上 下
23 / 41

第四章 腹黒王子の謀略 <第1話:新入生懇親会>

しおりを挟む
  <第四章 第1話:新入生懇親会>
 九月の最初の金曜日。授業が始まってから三日目。
 もっとも、いわゆる本格的な授業は、まだない。
 九月の最初の月曜日は、入学式だった。
 翌日の火曜日は、オリエンテーションだ。
 その翌日の水曜日は、ホームルームだった。クラスメイトたちの自己紹介の時間だ。
 そのホームルームの前に、極悪伯爵令嬢グレースが、大暴れした。クラスメイトを斬首ざんしゅ刑に、しようとした。
 女性教師が、学園長を呼んできた。
 学園長は、皇帝一族だ。帝位継承順位は数十番目、たしか、五十番より下だ。
 だが、現皇帝の再従兄弟はとこだ。
 領地も領民もない。
 若いときから、教育者だった。
 権力の及ぶ範囲は、帝国学園だけ。
 しかも、その権力は、非常に弱い。
 なぜなら、学園長としての権力しかないからだ。
 だが、身分を極度に重視するグレースにとっては、皇帝一族の学園長は、絶対的な存在だったようだ。
 グレースは、教室での大暴れのあと、学園長室で、懇々こんこんと説教された。学園長に。
 彼女は、まるで借りてきた猫のように、おとなしかったようだ。
 その様子は、誰かに聞いたのではない。
 魔法の王冠のテレパシー能力を使い、女性教師の思考を読んだ。教室に戻って来たあと。
 水曜日は、自己紹介のホームルームが終わったあと、新入生共通学力テストがあった。
 ペーパーテストだ。新入生の客観的な学力を、はかるためだ。
 帝国学園の入学試験は、身分ごとに違う。
 定員も、身分ごとに決まっている。
 一学年の入学定員は、中級貴族は百名だ。
 下級貴族は、八百名だ。
 平民の入学定員は百名で、五十名は一般入試で、残りの五十名は魔法入試枠だ。
 平民の一般入試を突破するのは、超がつくほどの秀才だけだ。
 彼らの親は、医者、弁護士、会計士、教師、学者などが中心で、一部には大商人の子女がいる。幼いときから、金に糸目をつけず、英才教育をほどこしてきたパターンだ。
 魔法入試枠を突破した者たちも、裕福な家庭の子女ばかりだ。なぜなら、幼いときから、民間の魔法学校に通い、優れた成績を収めてきた者たちばかりだからだ。
 なお、上級貴族は定員外で、無試験で入学できる。
 さらに、上級貴族は、四名の家臣を、付き人として無試験で入学させることができる。
 九月の最初の金曜日、午前中は、授業があった。
 授業と言っても、各科目の担当教師の自己紹介と、授業方針の説明が、中心だ。
 一時限目は、国語、すなわち、帝国共通語の授業だ。
 二時限目は、数学だった。
 三時限目は社会科で、四時限目は魔法の授業だった。
 一時限の時間は、四十五分間だ。
 九月最初の金曜日の午後は、新入生懇親こんしん会だ。
 体育館で、開催された。新入生懇親会が。立食パーティー形式で。
 新入生全員が、一堂に会するのは、入学式とオリエンテーションに次いで、三回目だ。
 とはいえ、入学式とオリエンテーションは、決められた席に着席しているため、多くの新入生と懇親を深めることは、できなかった。
 だが今回は、立食パーティー形式のため、自由に懇親を深めることができる。
 クマートは、アメリアたち四名の付き人と共に、まずは、王子にあいさつすることにした。
 だが、王子へのあいさつは、行列ができていた。
 王子の隣には、極悪伯爵令嬢グレースがいた。王子と一緒にいるときのグレースは、おしとやかな感じにっている。
 行列に、並んだ。
 すると、前方に並んでいた中下級の貴族たちが、譲ろうとしてくれた。
 「オスターラント公、どうぞ、どうぞ」と。
 「いや、順番は、守ろう。その心遣い、その気持ちだけ、ありがたくいただこう」
 列に並んでいると、前や後ろに並んでいる者たちが、好奇心旺盛な顔で、尋ねてきた。
 「ドラゴンを倒したときの武勇伝、お聞かせください」と。
 そのときだった。
 自慢げに話し始めた。クマートの後ろに割り込んだ少女が。
 巨大な少女だ。顔は童顔なのに、体格は、クマートと同じくらいだ。
 赤毛のツインテールで、そばかす顔。
 「聞きたい? ダーリンが、ドラゴンを倒したときの話しを」
 彼女は、サーニャだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...