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<第四章 第4話:王子登場>
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<第四章 第4話:王子登場>
「初めまして。王子殿下。クマート・オスターラントと申します。本来なら、もっと早くご挨拶にまいるべきだったのですが、帝都に到着したのが、入学式の直前でして……」
「いや、気にするな」
王子は、そう鷹揚に答えたあと、言葉を続けた。
「それより、昨日の武芸大会は、見事であった。さすが、龍殺しの剣士だ」
「いえ、ドラゴンは、弓矢で倒しましたので」
「そうなのか」
「はい。ところで、献上品を、どうぞ、おおさめください」
アメリアに、合図した。
彼女が、細い縦長の木製ケースを、クマートに渡した。持ち手が付いていて、鞄のように運べる。
ケースを開けた。王子の前で。
王子が、息を飲んだ。
「これは、魔法の杖か?」
「ご明察のとおりです、殿下」
「こんなに大きなものが……」
魔法の杖は、長さが、ちょうど一メートル半だ。象牙のような素材だが、象牙ではない。
「この魔法の杖は、魔獣一角狼の角で作りました」
「その魔獣、大きさは、どのくらいだ?」
「十メートルは、ありました。尻尾と角を除いて」
「十メートルか」
王子は、絶句した。
「オスターラント領で、私がこれまでに見た中で、一番大きな一角狼でした」
「ひょっとして、貴公が倒したのか?」
「はい。弓矢で」
魔獣は、大地から魔力を吸収し、その魔力を一本角に溜めると言われている。
そのため、魔獣の角で作った魔法の杖を使用すれば、自分の魔法力を、大幅に強化することができる、とされている。
しかし魔獣は、帝国の辺境の地にしかいない。
そのため、魔獣の角自体が貴重な品で、高値で取引される。
そのうえ、巨大な角は、入手自体が困難だ。なぜなら、それだけ巨大な魔獣のため、そう簡単には、人間が倒せないからだ。
クマートが、視線をグレースに向けた。
「実は、伯爵令嬢様にも、プレゼントがございます。クラスメイトとして、友情の証として、受け取っていただけませんか」
アメリアが、小柄な付き人エルナから、紙製の小箱を受け取り、クマートに渡した。
クマートの付き人は、アメリア、エルナ、ベアーナ、ウォルナの四名の黒髪少女だ。アメリアは中級貴族で、ほか三名は下級貴族だ。そのためアメリアが、秘書的な役割を務める。
クマートが、グレースの前で、小箱を開けた。
芳醇な芳香が、あふれ出した。
「こ、これは……」
グレースは、驚いたようだ。
「香水、ではないな。もしや、竜涎香か?」
「ご明察のとおりです。しかも、本物のドラゴンの胃袋から、取り出したものです」
グレースが、うなった。小箱の中を凝視して。
「それを、金糸で編んだ小袋に入れておるのか」
クマートが、ニヤリと笑った。
「実は、金糸では、ありません。お手に、お取りください」
グレースが、手に取った。
「これは、シルクじゃ!」
驚きの声を、あげた。グレースが。
「黄金のシルクか。どのように染めたのじゃ?」
「染めたのではありません。もともと、黄金色なのです」
「おぬしの領地に、いるのか? 黄金の繭を作る蚕が?」
「おそらく、魔獣の森に。しかしながら、誰も見たことがありません。野蚕なのでしょうが、どのような野蚕なのか、どのようなものを食べているのか、まったくわかりません」
「たくさん、取れるのか? 黄金の繭が」
「いえ。たまに、発見されるだけです。そのため、小さな布地しか、作れません」
「そうか、残念じゃな」
グレースは、本当に残念そうだった。
王子が、笑顔で口をはさんだ。
「良かったではないか、グレース。オスターラント公と、仲良くできそうで。おまえは彼のことをイヤがって、私と同じクラスになりたい、などと駄々をこねていたが」
クマートが、すかさず口をはさんだ。
「私は田舎者ゆえ、自分でも気づかぬうちに、失礼な言動を取っていたかもしれません。切に、ご容赦ください」
王子が、鷹揚に答えた。
「気にするな。帝都のマナーを学ぶのも、学園生活の重要な点だ。追い追い学んでいけば良い」
続いてサーニャが、王子に、あいさつを始めた。献上品の目録を、読み上げ始めた。
サーニャの献上品は、鯨の肉に、鯨油、海獣の毛皮など、大量だ。帝都の商人に販売すれば、けっこうな金額になるのだろうが、王子は、まったく興味なさそうな顔だ。
そこで、魔法の王冠のテレパシー能力を使って、王子の思考を読んでみた。
「初めまして。王子殿下。クマート・オスターラントと申します。本来なら、もっと早くご挨拶にまいるべきだったのですが、帝都に到着したのが、入学式の直前でして……」
「いや、気にするな」
王子は、そう鷹揚に答えたあと、言葉を続けた。
「それより、昨日の武芸大会は、見事であった。さすが、龍殺しの剣士だ」
「いえ、ドラゴンは、弓矢で倒しましたので」
「そうなのか」
「はい。ところで、献上品を、どうぞ、おおさめください」
アメリアに、合図した。
彼女が、細い縦長の木製ケースを、クマートに渡した。持ち手が付いていて、鞄のように運べる。
ケースを開けた。王子の前で。
王子が、息を飲んだ。
「これは、魔法の杖か?」
「ご明察のとおりです、殿下」
「こんなに大きなものが……」
魔法の杖は、長さが、ちょうど一メートル半だ。象牙のような素材だが、象牙ではない。
「この魔法の杖は、魔獣一角狼の角で作りました」
「その魔獣、大きさは、どのくらいだ?」
「十メートルは、ありました。尻尾と角を除いて」
「十メートルか」
王子は、絶句した。
「オスターラント領で、私がこれまでに見た中で、一番大きな一角狼でした」
「ひょっとして、貴公が倒したのか?」
「はい。弓矢で」
魔獣は、大地から魔力を吸収し、その魔力を一本角に溜めると言われている。
そのため、魔獣の角で作った魔法の杖を使用すれば、自分の魔法力を、大幅に強化することができる、とされている。
しかし魔獣は、帝国の辺境の地にしかいない。
そのため、魔獣の角自体が貴重な品で、高値で取引される。
そのうえ、巨大な角は、入手自体が困難だ。なぜなら、それだけ巨大な魔獣のため、そう簡単には、人間が倒せないからだ。
クマートが、視線をグレースに向けた。
「実は、伯爵令嬢様にも、プレゼントがございます。クラスメイトとして、友情の証として、受け取っていただけませんか」
アメリアが、小柄な付き人エルナから、紙製の小箱を受け取り、クマートに渡した。
クマートの付き人は、アメリア、エルナ、ベアーナ、ウォルナの四名の黒髪少女だ。アメリアは中級貴族で、ほか三名は下級貴族だ。そのためアメリアが、秘書的な役割を務める。
クマートが、グレースの前で、小箱を開けた。
芳醇な芳香が、あふれ出した。
「こ、これは……」
グレースは、驚いたようだ。
「香水、ではないな。もしや、竜涎香か?」
「ご明察のとおりです。しかも、本物のドラゴンの胃袋から、取り出したものです」
グレースが、うなった。小箱の中を凝視して。
「それを、金糸で編んだ小袋に入れておるのか」
クマートが、ニヤリと笑った。
「実は、金糸では、ありません。お手に、お取りください」
グレースが、手に取った。
「これは、シルクじゃ!」
驚きの声を、あげた。グレースが。
「黄金のシルクか。どのように染めたのじゃ?」
「染めたのではありません。もともと、黄金色なのです」
「おぬしの領地に、いるのか? 黄金の繭を作る蚕が?」
「おそらく、魔獣の森に。しかしながら、誰も見たことがありません。野蚕なのでしょうが、どのような野蚕なのか、どのようなものを食べているのか、まったくわかりません」
「たくさん、取れるのか? 黄金の繭が」
「いえ。たまに、発見されるだけです。そのため、小さな布地しか、作れません」
「そうか、残念じゃな」
グレースは、本当に残念そうだった。
王子が、笑顔で口をはさんだ。
「良かったではないか、グレース。オスターラント公と、仲良くできそうで。おまえは彼のことをイヤがって、私と同じクラスになりたい、などと駄々をこねていたが」
クマートが、すかさず口をはさんだ。
「私は田舎者ゆえ、自分でも気づかぬうちに、失礼な言動を取っていたかもしれません。切に、ご容赦ください」
王子が、鷹揚に答えた。
「気にするな。帝都のマナーを学ぶのも、学園生活の重要な点だ。追い追い学んでいけば良い」
続いてサーニャが、王子に、あいさつを始めた。献上品の目録を、読み上げ始めた。
サーニャの献上品は、鯨の肉に、鯨油、海獣の毛皮など、大量だ。帝都の商人に販売すれば、けっこうな金額になるのだろうが、王子は、まったく興味なさそうな顔だ。
そこで、魔法の王冠のテレパシー能力を使って、王子の思考を読んでみた。
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