上 下
413 / 441
本編

-417- 探知魔法

しおりを挟む

「いつも空間に捨ててたからわからなかった」
「レン様のせいではございませんよ。阿呆なことをなさったアレックス様の責任です」
「ですねー」

部屋を出て、お父様のところへと足を運ぶ途中うなだれて呟く。
すると、セバスがぴしゃりと厳しい言葉を放った。
僕に対してじゃないから怖いわけでもないんだけれど、阿呆なんて言葉をセバスも使うんだなあ、なんてぼんやりと思った。

本当はピアスをつけたところを一緒にお父様に見せてあげたかったけれど、今日は無理かもしれない。

「ちゃんと言って欲しかったな」
「ですよねえ」

セオが深刻のかけらもない様子で同意してくれる。
怪我をしたり、辛い時は隠さずに言って欲しいって思うのは僕の我儘なのかな?
今回は、魔力過多による魔力酔いだから、しばらく寝ていれば直るってセバスも言っていたけれど魔力過多を直す薬はない。
魔力が上手く循環しつつもどんどん使っていくのがいいと聞いた。
そうなると、僕が出来るってことがあまりない。
逆なら兎も角、吸い出すなんてことは出来るのかな?
今の状態じゃ無理だろうな。
だって、僕の方がまだ多いんだもん。
足りないものを分け与えたり、互いに魔力を馴染ませたりは分かるんだけどな。

なんでも、ちゃんと一緒に考えていきたいんだけれど、それは僕の我儘かもしれない。

「起きたらきちんと話し合いをするのがよろしいかと」
「うん」
「───ときに、レン様、ピアスの付与魔法のことはお聞きになっていますか?」
「ん?お父様がアレックスにってくれたものは確かになくしたりこわれたりしないように魔法が付与されてるって聞いたけれど」
「ではなくて、レン様が今身につけられているピアスについてです」
「あ、ううん、聞いてない、よ……セバス?」

セバスはぴたりと足をとめて、まじまじと僕の顔を見た後に、視線を遠くへと移してしまう。
え?何?そんなおかしな魔法が付与されてたりするの?

アレックスがくれたわけだし、アレックスは付与魔法がとても得意だからアレックスが自らしてくれたのだと思うけれど、そんなに?

「目覚めたら説教ですね」
「え?……今セバスから聞いていい?」
「物理的にも攻撃魔法からも、そして毒からも身をお守りする強い魔法が付与されています」
「わ、凄いね!僕このピアスがあれば無敵かも」
「そして、探知魔法も付与されています」
「うっわ」

セバスの答えに、セオが思いっ切り顔を引きつらせる。

「探知魔法?」
「探知魔法というのは、どこにいても相手の居場所がわかるという魔法です」
「そっか。便利だね?」
「レン様、いいんですか?そんな───」
「うん、このピアスがあればどこにいてもアレックスには僕がどこにいるか分かるってことでしょう?」
「そうですよ?いつでもどこでもレン様の居場所が分かってしまいます」

元の世界で言うと、子供に持たせるGPSみたいなものかな?
アレックスはとっても心配性だから、それで少しでも安心できるなら特に問題はないと思う。
こっそり孤児院に出かけるのは、もうやめようって決めたばかりだし。
うん、問題ない。

けれど。セオとセバスが複雑そうな顔を僕に向けてきた。

「束縛激しすぎて窮屈過ぎませんか?いつでもどこでも居場所がわかって監視されてるみたいで」
「え?監視?アレックスから僕の場所がわかるってだけでしょう?誰と会っているとか会話とかが全部聞かれるわけでもないのでしょう?」
「それは勿論そういうわけじゃないですけれど……常にレン様のいる場所がアレックス様にわかってしまうんですよ?」
「うん、そのくらいなら特に困らないよ?アレックスは心配性だから僕の居場所がわかるだけで安心するなら、それはそれで意味があると思うんだ。
勿論一人で行動するなんてことは絶対にないし、セオと一緒だから心配することもないと思うんだけれどね」
「レン様のことは俺が命に代えてもお守りしますよ」
「うん、ありがとう。ともかく、僕はアレックスから僕の居場所が常にわかるくらいは特に問題もないよ」
「そうです?常に知られるんですよ?」
「うん」

セオが心配そうにのぞき込んでくるけれど、僕は本当に気にはならない。
ただ、ものすごーく心配性だな、と思うだけで。
今に始まったことじゃないけれどね。
自分のプライベートな時間も大切にする、自由を求めているけれど自由になり切れていないセオからしたら、相手に逐一居場所を知られている状態というのは“ない”のかもしれないな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

BL
 俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。  ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。 「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」  モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?  重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。 ※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。 ※第三者×兄(弟)描写があります。 ※ヤンデレの闇属性でビッチです。 ※兄の方が優位です。 ※男性向けの表現を含みます。 ※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。 お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!

怒鳴り声が怖くて学校から帰ってしまった男子高校生

こじらせた処女
BL
過去の虐待のトラウマから、怒鳴られると動悸がしてしまう子が過呼吸を起こす話

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

処理中です...