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本編
-346- 今日からよろしく
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イーサン先生に診てもらってから、数日。
今日からいよいよ新しい使用人が一緒に働く。
就任式っていうのかな、ちゃんとしたものは、試用期間が空けてからになる。
それでも、今日から一緒に働くのは変わりないから、ご飯を食べて、三人が到着したタイミングで紹介することになった。
因みにヴァンは一度紹介済みだし、既に正規雇用扱いだから、新人たちに紹介する側だ。
ヴァンは、やっぱり色々と要領が良くて器用みたいで、セオのスケジュールに合わせて仕事をこなし、朝と夜ご飯は良く一緒に食べているらしい。
『一度にこなせる量を見極めかねております……』なんてあきれ顔でセバスが呟いていたから、仕事を渡してる量はかなり多いみたいだ。
セバスとセオ、それからアレックスにも相談した結果、まず僕からアレックスへ新人の紹介をすることになった。
領主であるアレックスが、その都度ひとりひとりと会話を交わしてから、使用人の食堂にみんなを集めて、そこでは改めてアレックスからみんなへ紹介する───そんな流れだ。
「あ、レン様、馬車が到着したみたいですね」
「ありがと、セオ。じゃあ、アレックス、迎えに行ってくるね」
「ああ。っと、ロビーまでにしてくれ」
「ふふっ……わかった」
そろそろ着くころかなって思ったら、セオが馬車の到着を教えてくれた。
きっと、僕はちょっとそわそわしていたと思う。
アレックスが落ち着いて紅茶を飲める貴重なこの時間、落ち着けなかったかもしれない。
だからと言って、アレックスは咎めたり、『落ち着け』なんて注意したりすることはしてこなかった。
今だって、行ってらっしゃいの言葉の代わりにさらっと流れるように口づけをくれるくらいだ。
アレックスは、アレックスの傍にいる僕に対しては、とってもとっても寛大だ。
アレックスの目に届かないところだと、心配症が発動して制限がかかる。
アレックスの許容範囲が、ようやく僕にもわかってきた。
9つも上なんだもんね、大人だ。
ううん、僕だって大人なはずで、こっちの世界なら成人してる年齢で、お酒だって許されている。
それに、えっちもだ。
イーサン先生から受け取った手紙を読んだアレックスは、それから毎日抱いてくれてる。
一緒にいる時に口付けもたくさんしてくれるし、スキンシップも変わらず多い。
『俺は正直毎日だってしたいくらいだが、レンは逆に負担じゃないか?』なんて聞いてくれた。
答えなんてわかりきってるよね、負担じゃないし僕は嬉しいけれど、毎日えっちなんていいのかな?なんて思うのは事実。
実際そう口にしたら、『毎朝ちゃんと起きて、きちんとやるべきことをすれば、爛れたりはしてないだろ?』って言ってくれた。
それに、義務感とかじゃなくてしたいからする、っていうのも口にしてくれたんだ。
アレックスは、口下手だなんて言ってるけれど、それを変えようともしてくれてる。
出来るだけ、きちんと言葉にしようって思ってくれてるみたいだ。
それがとても嬉しい。
僕の横、少し前を歩いていたセオがぴたりととまる。
何だろう?と思っていると、セオはちょっと呆れたような顔をしてきた。
「どうしたの?」
「えっちな顔になってますから、戻してください」
「え?!」
「可愛いお顔がより可愛くなってます」
「うー……」
えっちな顔ってどんな顔だよって思ったけれど、可愛いお顔がより可愛く、か。
つまるところバレバレだってことだよね、それはまずい、最初が肝心なのに。
「はい、気持ち切り替えてください。深呼吸してください」
セオに言われて三回深呼吸を繰り返したときだった。
アニーと共に、三人がロビーにやってくる。
「おはよう、三人とも。今日からよろしくね」
「おはようございます、レン様」
「おはようございます!」
「…おはようございます」
「みんなすごく似合ってるね」
みんな、僕からのお祝いで購入した新しい服を着てくれたみたいだ。
丈や裾をお直しして、すぐに家に届けられた服は、一度アレックスの手によって魔法が付与されている。
その時に僕も見学したから、見覚えがある服だ。
勿論、全部が全部付与されたわけじゃない。
普通の布地には、魔法は付与しにくく、逆に布地の強度を下げてしまうから、魔物を使った布地や、ある程度の大きさの金属ボタンがあるもの等、魔法の付与がしやすいものだけだ。
一番強化されたのはヴィオラの服だ。
僕も、ヴィオラのはこめられるだけこめてって口づけ付きでお願いしたから、制服並みの防御率になった。
因みに、制服の魔法付与もアレックスによるものらしい。
アレックスも、出来ることと出来ないことがあるみたいだけれど、防御は得意とするところなんだって。
まあそうだよね、家の防御、完璧だもん。
「レン様、素敵な服をありがとうございます」
そう言ってはにかむように笑ってくるヴィオラはとっても嬉しそうだ。
彼女の服は、アレックスが眼にしてびっくりするくらい可愛い服───ロリータ寄りのファッションだったけれど、とっても似合ってる。
ただ、仕事中は乗馬での移動が多くなると知って、今日はパンツルックだ。
お尻がふんわりした長めの南瓜パンツに、ペプラムのシャツとジャケットのセットアップで、足元は編み上げブーツ。
コートがAラインのケープコートでボリュームがあるから、コートを着たらスカートをはいているようにも思えるだろう。
可愛さの中にも品がある。
ステラは、シンプルなAラインのロングスカートだ。
ふんわりしたスカートの中には色々な武器が隠してあるに違いない。
見た目は全然分からないけれど、きっとそう。
今日は長い髪をシニヨンにしてまとめていて、とても上品で美しい。
ブルーノはすっきりしたこげ茶のパンツにジャケットで、こちらもとても品が良い。
セバスが選んだだけある。
装飾品は殆どなくてとてもシンプルだけれど、スマートに見えるし彼の骨格に合っていた。
「これから、僕がアレックスに皆を紹介した後、アレックスからエリソン侯爵邸のみんなへ紹介する流れだよ。
アレックスはとても領民思いで懐の大きい人だから、あまり身構えなくていいからね?
三人とも、僕が自信を持って紹介できるから、堂々としていて」
そう言うと、三人とも笑顔で頷いてくれたよ。
今日からいよいよ新しい使用人が一緒に働く。
就任式っていうのかな、ちゃんとしたものは、試用期間が空けてからになる。
それでも、今日から一緒に働くのは変わりないから、ご飯を食べて、三人が到着したタイミングで紹介することになった。
因みにヴァンは一度紹介済みだし、既に正規雇用扱いだから、新人たちに紹介する側だ。
ヴァンは、やっぱり色々と要領が良くて器用みたいで、セオのスケジュールに合わせて仕事をこなし、朝と夜ご飯は良く一緒に食べているらしい。
『一度にこなせる量を見極めかねております……』なんてあきれ顔でセバスが呟いていたから、仕事を渡してる量はかなり多いみたいだ。
セバスとセオ、それからアレックスにも相談した結果、まず僕からアレックスへ新人の紹介をすることになった。
領主であるアレックスが、その都度ひとりひとりと会話を交わしてから、使用人の食堂にみんなを集めて、そこでは改めてアレックスからみんなへ紹介する───そんな流れだ。
「あ、レン様、馬車が到着したみたいですね」
「ありがと、セオ。じゃあ、アレックス、迎えに行ってくるね」
「ああ。っと、ロビーまでにしてくれ」
「ふふっ……わかった」
そろそろ着くころかなって思ったら、セオが馬車の到着を教えてくれた。
きっと、僕はちょっとそわそわしていたと思う。
アレックスが落ち着いて紅茶を飲める貴重なこの時間、落ち着けなかったかもしれない。
だからと言って、アレックスは咎めたり、『落ち着け』なんて注意したりすることはしてこなかった。
今だって、行ってらっしゃいの言葉の代わりにさらっと流れるように口づけをくれるくらいだ。
アレックスは、アレックスの傍にいる僕に対しては、とってもとっても寛大だ。
アレックスの目に届かないところだと、心配症が発動して制限がかかる。
アレックスの許容範囲が、ようやく僕にもわかってきた。
9つも上なんだもんね、大人だ。
ううん、僕だって大人なはずで、こっちの世界なら成人してる年齢で、お酒だって許されている。
それに、えっちもだ。
イーサン先生から受け取った手紙を読んだアレックスは、それから毎日抱いてくれてる。
一緒にいる時に口付けもたくさんしてくれるし、スキンシップも変わらず多い。
『俺は正直毎日だってしたいくらいだが、レンは逆に負担じゃないか?』なんて聞いてくれた。
答えなんてわかりきってるよね、負担じゃないし僕は嬉しいけれど、毎日えっちなんていいのかな?なんて思うのは事実。
実際そう口にしたら、『毎朝ちゃんと起きて、きちんとやるべきことをすれば、爛れたりはしてないだろ?』って言ってくれた。
それに、義務感とかじゃなくてしたいからする、っていうのも口にしてくれたんだ。
アレックスは、口下手だなんて言ってるけれど、それを変えようともしてくれてる。
出来るだけ、きちんと言葉にしようって思ってくれてるみたいだ。
それがとても嬉しい。
僕の横、少し前を歩いていたセオがぴたりととまる。
何だろう?と思っていると、セオはちょっと呆れたような顔をしてきた。
「どうしたの?」
「えっちな顔になってますから、戻してください」
「え?!」
「可愛いお顔がより可愛くなってます」
「うー……」
えっちな顔ってどんな顔だよって思ったけれど、可愛いお顔がより可愛く、か。
つまるところバレバレだってことだよね、それはまずい、最初が肝心なのに。
「はい、気持ち切り替えてください。深呼吸してください」
セオに言われて三回深呼吸を繰り返したときだった。
アニーと共に、三人がロビーにやってくる。
「おはよう、三人とも。今日からよろしくね」
「おはようございます、レン様」
「おはようございます!」
「…おはようございます」
「みんなすごく似合ってるね」
みんな、僕からのお祝いで購入した新しい服を着てくれたみたいだ。
丈や裾をお直しして、すぐに家に届けられた服は、一度アレックスの手によって魔法が付与されている。
その時に僕も見学したから、見覚えがある服だ。
勿論、全部が全部付与されたわけじゃない。
普通の布地には、魔法は付与しにくく、逆に布地の強度を下げてしまうから、魔物を使った布地や、ある程度の大きさの金属ボタンがあるもの等、魔法の付与がしやすいものだけだ。
一番強化されたのはヴィオラの服だ。
僕も、ヴィオラのはこめられるだけこめてって口づけ付きでお願いしたから、制服並みの防御率になった。
因みに、制服の魔法付与もアレックスによるものらしい。
アレックスも、出来ることと出来ないことがあるみたいだけれど、防御は得意とするところなんだって。
まあそうだよね、家の防御、完璧だもん。
「レン様、素敵な服をありがとうございます」
そう言ってはにかむように笑ってくるヴィオラはとっても嬉しそうだ。
彼女の服は、アレックスが眼にしてびっくりするくらい可愛い服───ロリータ寄りのファッションだったけれど、とっても似合ってる。
ただ、仕事中は乗馬での移動が多くなると知って、今日はパンツルックだ。
お尻がふんわりした長めの南瓜パンツに、ペプラムのシャツとジャケットのセットアップで、足元は編み上げブーツ。
コートがAラインのケープコートでボリュームがあるから、コートを着たらスカートをはいているようにも思えるだろう。
可愛さの中にも品がある。
ステラは、シンプルなAラインのロングスカートだ。
ふんわりしたスカートの中には色々な武器が隠してあるに違いない。
見た目は全然分からないけれど、きっとそう。
今日は長い髪をシニヨンにしてまとめていて、とても上品で美しい。
ブルーノはすっきりしたこげ茶のパンツにジャケットで、こちらもとても品が良い。
セバスが選んだだけある。
装飾品は殆どなくてとてもシンプルだけれど、スマートに見えるし彼の骨格に合っていた。
「これから、僕がアレックスに皆を紹介した後、アレックスからエリソン侯爵邸のみんなへ紹介する流れだよ。
アレックスはとても領民思いで懐の大きい人だから、あまり身構えなくていいからね?
三人とも、僕が自信を持って紹介できるから、堂々としていて」
そう言うと、三人とも笑顔で頷いてくれたよ。
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