19 / 41
<第三章 第6話:甲冑真剣試合>
しおりを挟む
<第三章 第6話:甲冑真剣試合>
騎士団長の剣は、巨大だった。刃渡りだけで、一メートル半はある。厚さも分厚く、重量がある。両手で持って使用する剣だ。
鞘から抜いた巨大な剣を、騎士団長は、自分の右肩に担いだ。グリップを両手で持ったまま。
大男の騎士団長が、クマートを見下ろした。
「さあ、かかってきたまえ」
クマートは、右足を前に出し、後屈立ちで構えた。
後屈立ちは、空手の基本的な立ち方の一つで、防御重視の立ち方だ。重心を、後方の足にかける。
右手で持った長剣の切っ先を、相手に向けた。
右方向にまわりながら、長剣の突きを、何度か出した。騎士団長との距離を、充分にとりながら。
観客席から、失笑の声が聞こえた。
観客たちは、こう思ったに違いない。
騎士団長相手に、恐怖している。そのため、腰が退けているのだ、と。
騎士団長自身も、そう思ったようだ。
「さあ、遠慮なく来い!」
その直後だった。
クマートが飛び込んだ。
後方の左足を、右前足に引きつけた直後、左足で地面を強く踏んだ。重心を後ろ足から前足に移動させ、前屈立ちで着地するのと同時に、右手の長剣を突いた。
金属音が、響いた。
クマートの長剣の切っ先が、騎士団長の鎧の左腹部に、あたったのだ。
前屈立ちは、重心を前方の足にかける攻撃重視の立ち方だ。
騎士団長の表情が、変わった。
次の瞬間、振り下ろした。巨大な剣を。騎士団長が。
切り裂いた。
ように、見えた。だが、すでにクマートの姿は、そこにはなかった。
騎士団長の剣は、なにもない空間を切り裂いただけだった。
クマートは、前方にあった右足を大きく後方に引き、ふたたび後屈立ちになっていた。今度は、左足を前に出して。
その直後、クマートが長剣で突いた。騎士団長の籠手を。
金属音が、ふたたび響いた。
騎士団長の表情が、険しくなった。
巨大な剣を、左下から右上へと振り上げた。
だがクマートは、その一撃をよけた。紙一重で。
その次の瞬間、金属音が響いた。長剣の切っ先が、騎士団長の左胸にあたったのだ。
観客席から、どよめきが起きた。
騎士団長が、次々に巨大な剣を振るった。
それをクマートが、紙一重でかわしながら、何度も飛び込み、長剣の突きを見舞った。
そのたびに、金属音が響いた。
騎士団長も、本気になった。巨大な剣を振るうスピードが、速くなった。
これだけの巨大な剣を、このスピードで振るうとは、たいしたものだ。
だが、剣の重量が重すぎるせいで、クマートのスピードには、ついていけない。
金属音が、次々に響いた。長剣の突きが、騎士団長の鋼鉄製の鎧に、次々に決まって。
まるで、アウト・ボクシングのようだ。
ボクシングにおけるアウト・ボクシングは、通常、リーチの長い選手が、リーチの短い選手に対して行うものだ。
だが、空手の場合は、スピードの速い小柄な者が、スピードの遅い大男相手に、アウト・ボクシング的な闘いをすることもある。
クマートと熊人の魂が入れ替わる前、熊人は日本で、動きの鈍い大男相手に、よくアウトボクシングをした。試合ではないが、身長百八十センチメートルはあるミドル級のボクサー相手に、バンタム級の熊人がアウトボクシングをし、一方的にパンチをあてたことがあった。
ミドル級は、試合時の体重は約七十二キログラムだが、ふだんの体重は八十キロ前後ある者が多い。バンタム級は、試合時の体重は約五十三キロだが、ふだんの体重は六十キロ前後だ。
空手でもボクシングでも、熊人は、大男をスピードで翻弄するのが、得意だった。
金属音が、響き続けた。
最初に長剣の突きをあててから、二百秒は、たった。
騎士団長の息が、あがってきた。
剣が巨大で、重すぎるからだ。
それに対し、クマートの息はまだ、あがっていない。一年三ヶ月間の厳しく、そして科学的なトレーニングの成果だ。
もちろん、長剣の重量が軽いということもある。
この辺で、勝負を決めよう。
そう、思った。
騎士団長の剣は、巨大だった。刃渡りだけで、一メートル半はある。厚さも分厚く、重量がある。両手で持って使用する剣だ。
鞘から抜いた巨大な剣を、騎士団長は、自分の右肩に担いだ。グリップを両手で持ったまま。
大男の騎士団長が、クマートを見下ろした。
「さあ、かかってきたまえ」
クマートは、右足を前に出し、後屈立ちで構えた。
後屈立ちは、空手の基本的な立ち方の一つで、防御重視の立ち方だ。重心を、後方の足にかける。
右手で持った長剣の切っ先を、相手に向けた。
右方向にまわりながら、長剣の突きを、何度か出した。騎士団長との距離を、充分にとりながら。
観客席から、失笑の声が聞こえた。
観客たちは、こう思ったに違いない。
騎士団長相手に、恐怖している。そのため、腰が退けているのだ、と。
騎士団長自身も、そう思ったようだ。
「さあ、遠慮なく来い!」
その直後だった。
クマートが飛び込んだ。
後方の左足を、右前足に引きつけた直後、左足で地面を強く踏んだ。重心を後ろ足から前足に移動させ、前屈立ちで着地するのと同時に、右手の長剣を突いた。
金属音が、響いた。
クマートの長剣の切っ先が、騎士団長の鎧の左腹部に、あたったのだ。
前屈立ちは、重心を前方の足にかける攻撃重視の立ち方だ。
騎士団長の表情が、変わった。
次の瞬間、振り下ろした。巨大な剣を。騎士団長が。
切り裂いた。
ように、見えた。だが、すでにクマートの姿は、そこにはなかった。
騎士団長の剣は、なにもない空間を切り裂いただけだった。
クマートは、前方にあった右足を大きく後方に引き、ふたたび後屈立ちになっていた。今度は、左足を前に出して。
その直後、クマートが長剣で突いた。騎士団長の籠手を。
金属音が、ふたたび響いた。
騎士団長の表情が、険しくなった。
巨大な剣を、左下から右上へと振り上げた。
だがクマートは、その一撃をよけた。紙一重で。
その次の瞬間、金属音が響いた。長剣の切っ先が、騎士団長の左胸にあたったのだ。
観客席から、どよめきが起きた。
騎士団長が、次々に巨大な剣を振るった。
それをクマートが、紙一重でかわしながら、何度も飛び込み、長剣の突きを見舞った。
そのたびに、金属音が響いた。
騎士団長も、本気になった。巨大な剣を振るうスピードが、速くなった。
これだけの巨大な剣を、このスピードで振るうとは、たいしたものだ。
だが、剣の重量が重すぎるせいで、クマートのスピードには、ついていけない。
金属音が、次々に響いた。長剣の突きが、騎士団長の鋼鉄製の鎧に、次々に決まって。
まるで、アウト・ボクシングのようだ。
ボクシングにおけるアウト・ボクシングは、通常、リーチの長い選手が、リーチの短い選手に対して行うものだ。
だが、空手の場合は、スピードの速い小柄な者が、スピードの遅い大男相手に、アウト・ボクシング的な闘いをすることもある。
クマートと熊人の魂が入れ替わる前、熊人は日本で、動きの鈍い大男相手に、よくアウトボクシングをした。試合ではないが、身長百八十センチメートルはあるミドル級のボクサー相手に、バンタム級の熊人がアウトボクシングをし、一方的にパンチをあてたことがあった。
ミドル級は、試合時の体重は約七十二キログラムだが、ふだんの体重は八十キロ前後ある者が多い。バンタム級は、試合時の体重は約五十三キロだが、ふだんの体重は六十キロ前後だ。
空手でもボクシングでも、熊人は、大男をスピードで翻弄するのが、得意だった。
金属音が、響き続けた。
最初に長剣の突きをあててから、二百秒は、たった。
騎士団長の息が、あがってきた。
剣が巨大で、重すぎるからだ。
それに対し、クマートの息はまだ、あがっていない。一年三ヶ月間の厳しく、そして科学的なトレーニングの成果だ。
もちろん、長剣の重量が軽いということもある。
この辺で、勝負を決めよう。
そう、思った。
1
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる