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本編
-273- 香水
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「シアバターだけのは……いいえ、もうなにも言わないわ」
「ん?」
「これから冬になるとより乾燥しますから。
お肌の調子を見つつ、赤いりんごのを使った後に使用します。
お顔だけじゃなくて全身使えますし、香りもないので」
「そっか。……セオのお任せでもいい?」
「勿論です」
赤いりんごはシアバターが配合されているみたいだから、そこにシアバターを足すっていうのは理解できるよ?
でも、お肌の調子を見つつっていうのが、申し訳ないけれど自分じゃいまいちわからない。
それから、セオは日焼け止めも2種類選んでくれた。
どちらも香り成分のないもので、日差しが強い時や長時間外に出かける時に使うものと、ちょっと外に出る時に使うものと、使い分けるみたい。
そういえば、母さんも日焼け止めは3種類を使い分けていたっけ。
母さんの場合は、そこに、海外用が加わってた。
海外の日差しは、日本の日差しと違うらしかった。
「日焼け止めは効果が高いほどお肌の負担にはなりやすいですから、使い分けましょう。
都度塗りなおせばきちんと効果はあるはずですから」
「わかった」
「……ねえ、私よりセオ様の方が販売に向いてるんじゃない?」
「何言ってんの。俺が勧めてるのはレン様だからですよ」
「ふふっ」
呆れ気味に言うマリアンさんだったけれど、ちゃんと香り成分のないものまで用意してくれていたのはマリアンさん自身だ。
マリアンさんにそのことを聞けば、基礎化粧品は香りが飛ぶけれど、日焼け止めは塗りなおすことを考えると香水との相性も考える人もいるんだって。
香水と合うものや同じ香りのものを使う人もいるみたいだけれど、色々な香水を気分によって変える人は、日焼け止めは香料のないものを選ぶ人もいるみたい。
「では、最後に香水です。
数種類ご用意させていただきましたが、いかがですか?」
「香水か……んー……セオ、香水って、身だしなみというかマナーとしてつけなくちゃいけないときってある?」
「いいえ、ありませんよ。ただ、相手を印象づけるのには使えます」
「そっか。んー……」
確かに、香りは、見た目だけじゃなくて印象に残るものだ。
視覚だけじゃなくて、嗅覚というのも記憶に残りやすいのかもしれない。
ただ、香りは難しいっていうのも理解してる。
自分にとっていい香りであっても、相手にとっていい香りとは限らないからだ。
薔薇の香りが好きな人もいれば苦手な人もいるだろうし、甘い香りが好きな人もいればそうじゃない人もいるはず。
良い印象を与えるなら兎も角、逆に悪い印象を与えかねないし、その判断は初対面では出来ないものだ。
「どれもとても良い香りですよ?」
マリアンさんに勧められて、ペーパーにつけて貰った香りを嗅がせてもらう。
マリアンさんが用意してくれた香りは5つ。
どれもすごく上品で、とっても高貴な香りがする。
でも、やっぱり香水だ、5つとも結構香りが強い。
一度しゅっとペーパーにつけて貰っただけだけれど、部屋全体が香りに包まれてる感じがする。
時間を経過すれば香りは変わるだろうけれど、これだとずっと香りが残るはず。
「すごくいい香りなんだけれど、僕には必要ない気がする」
「……失礼を承知で、理由をお聞きしても?」
「うん、勿論」
せっかくマリアンさんが僕のためにと5つ用意してくれたものだ。
全てが要らないってなると、その理由を聞きたいのは当たり前だ。
「まず、普段は香水をつけられない。
何でかっていうと、理由の一つは、気軽にテンに会えなくなっちゃうから。
あ、テンっていうのは、アレックスの馬ね?
凄くかっこいい馬で優しいんだ。
馬は香水が苦手でしょう?
だから、テンに会う時や乗せてもらう時はつけたくないんだ」
「確かに馬車なら兎も角、乗馬をされるなら香水は邪魔になりますね」
「うん。あと、僕は気軽に厨房にも顔を出すんだけれど、香水をしていたらそれも出来ないでしょう?
暫く香りがその場に残るだろうし、料理の邪魔になっちゃう」
「はい」
「それと、僕にとっていい香りでも、誰かにとって苦手な時もあると思うんだ。
僕はここにきて日が浅いし、会う人会う人初めてになる。
僕の印象を、香りで左右されたくないんだ。
それにーーー」
一番の理由は、アレックスだ。
「一番いい香りでありたい人はアレックスだけれど、僕はアレックスの神器だから、すでに凄くいい香りがするんだって。
誉め言葉の表現じゃなくて、物理的に」
マリアンさんが驚いたように目を丸くする。
え?そうなの?って感じだろうな。
他の人には香らないんだもん。
「だから、アレックスにしたら、そのいい香りに別の香りを足すことになるでしょう?
アレックスにしかわからないし、どの香りが合うのかもわからないから」
「非礼をお許しください」
「ううん、非礼だなんて全く思ってないよ?
折角僕にって選んでくれたのに、どれも突っぱねちゃってごめんね。
あ、でも待って……セオ、セオは必要だと思う?」
僕が要らないと思っていても、セオが必要だと思えば一つ購入した方が良いかもしれないと思い立つ。
「いいえ、俺も必要ないなと思います。
レン様は見た目だけでどなたにも負けないほどの強い印象をすでにお持ちですし。それにーーー」
「それに?」
「ジュードが、めちゃくちゃ香水苦手なんですよねー、香りに限らず」
「そうなの?その情報は先に欲しかったよ」
「あー……すみません。通常使用人に合わせる必要なんて全くないんですけど、レン様は合わせますよね」
「え?だってアレックスの傍にいなきゃならないのに、その傍にいる僕が常に苦手な香りを放ってたら苦痛以外のなにものでもないでしょ?
そんなの嫌だよ」
「ですよねー、すみません。今度からちゃんとお伝えします」
「うん。よろしくね。
ーーーやっぱり香水は、僕にとって必要のないものみたい」
「そのようですわね」
マリアンさんは、僕とセオのやり取りを見て柔らかく笑って頷いてくれたよ。
「ん?」
「これから冬になるとより乾燥しますから。
お肌の調子を見つつ、赤いりんごのを使った後に使用します。
お顔だけじゃなくて全身使えますし、香りもないので」
「そっか。……セオのお任せでもいい?」
「勿論です」
赤いりんごはシアバターが配合されているみたいだから、そこにシアバターを足すっていうのは理解できるよ?
でも、お肌の調子を見つつっていうのが、申し訳ないけれど自分じゃいまいちわからない。
それから、セオは日焼け止めも2種類選んでくれた。
どちらも香り成分のないもので、日差しが強い時や長時間外に出かける時に使うものと、ちょっと外に出る時に使うものと、使い分けるみたい。
そういえば、母さんも日焼け止めは3種類を使い分けていたっけ。
母さんの場合は、そこに、海外用が加わってた。
海外の日差しは、日本の日差しと違うらしかった。
「日焼け止めは効果が高いほどお肌の負担にはなりやすいですから、使い分けましょう。
都度塗りなおせばきちんと効果はあるはずですから」
「わかった」
「……ねえ、私よりセオ様の方が販売に向いてるんじゃない?」
「何言ってんの。俺が勧めてるのはレン様だからですよ」
「ふふっ」
呆れ気味に言うマリアンさんだったけれど、ちゃんと香り成分のないものまで用意してくれていたのはマリアンさん自身だ。
マリアンさんにそのことを聞けば、基礎化粧品は香りが飛ぶけれど、日焼け止めは塗りなおすことを考えると香水との相性も考える人もいるんだって。
香水と合うものや同じ香りのものを使う人もいるみたいだけれど、色々な香水を気分によって変える人は、日焼け止めは香料のないものを選ぶ人もいるみたい。
「では、最後に香水です。
数種類ご用意させていただきましたが、いかがですか?」
「香水か……んー……セオ、香水って、身だしなみというかマナーとしてつけなくちゃいけないときってある?」
「いいえ、ありませんよ。ただ、相手を印象づけるのには使えます」
「そっか。んー……」
確かに、香りは、見た目だけじゃなくて印象に残るものだ。
視覚だけじゃなくて、嗅覚というのも記憶に残りやすいのかもしれない。
ただ、香りは難しいっていうのも理解してる。
自分にとっていい香りであっても、相手にとっていい香りとは限らないからだ。
薔薇の香りが好きな人もいれば苦手な人もいるだろうし、甘い香りが好きな人もいればそうじゃない人もいるはず。
良い印象を与えるなら兎も角、逆に悪い印象を与えかねないし、その判断は初対面では出来ないものだ。
「どれもとても良い香りですよ?」
マリアンさんに勧められて、ペーパーにつけて貰った香りを嗅がせてもらう。
マリアンさんが用意してくれた香りは5つ。
どれもすごく上品で、とっても高貴な香りがする。
でも、やっぱり香水だ、5つとも結構香りが強い。
一度しゅっとペーパーにつけて貰っただけだけれど、部屋全体が香りに包まれてる感じがする。
時間を経過すれば香りは変わるだろうけれど、これだとずっと香りが残るはず。
「すごくいい香りなんだけれど、僕には必要ない気がする」
「……失礼を承知で、理由をお聞きしても?」
「うん、勿論」
せっかくマリアンさんが僕のためにと5つ用意してくれたものだ。
全てが要らないってなると、その理由を聞きたいのは当たり前だ。
「まず、普段は香水をつけられない。
何でかっていうと、理由の一つは、気軽にテンに会えなくなっちゃうから。
あ、テンっていうのは、アレックスの馬ね?
凄くかっこいい馬で優しいんだ。
馬は香水が苦手でしょう?
だから、テンに会う時や乗せてもらう時はつけたくないんだ」
「確かに馬車なら兎も角、乗馬をされるなら香水は邪魔になりますね」
「うん。あと、僕は気軽に厨房にも顔を出すんだけれど、香水をしていたらそれも出来ないでしょう?
暫く香りがその場に残るだろうし、料理の邪魔になっちゃう」
「はい」
「それと、僕にとっていい香りでも、誰かにとって苦手な時もあると思うんだ。
僕はここにきて日が浅いし、会う人会う人初めてになる。
僕の印象を、香りで左右されたくないんだ。
それにーーー」
一番の理由は、アレックスだ。
「一番いい香りでありたい人はアレックスだけれど、僕はアレックスの神器だから、すでに凄くいい香りがするんだって。
誉め言葉の表現じゃなくて、物理的に」
マリアンさんが驚いたように目を丸くする。
え?そうなの?って感じだろうな。
他の人には香らないんだもん。
「だから、アレックスにしたら、そのいい香りに別の香りを足すことになるでしょう?
アレックスにしかわからないし、どの香りが合うのかもわからないから」
「非礼をお許しください」
「ううん、非礼だなんて全く思ってないよ?
折角僕にって選んでくれたのに、どれも突っぱねちゃってごめんね。
あ、でも待って……セオ、セオは必要だと思う?」
僕が要らないと思っていても、セオが必要だと思えば一つ購入した方が良いかもしれないと思い立つ。
「いいえ、俺も必要ないなと思います。
レン様は見た目だけでどなたにも負けないほどの強い印象をすでにお持ちですし。それにーーー」
「それに?」
「ジュードが、めちゃくちゃ香水苦手なんですよねー、香りに限らず」
「そうなの?その情報は先に欲しかったよ」
「あー……すみません。通常使用人に合わせる必要なんて全くないんですけど、レン様は合わせますよね」
「え?だってアレックスの傍にいなきゃならないのに、その傍にいる僕が常に苦手な香りを放ってたら苦痛以外のなにものでもないでしょ?
そんなの嫌だよ」
「ですよねー、すみません。今度からちゃんとお伝えします」
「うん。よろしくね。
ーーーやっぱり香水は、僕にとって必要のないものみたい」
「そのようですわね」
マリアンさんは、僕とセオのやり取りを見て柔らかく笑って頷いてくれたよ。
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