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本編

-221- 大満足のフルコース

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「前菜は、うさぎのパテドカンパーニュでございます」
「わ……凄く可愛い!ボックスフラワーみたい」
「……これも初めて見るな。うさぎはどこいった?」

うさぎはどこいった?なんて少しまぬけな声を出したアレックスだけれど、見た目はボックスフラワーみたいに綺麗なんだ。
大きさは10センチもない。
目測で、7~8センチってところだと思う。
正方形にかたどられて、あの星形の青いちいさなお花や、グリーンサラダ、あとソテーされてる小さなトウモロコシだとかが彩綺麗に配置されてる。
たくさんの種類があるから花畑というよりも、もっと自然な感じだけれど、綺麗に見えるから計算されてるんだろうなあ。
良く見ると、その下に薄く茶色の層がみえる。
この茶色部分が、うさぎのパテかな?
花咲く草原の一番きれいな部分を切り取ったみたいな感じだ。

「この青い花はなんていうの?お茶請けにも出てきたよね?」
「はい、エンゼルボリジと言いまして、ボリジが魔物化したものです」
「魔物化……動いたりするの?」

魔物化っていわれると、どうしても襲ってきたり動いたり、意志を持ってるイメージだ。
けれど、僕の言葉にアレックスもセバスも、くすりと笑いを漏らす。

「や、動いたりはしないぞ。ボリジは元々作られていたんだが、一年草で春にしかとれなかったからな。
これは、基本一年中取れるし、普通のボリジより小ぶりだが発育が早い上に発色も甘さも強いんだ。
持ちもいいから、うちでは良くつかわれてるな」
「そうなんだ。すごく可愛い花だね」

動かないみたいだ。
魔物化の概念がことごとく覆されてく。
馬も乳牛も魔物って言われないとわからないくらいだもんね。
魔物化されたものば、僕が考えてるよりずっとたくさんあるみたい。
渚君が言っていたヒュージオリーブっていうオリーブ油も魔物みたいだし。

「うさぎのお肉は、元の世界だと国柄一般的じゃなかったんだけれど、良く食べられるの?旭さんのところでも出たよね?」
「ああ、うちだと鶏肉と同じくらいには出回ってるな。養兎されてるから庶民にも手に入りやすいし、でかいしな、安価だ」
「大きいの?」
「レンが抱えられないくらいにはデカいな」
「それも魔物?」
「あれは魔物じゃなくて、最初からそういうもんだと思う」
「そんなに大きいのはみたことないや。でも安価で手に入りやすいなら、いいお肉だね、とても美味しいし」

パティも臭みが全然なくて、爽やかなハーブが効いててとても美味しい。
元の世界だと、豚とか鴨のパティを食べたことあるけれど、やっぱり独特の臭みがあった。
あまり得意じゃなかったけれど、これは全然別物だ。

あと食べたことあるのは、牛のパティ。
牛のパティっていったら、もう別物だ、ハンバーガー。
そうなると、がっつり肉の味に、負けないくらいの香辛料だとか味の濃さで、ジャンクになる。

見た目だけじゃないし、想像できる味じゃないところが凄い。
でも、ちゃんと野菜は野菜の、お肉はお肉のうまみというか、風味はちゃんとある。
かかってるドレッシングソースは色はついてないけれど、柑橘系のすっきりした好きな味だ。
控えめに言って、美味しい。

「元の世界だと鶏肉の他には豚や牛が多かったよ。
あとは、ちょっと珍しいけど、羊肉も普通に売ってたかな」
「うちの領では、豚や牛の肉は手に入りづらいが、食べたいときには買って帰るから言ってくれ」
「ん?」
「仕事前に帝都の市場によれば簡単に手に入る」

なるほど。うちの領にはなかなか出回っていないけれど、帝都の市場だと売ってるみたいだ。
えー?でもアレックスは帝都で働いているとはいえ、侯爵様だよ?
転移があるからひょいっと行けるんだろうし、収納魔法があるからなんの無理もないんだろうけれど、簡単にほいほい市場に行っちゃっていい立場なのかな?
それも、自身で買い付けちゃうなんて……あ、あんまりよくないみたいだ、セバスが変な顔してる。

「僕は特別豚と牛が好きなわけじゃないから、大丈夫だよ。
豚と牛よりも、エリソン侯爵領でとれたものとか、伝統的なものとかの方が興味あるかな」
「そうか?」
「うん、アレックスが特別好じゃないならとくには」

これは本当だ。
肉の種類よりも、エリソン侯爵領の地元ならではの料理とか、伝統的なものに興味がある。
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