214 / 440
本編
-214- お茶の時間
しおりを挟む
お茶は、コンサバトリーですることになった。
今日もいい天気だし、日差しがあたたかい。
普通、こんなに日差しが注がれていたら暑くなりそうだけれど、そこは調整されてるんだと思う。
旭さんたちがいるところの帝都の別邸もとても居心地がいい場所だった。
ここの本邸だって負けてないくらいに居心地が良くて、僕はとても気に入ってる。
「ふえぇ、ここも凄いね!」
「凄くいい場所だよね」
僕のとなりにアレックスが座り、僕の目の前には渚君が、その横にお父さまが座る。
当然、アレックスの目の前が、お父さまだ。
「失礼いたします」
セバスと、その後ろからワゴンを押すイアンが入ってくる。
イアンはかなり緊張気味だ。
慣れないことをさせているっていのは自覚してる。
僕が今出来ることは、普段通りの笑顔で見守るだけだ。
三時のお茶の時間は、いつもの通りセバスが入れてくれる。
今日も、とてもいい香りが空間に広がった。
さっきセオが入れてくれたお茶とはまた違って、濃厚なしっとりとした重さのある紅茶の香りだ。
茶葉とティーカップは、いつもその時々で一番合うものをセバスが選んでくれている。
今日は4客揃ったティーカップで、繊細なアイビーの蔦がカップにもソーサーにも描かれているものだ。
柔らかい曲線を描いていて、取っ手はとても細いけれど、持ちやすいようにか、親指をかけるところがついてるデザインだ。
今日のも凄く綺麗。
最初にコトンと、お父さまの前にプレートが置かれる。
次に渚君、そして僕、最後にアレックスだ。
時計と逆回り。
順番はきっとセバスの指示だろうけれど、座り方のせいもあると思う。
アレックスは、僕を優先されて最後に置かれても、気にしなさそうだ。
今日も凄く繊細で綺麗だ。
渚君も目を丸くしてるくらい、凄く綺麗。
綺麗だけじゃなくて、絶対美味しいんだけれど。
揃いの白地のお皿で、アイビーの蔦が描かれている薄くて丸いお皿に、チョコレートムースとショコラかな?
オレンジのソースや二種のクリーム、オレンジピールのチョコレートが添えられていてとても洗練されてる。
アイビーの曲線が彩を添えるように盛られていて、ムースもショコラもチョコレートも全て曲線だ。
本当に、美味しいを追及するイアンだけれど、その美的感覚も凄いと思う。
「イアン、今日もすごく綺麗で美味しそうだね!」
「ありがとうございます」
「今日は、ムースとショコラ?」
「はい、チョコレートムースとショコラです。オレンジのソースとクリームと合わせてご一緒にお召し上がりください」
イアンはいつもより緊張気味だけれど、僕が普段通りに笑顔で話しかけたら少しだけ安心した顔を向けてくれた。
「いただきます」
「凄ー……いただきまーす」
僕と渚君がいただきますを口にするのを合図に、4人が各々口にする。
僕は、チョコレートのムースから頂いた。
すっごく美味しい!
濃厚なのに甘すぎないし、オレンジの少しだけ酸味のあるソースも甘い生クリームとオレンジのクリームもとってもあってる!
どちらかというと、チョコレートと柑橘系の組み合わせはあまり好みじゃなかったんだ。
チョコレートなら、ナッツやキャラメルの方が好きだった。
何度か口にしたことがあるけど、全て重くて濃厚で激甘のチョコレートと香りの強いオレンジが合わせてあるものだったからかもしれない。
「美味しい!濃厚なのに甘すぎなくてオレンジのソースとクリームともとてもあってる。
柑橘系とチョコレートの組み合わせは向こうの世界で食べた時は、あまり好きになれなかったけれど、これはとっても美味しいね!凄く好きな味」
「気に入って頂けて良かった!ショコラもどうぞ、こちらはアレックス様がお好きなショコラです」
「そうなの?」
「ああ、オレンジとチョコのショコラは好きだが……こうやって出されるのは初めてだ。今日も気合が入ってるな」
美味しそうに笑顔なアレックスだけれど、こうやって出されるっていうのは、綺麗に飾って出されるってことかな?
美味いとも言わないけれど、アレックスの笑顔にイアンも嬉しそうだ。
うん、ショコラも美味しい!こっちも甘すぎないのに濃厚なんだけれど、後味はどこかさっぱりしてるから重すぎない。
もちろん、クリームとソースにも合ってる。
「ショコラもとっても美味しい!濃厚なのに重すぎなくてどこかさっぱりしてるからいっぱい食べられちゃう」
「良かった!けどいっぱいは駄目ですよ」
「ふふっ……あ、渚君、紹介するね。このエリソン侯爵邸のコンフェを務めるイアンだよ」
いつものイアンが見られたから、だんだんと緊張も解けてきたかなってところで、渚君に声をかける。
渚君は、幸せそうにムースとショコラを交互に食べてた。
「凄く美味しいです!こんなにおいしくて綺麗なドルチェを作る人から教われるんだから僕はとても幸運です!
とくにこのオレンジのクリーム、カスタードじゃないのに軽くて滑らかだ。どうやって合わせてるのか……びっくりです!あ、中村渚です!ナギサ=ナカムラか、ナギサでお願いします!」
びっくりした顔をして嬉しそうに渚君は頷いてきた。
対するイアンも、びっくり顔だ。
「やあ……こんなにお若い方とは思わず。レン様、本当にいいんですか?厨房には俺とマーティンの二人ですよ?
マーティンの倅もその内二人来ますよ?」
「ん?でも、厨房はそれでも全然広いでしょう?」
「いやいやいや、そういうんじゃないですよ!むっさい男四人と、こんなキラキラした少年が一緒でいいのかって話です!」
「っふふ」
「っぷ」
イアンの言い方がとっても可笑しくて、僕と渚君が一緒に噴出しちゃう。
すると、今まで何も言わなかったお父さまから声がかかった。
お父さまのお皿の上は、すでに綺麗さっぱり胃の中に納まったようだ。
いつの間に?早いけれど、お皿が綺麗すぎるくらいなところを見ると口にはあってたんだと思う。
「や、大丈夫だ。渚一人で厨房に立たせる気はない。こっちからは精霊を一人つける」
「精霊……」
イアンがさっきよりももっとびっくりした顔でお父さまを見つめた。
僕も多少は驚いてるけど、妖精のおはぎに会ったばかりだ。猫の姿で、話もできて、魔法も使える。それと比べたら、精霊の1人や2人同じ感覚だ。
アレックスはどうかな?とアレックスを見上げる。
わー……アレックスも驚いている!
アレックスは、驚きに少しだけ口が開いたままお父さまを見つめていた。
今日もいい天気だし、日差しがあたたかい。
普通、こんなに日差しが注がれていたら暑くなりそうだけれど、そこは調整されてるんだと思う。
旭さんたちがいるところの帝都の別邸もとても居心地がいい場所だった。
ここの本邸だって負けてないくらいに居心地が良くて、僕はとても気に入ってる。
「ふえぇ、ここも凄いね!」
「凄くいい場所だよね」
僕のとなりにアレックスが座り、僕の目の前には渚君が、その横にお父さまが座る。
当然、アレックスの目の前が、お父さまだ。
「失礼いたします」
セバスと、その後ろからワゴンを押すイアンが入ってくる。
イアンはかなり緊張気味だ。
慣れないことをさせているっていのは自覚してる。
僕が今出来ることは、普段通りの笑顔で見守るだけだ。
三時のお茶の時間は、いつもの通りセバスが入れてくれる。
今日も、とてもいい香りが空間に広がった。
さっきセオが入れてくれたお茶とはまた違って、濃厚なしっとりとした重さのある紅茶の香りだ。
茶葉とティーカップは、いつもその時々で一番合うものをセバスが選んでくれている。
今日は4客揃ったティーカップで、繊細なアイビーの蔦がカップにもソーサーにも描かれているものだ。
柔らかい曲線を描いていて、取っ手はとても細いけれど、持ちやすいようにか、親指をかけるところがついてるデザインだ。
今日のも凄く綺麗。
最初にコトンと、お父さまの前にプレートが置かれる。
次に渚君、そして僕、最後にアレックスだ。
時計と逆回り。
順番はきっとセバスの指示だろうけれど、座り方のせいもあると思う。
アレックスは、僕を優先されて最後に置かれても、気にしなさそうだ。
今日も凄く繊細で綺麗だ。
渚君も目を丸くしてるくらい、凄く綺麗。
綺麗だけじゃなくて、絶対美味しいんだけれど。
揃いの白地のお皿で、アイビーの蔦が描かれている薄くて丸いお皿に、チョコレートムースとショコラかな?
オレンジのソースや二種のクリーム、オレンジピールのチョコレートが添えられていてとても洗練されてる。
アイビーの曲線が彩を添えるように盛られていて、ムースもショコラもチョコレートも全て曲線だ。
本当に、美味しいを追及するイアンだけれど、その美的感覚も凄いと思う。
「イアン、今日もすごく綺麗で美味しそうだね!」
「ありがとうございます」
「今日は、ムースとショコラ?」
「はい、チョコレートムースとショコラです。オレンジのソースとクリームと合わせてご一緒にお召し上がりください」
イアンはいつもより緊張気味だけれど、僕が普段通りに笑顔で話しかけたら少しだけ安心した顔を向けてくれた。
「いただきます」
「凄ー……いただきまーす」
僕と渚君がいただきますを口にするのを合図に、4人が各々口にする。
僕は、チョコレートのムースから頂いた。
すっごく美味しい!
濃厚なのに甘すぎないし、オレンジの少しだけ酸味のあるソースも甘い生クリームとオレンジのクリームもとってもあってる!
どちらかというと、チョコレートと柑橘系の組み合わせはあまり好みじゃなかったんだ。
チョコレートなら、ナッツやキャラメルの方が好きだった。
何度か口にしたことがあるけど、全て重くて濃厚で激甘のチョコレートと香りの強いオレンジが合わせてあるものだったからかもしれない。
「美味しい!濃厚なのに甘すぎなくてオレンジのソースとクリームともとてもあってる。
柑橘系とチョコレートの組み合わせは向こうの世界で食べた時は、あまり好きになれなかったけれど、これはとっても美味しいね!凄く好きな味」
「気に入って頂けて良かった!ショコラもどうぞ、こちらはアレックス様がお好きなショコラです」
「そうなの?」
「ああ、オレンジとチョコのショコラは好きだが……こうやって出されるのは初めてだ。今日も気合が入ってるな」
美味しそうに笑顔なアレックスだけれど、こうやって出されるっていうのは、綺麗に飾って出されるってことかな?
美味いとも言わないけれど、アレックスの笑顔にイアンも嬉しそうだ。
うん、ショコラも美味しい!こっちも甘すぎないのに濃厚なんだけれど、後味はどこかさっぱりしてるから重すぎない。
もちろん、クリームとソースにも合ってる。
「ショコラもとっても美味しい!濃厚なのに重すぎなくてどこかさっぱりしてるからいっぱい食べられちゃう」
「良かった!けどいっぱいは駄目ですよ」
「ふふっ……あ、渚君、紹介するね。このエリソン侯爵邸のコンフェを務めるイアンだよ」
いつものイアンが見られたから、だんだんと緊張も解けてきたかなってところで、渚君に声をかける。
渚君は、幸せそうにムースとショコラを交互に食べてた。
「凄く美味しいです!こんなにおいしくて綺麗なドルチェを作る人から教われるんだから僕はとても幸運です!
とくにこのオレンジのクリーム、カスタードじゃないのに軽くて滑らかだ。どうやって合わせてるのか……びっくりです!あ、中村渚です!ナギサ=ナカムラか、ナギサでお願いします!」
びっくりした顔をして嬉しそうに渚君は頷いてきた。
対するイアンも、びっくり顔だ。
「やあ……こんなにお若い方とは思わず。レン様、本当にいいんですか?厨房には俺とマーティンの二人ですよ?
マーティンの倅もその内二人来ますよ?」
「ん?でも、厨房はそれでも全然広いでしょう?」
「いやいやいや、そういうんじゃないですよ!むっさい男四人と、こんなキラキラした少年が一緒でいいのかって話です!」
「っふふ」
「っぷ」
イアンの言い方がとっても可笑しくて、僕と渚君が一緒に噴出しちゃう。
すると、今まで何も言わなかったお父さまから声がかかった。
お父さまのお皿の上は、すでに綺麗さっぱり胃の中に納まったようだ。
いつの間に?早いけれど、お皿が綺麗すぎるくらいなところを見ると口にはあってたんだと思う。
「や、大丈夫だ。渚一人で厨房に立たせる気はない。こっちからは精霊を一人つける」
「精霊……」
イアンがさっきよりももっとびっくりした顔でお父さまを見つめた。
僕も多少は驚いてるけど、妖精のおはぎに会ったばかりだ。猫の姿で、話もできて、魔法も使える。それと比べたら、精霊の1人や2人同じ感覚だ。
アレックスはどうかな?とアレックスを見上げる。
わー……アレックスも驚いている!
アレックスは、驚きに少しだけ口が開いたままお父さまを見つめていた。
44
お気に入りに追加
1,079
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
αなのに、αの親友とできてしまった話。
おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。
嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。
魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。
だけれど、春はαだった。
オメガバースです。苦手な人は注意。
α×α
誤字脱字多いかと思われますが、すみません。
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる