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本編
-300- ヴァン=リトルトン
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今までずっと諜報ギルドで首位にいたのに、あっさり捨てて面談を受けにきたくらい、セオの傍に居たかったんだろうな。
「じゃあ、1分間でアピールをお願いします」
この質問は、予定になかった。
なかったけど、セオはともかく、レナードの表情は厳しいままだし、セバスもずっと複雑そうな顔をしてるんだもん。
1分間で何ができるか、覆るのかはわからないけど、僕自身が、もう少しヴァンのことを知っておきたい。
因みに。アニーは、セオとヴァンを交互に見合っては微笑ましい笑みさえ浮かべているから、全く問題無さそうだ。
「恋人が、目の下にくまが出来てヘロヘロになりながら会いに来てくれても、泣き言や文句をひとつも言えない状態を作っていたのは、私自身です。
同じ立場であれば、それも叶うでしょうし、共有し合える……何より、傍で支えとなりたいのです。
そのために、手に入れるべきものを手に入れ、長年執着していたものを手放し、ここへ来ました。
私利私欲と言われれば、そうかもしれません。
ですが、調査事には、誰よりも迅速に確かな情報を手に入れてみせます。
毎回諜報ギルドを頼るより遥かにお買い得でしょうし、私がそれらを引き受ければ、セオさんがレン様のお傍を離れることも格段に減るでしょう。
今よりも物事がスムーズに流れるはずです。
本当の意味で信頼を得るには、それなりの時間がかかるものだとわかっていますが、その時がなるべく早く訪れるよう、全力で応じます。
どうか、よろしくお願いします」
「ありがとう」
綺麗なお辞儀を最後に、ぼくがお礼で答えると、ヴァンはゆっくりと顔を顔を上げてきた。
その表情に、不安は一切見られない。
けれど、一瞬少し驚いた顔をした後で、柔らかな笑みを浮かべてきた。
「僕はこれで最後だけど、セバスからは何かある?」
「いいえ、特には」
「アニーは?」
「私も大丈夫です」
「じゃあ、後で一時面談の合否を伝えるから、他の人が終わるまで少しお待たせしちゃうけど、それまでヴァンには食堂で自由に休んで貰うね。イアン、あ、うちのコンフェなのだけど、彼の作ったお菓子を用意してるんだ。美味しいから是非食べて」
「ありがとうございます」
「レナード、案内よろしくね」
「……畏まりました」
レナードはまだ納得してないみたいだ。
言いたいことを飲み込んだのがわかった。
予想はなんとなくついてる。
セバスはどうかな?
何だか複雑そうな顔をまだしてる。
アニーは……うん、少女めいて頬を染めてるから、きっと感動してるんだろうな。
セオは顔を両手で覆って天井を仰いでる。
レナードが戻ってきたら、セオをヴァンのところに行かせてあげたい。
次の面談までは、もともと間が空いていたからまだ時間があるし、レナードもセオがいたら言いたいことも言いにくいかもしれない。
セオのためでもあり、レナードのためでもあるし。
それに、セバスの複雑な顔をしている理由も知りたい。
きっと、セオの前じゃ言葉にしづらいことだ。
「素敵ねえ。愛されてますね、セオ」
ヴァンが出て行って、一番最初に口を開いたのは、アニーだ。
セオは真っ赤になったままだ。
「アニーさん、これ以上言わないでいいからー!
もー、なんで堂々と言ってのけるかな、怖いものないのってくらい。
あー、あのバカ、何で言わないんだよ、もー…レン様、すみません」
「ううん、謝らないでーーーあ、はい、どうぞ」
きちんと扉がノックされて、僕が返事をした後でそっと扉が開く。
さて、レナードが戻ってきた。
セオの耳には届いちゃうと思うけれど、配慮って大事だよね。
「セオ、まだ次の面談まで時間があるから、ヴァンのところに行ってきて?」
「レン様、まだ合否も出ていないうちからそのようなーーー」
セバスが口を挟んでくるし、レナードの顔はもっと険しくなる。
けどこのままじゃ、支障が出そうだっていうか、今、すでに色々出てる。
「でも、面談を受けるの聞いてなかったんでしょ?貴族籍のことは?」
「初めて知りました」
「なら、行ってきて?言いたいことたくさんあるでしょ?」
「……」
「セバス、次の面談まであとどのくらいある?」
「少し押しましたが、20分はあります」
「なら、15分だけ。ね?行ってきて?始まる5分前に戻ってくればいいから。
今の顔のままじゃ、次の面談に来た人がセオに惚れられたって誤解しちゃうかもしれないもん」
「うー……すみません、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
セオはその場を逃げるように、それでも風のスキルを使うことなくそそくさと部屋を出ていく。
「レン様、私は納得がいきません!」
扉が閉まると同時、レナードが厳しい視線と言葉を僕に向けてきた。
くるぞくるぞーって思ってたら、本当にきた。
「何が可笑しいのです?笑い事じゃありません」
む、笑ってないけれど笑いをこらえたのがバレてる。
だって、予想通り過ぎるんだもん。
「ごめん。だって、言ってくるぞ言ってくるぞーって思ってたら、そーらきたーって感じでタイミングばっちりだったから、つい」
「っ!?」
でも、意見があるなら遠慮なく言って欲しいし、僕も僕の思うことをちゃんと伝えたい。
まずはレナードの意見をちゃんと聞くために、僕は居住まいを正して、口を開いた。
「じゃあ、1分間でアピールをお願いします」
この質問は、予定になかった。
なかったけど、セオはともかく、レナードの表情は厳しいままだし、セバスもずっと複雑そうな顔をしてるんだもん。
1分間で何ができるか、覆るのかはわからないけど、僕自身が、もう少しヴァンのことを知っておきたい。
因みに。アニーは、セオとヴァンを交互に見合っては微笑ましい笑みさえ浮かべているから、全く問題無さそうだ。
「恋人が、目の下にくまが出来てヘロヘロになりながら会いに来てくれても、泣き言や文句をひとつも言えない状態を作っていたのは、私自身です。
同じ立場であれば、それも叶うでしょうし、共有し合える……何より、傍で支えとなりたいのです。
そのために、手に入れるべきものを手に入れ、長年執着していたものを手放し、ここへ来ました。
私利私欲と言われれば、そうかもしれません。
ですが、調査事には、誰よりも迅速に確かな情報を手に入れてみせます。
毎回諜報ギルドを頼るより遥かにお買い得でしょうし、私がそれらを引き受ければ、セオさんがレン様のお傍を離れることも格段に減るでしょう。
今よりも物事がスムーズに流れるはずです。
本当の意味で信頼を得るには、それなりの時間がかかるものだとわかっていますが、その時がなるべく早く訪れるよう、全力で応じます。
どうか、よろしくお願いします」
「ありがとう」
綺麗なお辞儀を最後に、ぼくがお礼で答えると、ヴァンはゆっくりと顔を顔を上げてきた。
その表情に、不安は一切見られない。
けれど、一瞬少し驚いた顔をした後で、柔らかな笑みを浮かべてきた。
「僕はこれで最後だけど、セバスからは何かある?」
「いいえ、特には」
「アニーは?」
「私も大丈夫です」
「じゃあ、後で一時面談の合否を伝えるから、他の人が終わるまで少しお待たせしちゃうけど、それまでヴァンには食堂で自由に休んで貰うね。イアン、あ、うちのコンフェなのだけど、彼の作ったお菓子を用意してるんだ。美味しいから是非食べて」
「ありがとうございます」
「レナード、案内よろしくね」
「……畏まりました」
レナードはまだ納得してないみたいだ。
言いたいことを飲み込んだのがわかった。
予想はなんとなくついてる。
セバスはどうかな?
何だか複雑そうな顔をまだしてる。
アニーは……うん、少女めいて頬を染めてるから、きっと感動してるんだろうな。
セオは顔を両手で覆って天井を仰いでる。
レナードが戻ってきたら、セオをヴァンのところに行かせてあげたい。
次の面談までは、もともと間が空いていたからまだ時間があるし、レナードもセオがいたら言いたいことも言いにくいかもしれない。
セオのためでもあり、レナードのためでもあるし。
それに、セバスの複雑な顔をしている理由も知りたい。
きっと、セオの前じゃ言葉にしづらいことだ。
「素敵ねえ。愛されてますね、セオ」
ヴァンが出て行って、一番最初に口を開いたのは、アニーだ。
セオは真っ赤になったままだ。
「アニーさん、これ以上言わないでいいからー!
もー、なんで堂々と言ってのけるかな、怖いものないのってくらい。
あー、あのバカ、何で言わないんだよ、もー…レン様、すみません」
「ううん、謝らないでーーーあ、はい、どうぞ」
きちんと扉がノックされて、僕が返事をした後でそっと扉が開く。
さて、レナードが戻ってきた。
セオの耳には届いちゃうと思うけれど、配慮って大事だよね。
「セオ、まだ次の面談まで時間があるから、ヴァンのところに行ってきて?」
「レン様、まだ合否も出ていないうちからそのようなーーー」
セバスが口を挟んでくるし、レナードの顔はもっと険しくなる。
けどこのままじゃ、支障が出そうだっていうか、今、すでに色々出てる。
「でも、面談を受けるの聞いてなかったんでしょ?貴族籍のことは?」
「初めて知りました」
「なら、行ってきて?言いたいことたくさんあるでしょ?」
「……」
「セバス、次の面談まであとどのくらいある?」
「少し押しましたが、20分はあります」
「なら、15分だけ。ね?行ってきて?始まる5分前に戻ってくればいいから。
今の顔のままじゃ、次の面談に来た人がセオに惚れられたって誤解しちゃうかもしれないもん」
「うー……すみません、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
セオはその場を逃げるように、それでも風のスキルを使うことなくそそくさと部屋を出ていく。
「レン様、私は納得がいきません!」
扉が閉まると同時、レナードが厳しい視線と言葉を僕に向けてきた。
くるぞくるぞーって思ってたら、本当にきた。
「何が可笑しいのです?笑い事じゃありません」
む、笑ってないけれど笑いをこらえたのがバレてる。
だって、予想通り過ぎるんだもん。
「ごめん。だって、言ってくるぞ言ってくるぞーって思ってたら、そーらきたーって感じでタイミングばっちりだったから、つい」
「っ!?」
でも、意見があるなら遠慮なく言って欲しいし、僕も僕の思うことをちゃんと伝えたい。
まずはレナードの意見をちゃんと聞くために、僕は居住まいを正して、口を開いた。
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