異世界極悪令嬢と同じクラスになってしまった!

蛇崩 通

文字の大きさ
上 下
4 / 41

<第一章 第3話>

しおりを挟む
  <第一章 第3話>
 大男のパーカーが、剣を振り下ろした。土下座した少年に向かって。
 だが、剣が止まった。
 ほんの少し、動いただけで。
 背後から、パーカーの両手首を、つかんでいた。
 黒髪の少年が。
 クマート・オスターラントだ。
 左下段回し蹴りを、り込んだ。パーカーの両膝の裏に。
 パーカーが、両ひざを床についた。
 次の瞬間、両手首を後方に引いた。
 引きづり倒した。パーカーを。
 その際、パーカーの後頭部に、たたき込んだ。左膝蹴りを、一発。
 その膝蹴りは、わざと軽く蹴った。大怪我おおけがを、しないように。
 だがその一撃で、パーカーは失神昏倒しっしんこんとうした。
 すぐさま、剣を取り上げた。
 その剣を、自分の背後の床に、突き刺した。
 グレースは、こおりついていた。両目を見開き、口を開けたままで。
 恐怖か、あるいは衝撃か。
 まるで、ホラー映画の殺され役少女の表情だ。
 ウォードが、襲いかかってきた。剣を振り上げて。
 振り下ろした。ウォードが剣を、クマートに向かって。
 切り裂いた、かのように見えた。
 だが、ウォードの剣は、途中で止まった。
 上段十字受けだ。
 空手の防御技で、ウォードの右手首を、受け止めたのだ。
 次の瞬間、右手でつかんだ。ウォードの右手首を。
 強く引き寄せながら、左足を一歩踏み込み、左手をウォードの右肩にあてた。
 強く押した。左手を。下に向かって。彼の右手首を引き寄せながら。
 ウォードの上半身が、前傾した。
 右膝を、蹴り込んだ。力を込めて。彼のみぞおちに。
 彼の身体から、力が失われた。
 その直後、右膝を蹴り上げた。ウォードのあごに。力をセーブし、軽くあてた。骨折しないように。
 だが、失神昏倒した。その一撃で。ウォードが。
 彼の剣も取り上げ、背後の床に突き刺した。
 「若様!」
 黒髪の少女が四名、駆けつけた。細身の長剣を振り上げながら。
 グレースの表情が、引きつった。恐怖によるものだ。
 彼女だけではない。グレースの付き人エルシーとアイラも、恐怖で凍りついていた。
 彼女たちは、これまで常に加害者側で、被害者側になることがなかったからだろう。
 それどころか、命をかけた戦いも、経験したことがないのだろう。
 「剣をさやおさめなさい!」
 するどい声で、命じた。
 「しかし……」
 黒髪美少女の言葉を、さえぎった。
 「アメリア! ここは、教室です。教室で剣をいては、なりません」
 「しかし、クマート様の御身おんみが危険に……」
 「この程度は、危険の内には入りません。剣を収めなさい」
 「承知しょうちしました」
 アメリアたち四名の黒髪少女は、剣を鞘に収めた。
 一歩、踏み出した。グレースのほうへ。
 グレースの表情が、さらに引きつった。強い恐怖で。
 彼女は、一言も、発することができなかった。
 一歩も、動くことができなかった。
 強烈な恐怖で、石像のように固まっていた。
 「ご挨拶が遅れまして、恐縮です」
 かしこまって、あいさつを始めた。
 「わたしは、クマート・オスターラントと申します。オスターラント準男爵の嫡男ちゃくなんです。以後、お見知りおきを」
 グレースが、数回、口をパクパクさせた。
 ようやく、動けるようになったようだ。
 突然、怒鳴り散らした。
 「準男爵ふぜいが、わらわに逆らう気か!」
 数秒間、沈黙した。
 何と答えるべきか。
 伯爵令嬢と決定的に対立するのは、まずい。
 しかも彼女は、王子の婚約者だ。
 あとで、あることないこと、讒言ざんげんを、王子に吹き込みそうだ。
 もっとも王子は、善人そうだ。アニメ版では。
 だから、クラスメイト斬首事件を期に、王子の心は、グレースから離れてしまう。
 だが、その後の展開は、ボクにとって都合が悪い。
 なぜなら、ヒロインが王子と結ばれてしまうからだ。
 八方、すべて丸くおさまる良い回答は、何かないだろうか。
 数秒間、考え込んだ。
 そのときだった。
 グレースが命じた。ボクを指さして。
 「エルシー! アイラ! 抜剣ばっけんせよ! この黒髪男を、り殺せ!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

モブ高校生、ダンジョンでは話題の冒険者【ブラック】として活動中。~転校生美少女がいきなり直属の部下とか言われても困るんだが~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は【ブラック】という活動名でダンジョンに潜っているAランク冒険者だった。  ダンジョンが世界に出現して30年後の東京。  モンスターを倒し、ダンジョンの攻略を目指す冒険者は、新しい職業として脚光を浴びるようになった。  黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。果たして、白桃の正体は!?  「才斗先輩、これからよろしくお願いしますねっ」  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※序盤は結構ラブコメ感がありますが、ちゃんとファンタジーします。モンスターとも戦いますし、冒険者同士でも戦ったりします。ガチです。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ※お気に入り登録者2600人超えの人気作、『実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する』も大好評連載中です!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...