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<第一章 第3話>
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<第一章 第3話>
大男のパーカーが、剣を振り下ろした。土下座した少年に向かって。
だが、剣が止まった。
ほんの少し、動いただけで。
背後から、パーカーの両手首を、つかんでいた。
黒髪の少年が。
クマート・オスターラントだ。
左下段回し蹴りを、蹴り込んだ。パーカーの両膝の裏に。
パーカーが、両膝を床についた。
次の瞬間、両手首を後方に引いた。
引きづり倒した。パーカーを。
その際、パーカーの後頭部に、たたき込んだ。左膝蹴りを、一発。
その膝蹴りは、わざと軽く蹴った。大怪我を、しないように。
だがその一撃で、パーカーは失神昏倒した。
すぐさま、剣を取り上げた。
その剣を、自分の背後の床に、突き刺した。
グレースは、凍りついていた。両目を見開き、口を開けたままで。
恐怖か、あるいは衝撃か。
まるで、ホラー映画の殺され役少女の表情だ。
ウォードが、襲いかかってきた。剣を振り上げて。
振り下ろした。ウォードが剣を、クマートに向かって。
切り裂いた、かのように見えた。
だが、ウォードの剣は、途中で止まった。
上段十字受けだ。
空手の防御技で、ウォードの右手首を、受け止めたのだ。
次の瞬間、右手でつかんだ。ウォードの右手首を。
強く引き寄せながら、左足を一歩踏み込み、左手をウォードの右肩にあてた。
強く押した。左手を。下に向かって。彼の右手首を引き寄せながら。
ウォードの上半身が、前傾した。
右膝を、蹴り込んだ。力を込めて。彼のみぞおちに。
彼の身体から、力が失われた。
その直後、右膝を蹴り上げた。ウォードの顎に。力をセーブし、軽くあてた。骨折しないように。
だが、失神昏倒した。その一撃で。ウォードが。
彼の剣も取り上げ、背後の床に突き刺した。
「若様!」
黒髪の少女が四名、駆けつけた。細身の長剣を振り上げながら。
グレースの表情が、引きつった。恐怖によるものだ。
彼女だけではない。グレースの付き人エルシーとアイラも、恐怖で凍りついていた。
彼女たちは、これまで常に加害者側で、被害者側になることがなかったからだろう。
それどころか、命をかけた戦いも、経験したことがないのだろう。
「剣を鞘に収めなさい!」
鋭い声で、命じた。
「しかし……」
黒髪美少女の言葉を、さえぎった。
「アメリア! ここは、教室です。教室で剣を抜いては、なりません」
「しかし、クマート様の御身が危険に……」
「この程度は、危険の内には入りません。剣を収めなさい」
「承知しました」
アメリアたち四名の黒髪少女は、剣を鞘に収めた。
一歩、踏み出した。グレースのほうへ。
グレースの表情が、さらに引きつった。強い恐怖で。
彼女は、一言も、発することができなかった。
一歩も、動くことができなかった。
強烈な恐怖で、石像のように固まっていた。
「ご挨拶が遅れまして、恐縮です」
かしこまって、あいさつを始めた。
「わたしは、クマート・オスターラントと申します。オスターラント準男爵の嫡男です。以後、お見知りおきを」
グレースが、数回、口をパクパクさせた。
ようやく、動けるようになったようだ。
突然、怒鳴り散らした。
「準男爵ふぜいが、わらわに逆らう気か!」
数秒間、沈黙した。
何と答えるべきか。
伯爵令嬢と決定的に対立するのは、まずい。
しかも彼女は、王子の婚約者だ。
あとで、あることないこと、讒言を、王子に吹き込みそうだ。
もっとも王子は、善人そうだ。アニメ版では。
だから、クラスメイト斬首事件を期に、王子の心は、グレースから離れてしまう。
だが、その後の展開は、ボクにとって都合が悪い。
なぜなら、ヒロインが王子と結ばれてしまうからだ。
八方、すべて丸くおさまる良い回答は、何かないだろうか。
数秒間、考え込んだ。
そのときだった。
グレースが命じた。ボクを指さして。
「エルシー! アイラ! 抜剣せよ! この黒髪男を、斬り殺せ!」
大男のパーカーが、剣を振り下ろした。土下座した少年に向かって。
だが、剣が止まった。
ほんの少し、動いただけで。
背後から、パーカーの両手首を、つかんでいた。
黒髪の少年が。
クマート・オスターラントだ。
左下段回し蹴りを、蹴り込んだ。パーカーの両膝の裏に。
パーカーが、両膝を床についた。
次の瞬間、両手首を後方に引いた。
引きづり倒した。パーカーを。
その際、パーカーの後頭部に、たたき込んだ。左膝蹴りを、一発。
その膝蹴りは、わざと軽く蹴った。大怪我を、しないように。
だがその一撃で、パーカーは失神昏倒した。
すぐさま、剣を取り上げた。
その剣を、自分の背後の床に、突き刺した。
グレースは、凍りついていた。両目を見開き、口を開けたままで。
恐怖か、あるいは衝撃か。
まるで、ホラー映画の殺され役少女の表情だ。
ウォードが、襲いかかってきた。剣を振り上げて。
振り下ろした。ウォードが剣を、クマートに向かって。
切り裂いた、かのように見えた。
だが、ウォードの剣は、途中で止まった。
上段十字受けだ。
空手の防御技で、ウォードの右手首を、受け止めたのだ。
次の瞬間、右手でつかんだ。ウォードの右手首を。
強く引き寄せながら、左足を一歩踏み込み、左手をウォードの右肩にあてた。
強く押した。左手を。下に向かって。彼の右手首を引き寄せながら。
ウォードの上半身が、前傾した。
右膝を、蹴り込んだ。力を込めて。彼のみぞおちに。
彼の身体から、力が失われた。
その直後、右膝を蹴り上げた。ウォードの顎に。力をセーブし、軽くあてた。骨折しないように。
だが、失神昏倒した。その一撃で。ウォードが。
彼の剣も取り上げ、背後の床に突き刺した。
「若様!」
黒髪の少女が四名、駆けつけた。細身の長剣を振り上げながら。
グレースの表情が、引きつった。恐怖によるものだ。
彼女だけではない。グレースの付き人エルシーとアイラも、恐怖で凍りついていた。
彼女たちは、これまで常に加害者側で、被害者側になることがなかったからだろう。
それどころか、命をかけた戦いも、経験したことがないのだろう。
「剣を鞘に収めなさい!」
鋭い声で、命じた。
「しかし……」
黒髪美少女の言葉を、さえぎった。
「アメリア! ここは、教室です。教室で剣を抜いては、なりません」
「しかし、クマート様の御身が危険に……」
「この程度は、危険の内には入りません。剣を収めなさい」
「承知しました」
アメリアたち四名の黒髪少女は、剣を鞘に収めた。
一歩、踏み出した。グレースのほうへ。
グレースの表情が、さらに引きつった。強い恐怖で。
彼女は、一言も、発することができなかった。
一歩も、動くことができなかった。
強烈な恐怖で、石像のように固まっていた。
「ご挨拶が遅れまして、恐縮です」
かしこまって、あいさつを始めた。
「わたしは、クマート・オスターラントと申します。オスターラント準男爵の嫡男です。以後、お見知りおきを」
グレースが、数回、口をパクパクさせた。
ようやく、動けるようになったようだ。
突然、怒鳴り散らした。
「準男爵ふぜいが、わらわに逆らう気か!」
数秒間、沈黙した。
何と答えるべきか。
伯爵令嬢と決定的に対立するのは、まずい。
しかも彼女は、王子の婚約者だ。
あとで、あることないこと、讒言を、王子に吹き込みそうだ。
もっとも王子は、善人そうだ。アニメ版では。
だから、クラスメイト斬首事件を期に、王子の心は、グレースから離れてしまう。
だが、その後の展開は、ボクにとって都合が悪い。
なぜなら、ヒロインが王子と結ばれてしまうからだ。
八方、すべて丸くおさまる良い回答は、何かないだろうか。
数秒間、考え込んだ。
そのときだった。
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