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本編
-310- ジョーカー
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「ありがとう、セバス。それと、トランプ持ってきてもらっても良い?」
「トランプ……ですか」
「うん」
「承知しました」
パタンと静かに扉が閉まる。
「ヴァン、ここ座っていいよ」
所在なげなヴァンに、ここに座って良いと立ち上がったソファを指さしてから窓際にあった椅子を持ち上げると、ぎょっとした顔でソファの背を軽々と超えてくる。
それを見たセオがすくっと立ち上がってこちらにやってくるのが分かった。
「俺がこちらで構いません。どちらへ移動しますか?」
持ち上げた椅子をヴァンに取られる。
こういうところは紳士的なようだ。
「ありがとう、ソファの対面にお願い。セオとレナードも自分の椅子ソファのところに持ってきて」
「分かりました」
セオはヴァンをちらりと見やってから、安心したように笑みをひき、自分が座っていた椅子をソファの方へ持ってくる。
レナードもしぶしぶこちらへやってきた。
同じ位置に使用人は座らないって言っていたけれど、今日は無礼講だ。
それぞれ座るように促すけれど、誰も文句は言わなかった。
レナードもヴァンも居心地は悪そうだ。
夕食の時間までになんとか雰囲気を和らげたい。
「まずは、ヴァン。さっきはごめんね。気が付かない間に圧が出ちゃった。体調は大丈夫?」
「え……あ、はい。大丈夫です。態と、じゃなかったんですか」
「即興のつもりだったんだ。圧も初めてだった」
「マジかよ」
「言葉!」
マジかよと呟いたヴァンに、セオがすかさずツッコミを入れてくる。
それを嬉しそうに見るあたり、もう完全に頭がセオで出来てるようだ。
レナードがイラついた顔を露わにする。
「はい、どうぞ───ありがとう、セバス。夕食になったら呼びに来てもらっても良い?」
「畏まりました」
セバスがトランプを持ってやってきた。
僕らを見て何も言わなかったから、今日は見逃すってことだろう。
「トランプなんてどうするんです?」
レナードが怪訝そうな顔で僕に問うてくる。
どうするんです?ってどうするかなんてやる以外にない。
「ん?交流を深めようと思って」
「は?」
「この位置取りでレナードが僕に勝つことがあったら、レナードに何かご褒美をあげる」
「俺にも何かください」
「っおい!」
「その方がやる気出るんで」
レナードの返事より、ヴァンの返事の方が先だった。
ヴァンのご褒美か……ま、一つだよね。
「わかった。じゃあ、ヴァンが僕に勝ったら今日だけセオのところに泊っていいよ」
「っちょ、レン様ー」
「俄然やる気出ました」
困り顔だけれどどこか嬉しそうなセオと、良い笑顔でにっこりと笑うヴァン、レナードはイラついた顔で僕を見てくる。
まずは、この位置取りでジョーカー、ババ抜きをする。
トランプをしながら、話もする。
レナードには良い訓練になるし、交流もちょっとは深まるはずだ。
この世界にもトランプはあって、遊び方もほとんど一緒だ。
でも、子どもの遊びではなく、大人の賭けごととしての遊びに使われるみたい。
「レン様、こいつ、透視使えますよ?」
「うん、知ってる」
「いいんですか?」
「うん、いいよ?」
ヴァンに透視を使うな、とは言わなかった。
言わなかったってことはいいよってことなんだけれど、確認してきたのはレナードだった。
意味が分からないというように僕を見てくる。
「まっすぐですね、あんた」
レナードを目にして、面白そうにくつくつとヴァンが笑う。
そんなヴァンをイラついた表情そのままレナードが睨みつける。
印象が対照的な、真逆な二人だ。
使うなって言ったってヴァンは使ってくるはずだ。
ならば、最初から使うこと前提で進めたほうが楽しめる。
ジョーカーは運も左右されるし、この並びじゃあ、絶対レナードには負けない自信がある。
セオがヴァンからとって、僕がセオからとる。
そして、僕のカードをレナードがとって、レナードのカードをヴァンがとる。
僕の手札にはジョーカーがない。
ヴァンがジョーカーを持っていたとしたら、セオが上がるまで動かさない気だ。
ゲームだとしても、セオを勝たせるはず。
っていうのは、ヴァンが一番になったら、じゃなくて、僕に勝ったら、という賭けだからだ。
そして、セオが持っていそうなら僕はセオのジョーカーを態と取るつもりでいる。
レナードを負かせるためだ。
そして、ヴァンは何が何でも僕に勝ちたいはずだから、レナードがジョーカーを持っていた場合、セオを上がらせた後で態とジョーカーを引いてくるはずだ。
そして、僕にジョーカーを持たせるために、色々とひっかけや工夫をしてくるはず。
リスクをおかしても、必ず勝ちを取りに来るだろう。
僕も引かないと面白くないから何回は引くつもりだし、引いたら引いたで、レナードにどうにかしてジョーカーを引かせて、ぎりぎりまで粘るつもりでいる。
手札が3~4枚ほどになってからが、上がりの勝負だ。
これに気が付いているのは、ヴァンと僕と……セオも、だろうなあ。
レナードは全く気が付いてなさそう。
カードの手札は順調に減っていき、半分程になった。
そろそろ動きがあっても良さそうだ。
「ちょ……なんだよ、抜けないじゃん」
「セオさんには別のを引いて欲しいな。その隣とか良いと思うよ、あ、逆逆」
「お前なー……」
ヴァンが良い笑顔でセオを促す。
あきれ顔で言う通りのカードをセオが引いて、セオが手札を捨てる。
ただ単にセオの手札がないカードだったってこともあるけれど、レナードもセオも自分が引くときだけを意識してることを考えると、今ジョーカーを持ってるのはヴァンだろうな。
さっき、セオが引こうとしたカードが、ジョーカーだろう。
「レン様ー、これ、俺が有利すぎると思うんですけど」
「セオはご褒美ないもん。あ、上がったらセオはヴァンと一緒にいてね」
「え?」
「あー……うん、まあ、うん、居て欲しい、ですね」
セオを抱えるヴァンは、ハンデだ。
顔に出るセオがヴァンと一緒に手札を見ていたら、僕がちょっとだけ有利になる。
透視が出来るからこその読み方もあるけれど、更にセオを加えたらより読みやすい。
そして、別の人間の傍にセオを居させたくないヴァンは、わかっていてもセオを取る。
「ヴァンはさあ、今頭の中9割以上セオで出来てるでしょ?残りのちょっぴりが仕事で」
「否定はしませんね」
「それ、1ヶ月後には7割まで落としてね?誰も取らないし、前より傍にいるんだから」
「えー……自信ないです」
「余裕のない男は嫌われるよ?」
「え?!」
ヴァンの、レナードのカードを引く手が止まる。
「おい、早く引け」
「………」
「セオさんは、俺を嫌わないです」
「まあ……でも、俺は、お前にもうちょびっと別のことにも興味を持って欲しいよ」
「え?……あ゛それ駄目!」
悲しそうな顔でセオを見るヴァンは、一瞬気を抜いたのだろう。
セオがカードを引き抜くと同時叫ぶが、ちょっと遅かった。
セオがカードを目にして無言で良く切ってくる。
「お前ねー、こんな時でも俺を優先してどうすんの」
「いいんです、俺はいつでもセオさんを優先にしたいんです。っていうか、ご褒美がどうしても欲しいんです」
「トランプ……ですか」
「うん」
「承知しました」
パタンと静かに扉が閉まる。
「ヴァン、ここ座っていいよ」
所在なげなヴァンに、ここに座って良いと立ち上がったソファを指さしてから窓際にあった椅子を持ち上げると、ぎょっとした顔でソファの背を軽々と超えてくる。
それを見たセオがすくっと立ち上がってこちらにやってくるのが分かった。
「俺がこちらで構いません。どちらへ移動しますか?」
持ち上げた椅子をヴァンに取られる。
こういうところは紳士的なようだ。
「ありがとう、ソファの対面にお願い。セオとレナードも自分の椅子ソファのところに持ってきて」
「分かりました」
セオはヴァンをちらりと見やってから、安心したように笑みをひき、自分が座っていた椅子をソファの方へ持ってくる。
レナードもしぶしぶこちらへやってきた。
同じ位置に使用人は座らないって言っていたけれど、今日は無礼講だ。
それぞれ座るように促すけれど、誰も文句は言わなかった。
レナードもヴァンも居心地は悪そうだ。
夕食の時間までになんとか雰囲気を和らげたい。
「まずは、ヴァン。さっきはごめんね。気が付かない間に圧が出ちゃった。体調は大丈夫?」
「え……あ、はい。大丈夫です。態と、じゃなかったんですか」
「即興のつもりだったんだ。圧も初めてだった」
「マジかよ」
「言葉!」
マジかよと呟いたヴァンに、セオがすかさずツッコミを入れてくる。
それを嬉しそうに見るあたり、もう完全に頭がセオで出来てるようだ。
レナードがイラついた顔を露わにする。
「はい、どうぞ───ありがとう、セバス。夕食になったら呼びに来てもらっても良い?」
「畏まりました」
セバスがトランプを持ってやってきた。
僕らを見て何も言わなかったから、今日は見逃すってことだろう。
「トランプなんてどうするんです?」
レナードが怪訝そうな顔で僕に問うてくる。
どうするんです?ってどうするかなんてやる以外にない。
「ん?交流を深めようと思って」
「は?」
「この位置取りでレナードが僕に勝つことがあったら、レナードに何かご褒美をあげる」
「俺にも何かください」
「っおい!」
「その方がやる気出るんで」
レナードの返事より、ヴァンの返事の方が先だった。
ヴァンのご褒美か……ま、一つだよね。
「わかった。じゃあ、ヴァンが僕に勝ったら今日だけセオのところに泊っていいよ」
「っちょ、レン様ー」
「俄然やる気出ました」
困り顔だけれどどこか嬉しそうなセオと、良い笑顔でにっこりと笑うヴァン、レナードはイラついた顔で僕を見てくる。
まずは、この位置取りでジョーカー、ババ抜きをする。
トランプをしながら、話もする。
レナードには良い訓練になるし、交流もちょっとは深まるはずだ。
この世界にもトランプはあって、遊び方もほとんど一緒だ。
でも、子どもの遊びではなく、大人の賭けごととしての遊びに使われるみたい。
「レン様、こいつ、透視使えますよ?」
「うん、知ってる」
「いいんですか?」
「うん、いいよ?」
ヴァンに透視を使うな、とは言わなかった。
言わなかったってことはいいよってことなんだけれど、確認してきたのはレナードだった。
意味が分からないというように僕を見てくる。
「まっすぐですね、あんた」
レナードを目にして、面白そうにくつくつとヴァンが笑う。
そんなヴァンをイラついた表情そのままレナードが睨みつける。
印象が対照的な、真逆な二人だ。
使うなって言ったってヴァンは使ってくるはずだ。
ならば、最初から使うこと前提で進めたほうが楽しめる。
ジョーカーは運も左右されるし、この並びじゃあ、絶対レナードには負けない自信がある。
セオがヴァンからとって、僕がセオからとる。
そして、僕のカードをレナードがとって、レナードのカードをヴァンがとる。
僕の手札にはジョーカーがない。
ヴァンがジョーカーを持っていたとしたら、セオが上がるまで動かさない気だ。
ゲームだとしても、セオを勝たせるはず。
っていうのは、ヴァンが一番になったら、じゃなくて、僕に勝ったら、という賭けだからだ。
そして、セオが持っていそうなら僕はセオのジョーカーを態と取るつもりでいる。
レナードを負かせるためだ。
そして、ヴァンは何が何でも僕に勝ちたいはずだから、レナードがジョーカーを持っていた場合、セオを上がらせた後で態とジョーカーを引いてくるはずだ。
そして、僕にジョーカーを持たせるために、色々とひっかけや工夫をしてくるはず。
リスクをおかしても、必ず勝ちを取りに来るだろう。
僕も引かないと面白くないから何回は引くつもりだし、引いたら引いたで、レナードにどうにかしてジョーカーを引かせて、ぎりぎりまで粘るつもりでいる。
手札が3~4枚ほどになってからが、上がりの勝負だ。
これに気が付いているのは、ヴァンと僕と……セオも、だろうなあ。
レナードは全く気が付いてなさそう。
カードの手札は順調に減っていき、半分程になった。
そろそろ動きがあっても良さそうだ。
「ちょ……なんだよ、抜けないじゃん」
「セオさんには別のを引いて欲しいな。その隣とか良いと思うよ、あ、逆逆」
「お前なー……」
ヴァンが良い笑顔でセオを促す。
あきれ顔で言う通りのカードをセオが引いて、セオが手札を捨てる。
ただ単にセオの手札がないカードだったってこともあるけれど、レナードもセオも自分が引くときだけを意識してることを考えると、今ジョーカーを持ってるのはヴァンだろうな。
さっき、セオが引こうとしたカードが、ジョーカーだろう。
「レン様ー、これ、俺が有利すぎると思うんですけど」
「セオはご褒美ないもん。あ、上がったらセオはヴァンと一緒にいてね」
「え?」
「あー……うん、まあ、うん、居て欲しい、ですね」
セオを抱えるヴァンは、ハンデだ。
顔に出るセオがヴァンと一緒に手札を見ていたら、僕がちょっとだけ有利になる。
透視が出来るからこその読み方もあるけれど、更にセオを加えたらより読みやすい。
そして、別の人間の傍にセオを居させたくないヴァンは、わかっていてもセオを取る。
「ヴァンはさあ、今頭の中9割以上セオで出来てるでしょ?残りのちょっぴりが仕事で」
「否定はしませんね」
「それ、1ヶ月後には7割まで落としてね?誰も取らないし、前より傍にいるんだから」
「えー……自信ないです」
「余裕のない男は嫌われるよ?」
「え?!」
ヴァンの、レナードのカードを引く手が止まる。
「おい、早く引け」
「………」
「セオさんは、俺を嫌わないです」
「まあ……でも、俺は、お前にもうちょびっと別のことにも興味を持って欲しいよ」
「え?……あ゛それ駄目!」
悲しそうな顔でセオを見るヴァンは、一瞬気を抜いたのだろう。
セオがカードを引き抜くと同時叫ぶが、ちょっと遅かった。
セオがカードを目にして無言で良く切ってくる。
「お前ねー、こんな時でも俺を優先してどうすんの」
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