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<第四章 第7話:絶望のヒロイン>

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  <第四章 第7話:絶望のヒロイン>
 こわい、こわい、こわい、こわい……。
 マリアンヌは、ガタガタと振るえ始めた。
 魔法の王冠のテレパシー能力で、彼女の思考を、読んだ。
 レイプ、輪姦、妊娠、退学、ホームレス。
 そんな言葉が、ぐるぐると渦巻いていた。彼女の頭の中で。
 マリアンヌは、絶望していた。
 知っていた。マリアンヌの境遇は。アニメ版では、描かれていなかった。
 そこで、アニメ版を見たあとで、ネットで情報を収集した。
 マリアンヌは、平民身分の裕福な商人の一人娘だった。
 だが、十一歳の時に、父が亡くなった。
 そのあと、母が、新興カルト宗教に、取り込まれた。
 夫の全財産を、教団に献金した。
 それでも足りなくて、一人娘のマリアンヌを奴隷として売り飛ばし、現金化して献金しようとした。
 それを知ったマリアンヌは、奴隷として売り飛ばされる直前に、逃げた。
 通っていた民間の魔法学校に、逃げ込んだ。
 校長に、掛け合った。
 住み込みの特待生に、して欲しい、と。
 全力で努力して、帝国学園の平民魔法枠で、絶対に合格するから、と。
 校長の説得に、成功した。
 マリアンヌは、衣食住を得た。それに、魔法の勉強も、続けることができた。
 もともとマリアンヌは、魔法に秀でた才能があった。
 民間の魔法学校にとって、帝国学園の平民魔法枠への合格者を出せたか否かは、生徒集めの成否に直結する。一人でも合格者を出せれば、そのあと十年ほどは、多数の生徒を確保できる。
 マリアンヌが、帝国学園の平民魔法枠に合格したときに、世話になった民間魔法学校の校長が、次のように言った。
 「卒業したら、我が校の教師として雇おう。破格の待遇で」
 校長は、さらに言葉を続けた。
 「おまえは、たま輿こしねらっているだろうが、平民の女が、貴族の男と結婚するのは、容易ではない。だが、結婚相手を見つけられなくとも、心配するな。我が校が、おまえを特別教師として雇う。きちんと、卒業したら、な」
 しかしマリアンヌは今、絶望していた。
 王子に、目をつけられた。恋愛対象ではなく、レイプの対象として。
 王子からは、逃れられない。
 いずれ、王子の手下に捕まる。王子にレイプされたあと、王子の取り巻きの下級不良貴族に、輪姦される。
 それにより、妊娠させられてしまう。
 妊娠が発覚すれば、帝国学園を、退学処分になる。
 王子の愛人になれば、妊娠した場合、慰謝料として、かなりの金額を入手することが、できるはずだ。
 だが、レイプの対象ならば、妊娠しても、慰謝料は得られない。
 王子を警察に訴えても、もみ消されるだけだ。
 レイプ、輪姦、妊娠、退学、ホームレス。ボテ腹抱えて。
 あたしの人生、終わった……。
 クマートが、声をかけた。絶望のマリアンヌに。
 「平民寮まで、お送りします。王子の取り巻きに見つからないように、なるべく林の中を、歩きましょう」
 クマートは、しゃがみ込んでいるマリアンヌに、手を差し伸べた。

  * * * * * *
 
 平民寮近くまで来た。
 林の暗闇の中から、平民寮の状況を、うかがった。
 平民寮の正面に、男子生徒三名がいた。
 誰かを、待っているようだ。
 林の暗闇の中に身を潜めながら、彼らの会話に耳を澄ました。マリアンヌの思考を、読みながら。
 彼らは、マリアンヌと同じ一年一組の生徒だった。
 だが、王子の取り巻きではない。
 授業初日の教室で、王子に接近しようとした。
 だが、付き人に阻止された。
 「落ちこぼれは、お断りよ」
 そう、言われて。
 王子の付き人は、クラスメイトの入学順位を、把握しているらしい。
 その瞬間に、彼らは「落ちこぼれ」と見なされるようになった。一組で。
 林の中で耳を澄ませていると、彼らの会話を聞き取ることができた。
 彼らが話していたのは、マリアンヌを輪姦する計画だった。
 もっとも、計画と言うほどの高度なものではない。
 彼らは、マリアンヌを、逆恨みしているようだ。
 彼ら、落ちこぼれ三人組が声をかけてきたとき、マリアンヌは、ほぼ、無視状態だった。
 マリアンヌは、王子と同じクラスになったことで、舞い上がっていた。
 王子を攻略し、玉の輿になることを夢想していた。
 その妄想のため、下級貴族の男子が声をかけてきたときに、ひどい態度になってしまったのだ。
 だがそれにより、恨みを買ってしまった。
 彼らは、けっこう大きな声で、話していた。マリアンヌに対する逆恨み復讐計画を。
 マリアンヌを輪姦したあと、妊娠させる計画らしい。妊娠が発覚すれば、退学処分になるからだ。
 落ちこぼれ不良貴族の一人が、笑いながら、言った。
 「腹ボテ退学! いい気味だ!」
 その瞬間、マリアンヌは、意識を失った。絶望のあまり。

   第五章に続く
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