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本編
-332- キャンベル商会 アレックス視点
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「それより、アサヒを外してまで話をしたいことはなんです?ただの昔話でもないのでしょう?」
「オリバーにして察しがいいわね」
「アサヒにあそこまで言われたからこそですが」
「ああ、そう」
気持ちを切り替えるためか、再度ため息をついたコナーは、立ち上がると、鍵付きの棚を開く。
その中から小さな木箱を手にして、それを俺らの目の前、テーブルの上にそっと置いてきた。
大きさは、片手で丁度持てるくらいの大きさだ。
一般的なカード、トランプが入ってる箱と変わらない。
だが、まさかこの状態でトランプはないだろう。
すげー嫌な予感がする。
ただの木箱なら兎も角、中央の魔石が貼られてる木箱に入れるもんなんて、どんな魔法の付与がされてんだ?
もしくは魔物……なわけないか、こんなちっさい箱に何が入るというのか。
それこそ、魔法が付与されてるカードか何かか?
「開けてみて」
「嫌ですよ、こんな魔石のついた箱なんて嫌な予感しかしません。あなたが持ってきたんですから、あなたが開けて下さい」
意外にも、開けてみてと言われたのは俺じゃなく、オリバーだった。
だが、オリバーですら断るくらい怪しい箱なのには違いない。
「なら、開けるから、鑑定してもらえるかしら?とりあえず、なにかの種なのには間違いないのよ。
最初は虫の死骸かと思ったけど、植物の種っていうことまでは鑑定出来る者がいて。
でも、それ以上うちじゃ誰一人なにかわからなくて。
魔力を感じるから魔物の一種なのは確かなのだけれど。
発芽して万が一があったら困るじゃない?だからこんな箱に入れてるのよ…どう?わかる?」
そう言いながらコナーがそっと箱を開ける。
種、発芽、魔物の一種……と聞いて、最近耳にした最も嫌な植物の魔物を思い浮かべちまった。
こういうときの感というのは、なぜか働く。
良い時に働いちゃくれない、いつも悪い時に働くんだ。
危険を察知し回避出来るのだからそういう感は大事にしろ、そう言ってきたのは祖父さまだったな。
……と、懐かしさに浸りそうになってる場合じゃない。
中には、小さな茶色っぽい粒が複数入っていた。
コナーが虫の死骸というように、確かに種と言うよりは、干からびた小さな虫の死骸に見える。
となりで息を飲むオリバーは何の種か分かるんだろうな。
どんな植物であっても、例え目にしたことが無くても、植物関連ならば深く鑑定できるオリバーだ。
それは、例え魔物の植物だとしても同じこと。
「これをどこで?」
さっきとは随分違い、声に重みがある。
何の種とは言わないが、それだけでヤバいもんだってことだけわかった。
「それが分からないのよ」
「分からない?」
オリバーが聞き返すが、俺も『は?』と声に出しそうになった。
わからないってことないだろ。
どこかに落ちてただとか、誰からか受け取ったかだとか、なんかあるだろうが。
まして、こんな魔石の貼られた箱に入れておくようなもんなんだ。
「というか……覚えてないの。エマと私と副会長、それと愛斗の4人で対応したのは覚えているのよ?でもどこの誰だったかどんな顔をしていたか、女性か男性かも全く、一切、誰も覚えていないの」
「なんだそりゃ、お前の耐性スキルがあってもかかる魅了かなんかか?」
コナーは商家の長男だが、貴族の血が入っている。
隔世遺伝で魔力が高い上に、強耐性のスキル持ちだ。
ちょっとやそっとの魅了や操作系の魔法にはまず屈しないし、騙されない。
こいつを魅了するには相当な魔力量、もしくは高いスキルが必要だぞ。
どんなからくりだ?
高い魅了に相当な魔力量と言ったら───教会の連中……いやいや、ないと言いたい。
言いたいが……それしか思いつかないのは事実。
「これは、カランデュエルの種です」
「…これが?昔拷問で使われていたっていうあのカランデュエル?」
「マジか」
嫌な予感は的中だ。
けど、まさか禁忌とされてるカランデュエルの、その種が目の前にあるなんて、受け入れ難い話だろ。
だがそうすると益々教会が関係しているのを疑いたくなる。
「ええ。この種、全部で11個ありますが、もしかして12個だったのではないですか?」
「え?嘘でしょ?12個ない?蓋の裏とかに……ついてないわね……やだ、嘘、どうしましょ」
「おいおい、そりゃまずいんじゃないのか?」
何やってんだ、コナーのやつは。
「間違ってそのまま体内に入ってしまうと大変なことになります。早急に見つける方が良いかと。それと、この魔物は植物の一種ですが、今の帝国では禁忌とされていて、栽培は認められていません。
種の状態や花弁でしたら素材として黙認されています。
ですが、植え付けた瞬間に捕まりますから気を付けてください」
「はあ!?そんなものがどうしてあるのよ!?」
「あなたの商会はあなたの代でより大きくなったから…嫌がらせかもしれませんね。もしくは、警告、か。
心当たりは?特に、教会関連で」
やっぱり、そうなるよな。
俺もそう思っちまった。
コナーはびっくりした顔をするが、これは何か心当たりがあるのだろう。
「っ!なんで教会だってわかるの?」
「教会が使ってるんですよ、魔道具に植え付けてるんですカランデュエルを……犯罪ですね、黒ですよ」
「まさか、神器様の魔道具に?」
「ええ……一部の、ですが」
「正確には、レンの、だ。闇属性のレンの貞操具に使われていた。一歩遅かったらレンの命はなかったというのが、オリバーの見立てだ」
オリバーが濁してくるのは、俺のためだろう。
まあ、コナーになら隠す必要はない。
「……とりあえずこれ以上無くしたら大変なことになるわ」
そう呟いき、もう一度種の数を数えてからコナーは木箱の蓋をした。
確かに、この小ささじゃ、うっかり息を吹きかけちまっただけでどこかに飛んでいきそうだ。
箱に蓋がされたことに、少しだけほっとしちまうくらいだ。
オリバーも似たような気持ちになっていただろう。
だがそこにコナーは衝撃的な台詞を吐いてきた。
「教会に、商会の息のかかった人間を一年前から数名送り込んでたのよ。先月から全員連絡がとれなくなったの」
「オリバーにして察しがいいわね」
「アサヒにあそこまで言われたからこそですが」
「ああ、そう」
気持ちを切り替えるためか、再度ため息をついたコナーは、立ち上がると、鍵付きの棚を開く。
その中から小さな木箱を手にして、それを俺らの目の前、テーブルの上にそっと置いてきた。
大きさは、片手で丁度持てるくらいの大きさだ。
一般的なカード、トランプが入ってる箱と変わらない。
だが、まさかこの状態でトランプはないだろう。
すげー嫌な予感がする。
ただの木箱なら兎も角、中央の魔石が貼られてる木箱に入れるもんなんて、どんな魔法の付与がされてんだ?
もしくは魔物……なわけないか、こんなちっさい箱に何が入るというのか。
それこそ、魔法が付与されてるカードか何かか?
「開けてみて」
「嫌ですよ、こんな魔石のついた箱なんて嫌な予感しかしません。あなたが持ってきたんですから、あなたが開けて下さい」
意外にも、開けてみてと言われたのは俺じゃなく、オリバーだった。
だが、オリバーですら断るくらい怪しい箱なのには違いない。
「なら、開けるから、鑑定してもらえるかしら?とりあえず、なにかの種なのには間違いないのよ。
最初は虫の死骸かと思ったけど、植物の種っていうことまでは鑑定出来る者がいて。
でも、それ以上うちじゃ誰一人なにかわからなくて。
魔力を感じるから魔物の一種なのは確かなのだけれど。
発芽して万が一があったら困るじゃない?だからこんな箱に入れてるのよ…どう?わかる?」
そう言いながらコナーがそっと箱を開ける。
種、発芽、魔物の一種……と聞いて、最近耳にした最も嫌な植物の魔物を思い浮かべちまった。
こういうときの感というのは、なぜか働く。
良い時に働いちゃくれない、いつも悪い時に働くんだ。
危険を察知し回避出来るのだからそういう感は大事にしろ、そう言ってきたのは祖父さまだったな。
……と、懐かしさに浸りそうになってる場合じゃない。
中には、小さな茶色っぽい粒が複数入っていた。
コナーが虫の死骸というように、確かに種と言うよりは、干からびた小さな虫の死骸に見える。
となりで息を飲むオリバーは何の種か分かるんだろうな。
どんな植物であっても、例え目にしたことが無くても、植物関連ならば深く鑑定できるオリバーだ。
それは、例え魔物の植物だとしても同じこと。
「これをどこで?」
さっきとは随分違い、声に重みがある。
何の種とは言わないが、それだけでヤバいもんだってことだけわかった。
「それが分からないのよ」
「分からない?」
オリバーが聞き返すが、俺も『は?』と声に出しそうになった。
わからないってことないだろ。
どこかに落ちてただとか、誰からか受け取ったかだとか、なんかあるだろうが。
まして、こんな魔石の貼られた箱に入れておくようなもんなんだ。
「というか……覚えてないの。エマと私と副会長、それと愛斗の4人で対応したのは覚えているのよ?でもどこの誰だったかどんな顔をしていたか、女性か男性かも全く、一切、誰も覚えていないの」
「なんだそりゃ、お前の耐性スキルがあってもかかる魅了かなんかか?」
コナーは商家の長男だが、貴族の血が入っている。
隔世遺伝で魔力が高い上に、強耐性のスキル持ちだ。
ちょっとやそっとの魅了や操作系の魔法にはまず屈しないし、騙されない。
こいつを魅了するには相当な魔力量、もしくは高いスキルが必要だぞ。
どんなからくりだ?
高い魅了に相当な魔力量と言ったら───教会の連中……いやいや、ないと言いたい。
言いたいが……それしか思いつかないのは事実。
「これは、カランデュエルの種です」
「…これが?昔拷問で使われていたっていうあのカランデュエル?」
「マジか」
嫌な予感は的中だ。
けど、まさか禁忌とされてるカランデュエルの、その種が目の前にあるなんて、受け入れ難い話だろ。
だがそうすると益々教会が関係しているのを疑いたくなる。
「ええ。この種、全部で11個ありますが、もしかして12個だったのではないですか?」
「え?嘘でしょ?12個ない?蓋の裏とかに……ついてないわね……やだ、嘘、どうしましょ」
「おいおい、そりゃまずいんじゃないのか?」
何やってんだ、コナーのやつは。
「間違ってそのまま体内に入ってしまうと大変なことになります。早急に見つける方が良いかと。それと、この魔物は植物の一種ですが、今の帝国では禁忌とされていて、栽培は認められていません。
種の状態や花弁でしたら素材として黙認されています。
ですが、植え付けた瞬間に捕まりますから気を付けてください」
「はあ!?そんなものがどうしてあるのよ!?」
「あなたの商会はあなたの代でより大きくなったから…嫌がらせかもしれませんね。もしくは、警告、か。
心当たりは?特に、教会関連で」
やっぱり、そうなるよな。
俺もそう思っちまった。
コナーはびっくりした顔をするが、これは何か心当たりがあるのだろう。
「っ!なんで教会だってわかるの?」
「教会が使ってるんですよ、魔道具に植え付けてるんですカランデュエルを……犯罪ですね、黒ですよ」
「まさか、神器様の魔道具に?」
「ええ……一部の、ですが」
「正確には、レンの、だ。闇属性のレンの貞操具に使われていた。一歩遅かったらレンの命はなかったというのが、オリバーの見立てだ」
オリバーが濁してくるのは、俺のためだろう。
まあ、コナーになら隠す必要はない。
「……とりあえずこれ以上無くしたら大変なことになるわ」
そう呟いき、もう一度種の数を数えてからコナーは木箱の蓋をした。
確かに、この小ささじゃ、うっかり息を吹きかけちまっただけでどこかに飛んでいきそうだ。
箱に蓋がされたことに、少しだけほっとしちまうくらいだ。
オリバーも似たような気持ちになっていただろう。
だがそこにコナーは衝撃的な台詞を吐いてきた。
「教会に、商会の息のかかった人間を一年前から数名送り込んでたのよ。先月から全員連絡がとれなくなったの」
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