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本編
-401- 黒い宝石
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「ありがとう」
「いえ……それではお茶が飲めませんね。今箱をご用意いたします」
「うん」
お茶を前に出されてお礼を言うと、セバスは僕の手にまた目を落として席を外す。
たしかに、このままじゃお茶は飲めないし、気軽にテーブルの上に転がすことなんてもっと出来ない。
それにしても、ずっと見ていたくなる石だ。
これがアレックスの耳と胸元を飾ると思うと凄く嬉しい。
「そういえば、これ、ダイヤじゃないよね……なんていう石なの?」
「マスグラバイトだ」
「マスグラバイト……」
「ああ。山になった中に一つだけあってな、それを加工した。知られていない石だが価値はある。そこは偽装していない」
「偽装されてるのは、産地だけ?」
「ああ。さすがに外じゃマズいだろうからな。産地偽装はセバスにも見えないぞ。伝えるのは自由だ」
「うん。ありがとうお父様」
マスグラバイト、なんて宝石の名前を僕は知らなかった。
元々そこまで宝石に明るくない。
元の世界にもあるのか、それともこの世界特有なものなのかもわからない。
でも、お父様が価値があるっていうんだから相当価値のあるものなんだろうな。
少なくとも、アレックスがこれをつけて周りから侮られないくらいには価値のあるものなんだろうと思う。
「そうだ、他の石はちゃんと戻してきた?」
「いくつか加工して手元にあるぞ。付与魔法の練習用にあった方がいいだろ?」
「あ、そっか。うん、やってみたい」
「必ずしも価値のある宝石が魔力をためやすいというとそうでもないからな。
種類別にいくつか用意してある」
「黒い宝石だと、どんな石が魔力をためやすいの?」
「そうだな……黒翡翠がいい。ブラックダイヤは、そいつにやったんだろう?」
「うん」
そういってお父様は、テーブルの上にコロン、と出してきた。
ブラックダイヤと比べるんだから、それなりに価値のあるものなんだろうな。
「黒翡翠は、石その物のランクもあるが、種類にしては価値もまあそれなりにある上に、魔力を込めやすいし、闇属性との相性もいい」
「そうなんだ。ちなみに、安価でためやすいのってある?」
「ふむ……ブラックスピネルなら、お前との相性も良いし、手に入りやすい。スピネル自体は平民の髪飾りにも良く使われるくらい安価だ」
「なら、孤児院の子供たちへ贈るのも大丈夫かな?」
「ああ、問題ないぞ。足りなければ用意してやる」
「うん」
付与が上手くできるようになったら、みんなの分を作ってあげたいな。
「……来たか」
お父様の呟きと同時、扉のノック音が聞こえてセバスが入ってくる。
箱って言ってたから、前にコインを入れていたようなベルベット地の箱を思い浮かべていたんだけど、セバスが持ってきたのは見事な金細工のアンティークな宝石箱だった。
猫足なのが可愛い。
僕の手のひら分の大きさだ。
「こちらへ」
「ありがとう、セバス。綺麗でしょう?すごくアレックスに似合いそう」
「左様ですね。とても珍しい石のようですが、レン様のお色そのものでございます。アレックス様もさぞお喜びになることでしょう」
「うん。交換するまで保管してもらってもいい?」
「もちろんでございます」
目に届く場所にずっとあるのはなんだか不安だ。
誰も取りはしないのは分かってる。
でも、僕の空間に収納するんじゃなくて、ちゃんと家に保管してもらいたいって思ったんだ。
「セバス」
「はい、如何しましたか?」
「セバスには、ちゃんと伝えとこうと思って。この石の産地は、本当はエルフ族の山奥じゃなくて、お父様がそう見えるように偽装を掛けたんだって」
「……」
「そう心配せずとも大丈夫だ、誰にも分からない」
セバスが黙るのを目に、お父様が面白そうににやりと笑った。
「いえ……それではお茶が飲めませんね。今箱をご用意いたします」
「うん」
お茶を前に出されてお礼を言うと、セバスは僕の手にまた目を落として席を外す。
たしかに、このままじゃお茶は飲めないし、気軽にテーブルの上に転がすことなんてもっと出来ない。
それにしても、ずっと見ていたくなる石だ。
これがアレックスの耳と胸元を飾ると思うと凄く嬉しい。
「そういえば、これ、ダイヤじゃないよね……なんていう石なの?」
「マスグラバイトだ」
「マスグラバイト……」
「ああ。山になった中に一つだけあってな、それを加工した。知られていない石だが価値はある。そこは偽装していない」
「偽装されてるのは、産地だけ?」
「ああ。さすがに外じゃマズいだろうからな。産地偽装はセバスにも見えないぞ。伝えるのは自由だ」
「うん。ありがとうお父様」
マスグラバイト、なんて宝石の名前を僕は知らなかった。
元々そこまで宝石に明るくない。
元の世界にもあるのか、それともこの世界特有なものなのかもわからない。
でも、お父様が価値があるっていうんだから相当価値のあるものなんだろうな。
少なくとも、アレックスがこれをつけて周りから侮られないくらいには価値のあるものなんだろうと思う。
「そうだ、他の石はちゃんと戻してきた?」
「いくつか加工して手元にあるぞ。付与魔法の練習用にあった方がいいだろ?」
「あ、そっか。うん、やってみたい」
「必ずしも価値のある宝石が魔力をためやすいというとそうでもないからな。
種類別にいくつか用意してある」
「黒い宝石だと、どんな石が魔力をためやすいの?」
「そうだな……黒翡翠がいい。ブラックダイヤは、そいつにやったんだろう?」
「うん」
そういってお父様は、テーブルの上にコロン、と出してきた。
ブラックダイヤと比べるんだから、それなりに価値のあるものなんだろうな。
「黒翡翠は、石その物のランクもあるが、種類にしては価値もまあそれなりにある上に、魔力を込めやすいし、闇属性との相性もいい」
「そうなんだ。ちなみに、安価でためやすいのってある?」
「ふむ……ブラックスピネルなら、お前との相性も良いし、手に入りやすい。スピネル自体は平民の髪飾りにも良く使われるくらい安価だ」
「なら、孤児院の子供たちへ贈るのも大丈夫かな?」
「ああ、問題ないぞ。足りなければ用意してやる」
「うん」
付与が上手くできるようになったら、みんなの分を作ってあげたいな。
「……来たか」
お父様の呟きと同時、扉のノック音が聞こえてセバスが入ってくる。
箱って言ってたから、前にコインを入れていたようなベルベット地の箱を思い浮かべていたんだけど、セバスが持ってきたのは見事な金細工のアンティークな宝石箱だった。
猫足なのが可愛い。
僕の手のひら分の大きさだ。
「こちらへ」
「ありがとう、セバス。綺麗でしょう?すごくアレックスに似合いそう」
「左様ですね。とても珍しい石のようですが、レン様のお色そのものでございます。アレックス様もさぞお喜びになることでしょう」
「うん。交換するまで保管してもらってもいい?」
「もちろんでございます」
目に届く場所にずっとあるのはなんだか不安だ。
誰も取りはしないのは分かってる。
でも、僕の空間に収納するんじゃなくて、ちゃんと家に保管してもらいたいって思ったんだ。
「セバス」
「はい、如何しましたか?」
「セバスには、ちゃんと伝えとこうと思って。この石の産地は、本当はエルフ族の山奥じゃなくて、お父様がそう見えるように偽装を掛けたんだって」
「……」
「そう心配せずとも大丈夫だ、誰にも分からない」
セバスが黙るのを目に、お父様が面白そうににやりと笑った。
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