリアが。
「黒魔術の秘薬よ。クマート様が、作ってくださったの。あたしのために。何日も、危険な魔獣の森で、薬草を探し回って。大型魔獣と戦いながら」
何日も、と言うのは、間違いではない。
だが、たった二日間だ。
薬草は、探し回った、というほどでもない。
地元の猟師たちが、薬草の群生地を、知っていた。だいたいの位置なので、多少は探すはめになったが。
黒魔術の秘薬は、実は黒魔術ではない。
魔法の首飾りの能力を、試したかった。
それで、「黒魔術の秘薬」と称するものを、作ったのだ。
魔法の首飾りは、一つ目のダンジョンで入手した。
その能力は、ほぼ無限の再生能力だ。
身につけた者は、傷を負っても、すぐに傷が治る。切り傷くらいならば。
剣で斬られ、槍で刺されても、戦闘中に、傷が塞がる。数秒で。
魔法の首飾りを身につけた直後、それを理解した。
ほかの究極魔法具と同様に、魔法の首飾りは、身につけると数秒で、体内に吸収された。
とはいえ、魔法の首飾りは、万能ではない。肉体の再生には、エネルギーが必要だ。
切り傷の再生程度ならば、皮下脂肪を燃焼させて生み出したエネルギーで、充分だ。
だが、腕や足を切り落とされた場合、失った腕や足を再生するには、多くのエネルギーを必要とする。蓄えた皮下脂肪だけでは、足りない。
毎日、大量のカロリーを摂取して、ようやく、手足を再生できる。
魔法の首飾りを身につけたときに、思った。
いや、正確には、その前から、アニメ版の知識に基づき、考えていた。
魔法の首飾りを身につけた自分の血液には、再生能力があるのではないか、と。
自分の血液を飲ませれば、負傷者のケガが、治るのではないか、と。
そこで、試してみることにした。
アメリアを実験台にして。
魔法の首飾りの存在を隠すために、数種類の薬草を赤葡萄酒に漬け込み、それに、自分の血液を混ぜた。飲みやすくするために、蜂蜜をたっぷり混ぜて。
それを、肉体を再生させる「黒魔術の秘薬」として、アメリアに飲ませた。
それに、エネルギーをたっぷり取ってもらうために、毎日、一キログラムの肉を食べてもらった。
魔獣の肉だ。薬草を採取する際に、狩った魔獣だ。
朝食は二百グラム、昼食は三百グラム。夕食には五百グラムだ。
飽きが来ないように、毎日、料理方法を変えた。
とはいえ、料理のレパートリーは、少ない。
ステーキ以外には、唐揚げ、とんかつ、挽肉にしてハンバーグ、程度だ。
「黒魔術の秘薬」を飲ませると、失われた両足が、伸び始めた。毎日。少しずつ。
アメリアの両足は、太ももの真ん中あたりで、食いちぎられていた。
だが、一日あたり三十数ミリメートル程度ずつ、伸び始めた。重量にすると、一キログラム弱程度だ。
三週間ほどで、アメリアの両足は、完全に再生した。
その後、自由に歩けるようになるまで、さらに三週間ほど、リハビリが必要だったが。
アメリアは、語り続けた。
クマートが、アメリアのために、いかに献身的に尽くしたかを。
その愛のおかげで、自分の両足が再生し、また歩けるように、それどころか、走れるようにも、なったことを。
彼女の話を聞いて、クマートは内心驚いていた。
アメリアは、そのように解釈していたのか、と。
クマート自身としては、魔法の首飾りの能力を、確かめたかった。そのため、詳細なデータを取ろうとした。
それが、アメリアにとっては、溺愛による献身的な看病と治療に、写ったようだ。
「それだけじゃ、ないのよ」
アメリアが、はにかんだ。
「あたし、クマート様に溺愛されているの。だから、たくさんのプレゼントをもらったのよ」
プレゼント?
なにか、あげたっけ?
クマートが、そう思ったときだった。
アメリアは、顔を紅潮させ、語り始めた。
「クマート様は、あたしのために、たくさんの服を作ってくれたのよ。大部分は、夏用だけど」
や、やめてくれ。その話は。恥ずかしいから。
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