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本編
-213- 義理の父親
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セバスとセオと僕の三人で客間に戻って、渚君とお父さまに三時のお茶の時間ときに、コンフェのイアンを紹介することを伝えたよ。
セバスはその後、セオにいくつか指示を出してから、すぐに部屋を出て行った。
「今日は、二人は何時までいられるの?」
うん、これはもっと最初に聞いておくべきだったな。
それによって、使用人たちの動きも変わってくる。
たぶん、念のために夕食もお泊りも出来るようにアニーが指示を出してくれているだろうけれども。
仕事において、そうなってもいいように対応してくれと言われるのと、そうなったから対応してくれと言われるのとじゃ全然違うもん。
代役として出られるように今から台詞を覚えてくれって言われるのと、代役になったから今から台詞を覚えてくれって言われるのとじゃ、後者の方が気持ち的にも気合が入る。
役者として例えるのはどうかなって思うけれど、気持ち的な部分は変わらないと思うんだ。
「そうだな……渚、いつまでいたい?泊りでもいいぞ」
「ぅえ!?っいきなりお泊りは迷惑だよ!それに、夕飯の下ごしらえしちゃったよ?」
「そこは、あまり気にしなくていいぞ」
「えー……でも、今日は夕飯はうちで食べようよ」
「わかった。なら、17時ごろに帰るのでいいか?」
「うん。……蓮君、今度是非僕らと一緒にご飯食べてくれる?」
「うん、勿論」
ご飯は渚君が作ってるのか。
にしても、お父さまは渚君優先に動いてるんだなあ。
かなり自由人な方だけれど、自分本位で動くんじゃなくて渚君の意見を優先してるのは、お父さまにとって渚君はとても大切な存在なんだと思う。
二人からは、旭さんとオリバーさんのような甘い感じは全くしない。
「ふえぇ!推しとご飯!」
「大げさだな、渚は」
「ルカにはわかんないかもだけど、すっごいことなの!」
「そーかそーか、良かったな」
「もー」
「ふふっ」
でも、やり取りが微笑ましくて、とてもいい関係だっていうのはよくわかる。
「お話し中失礼します。レン様、アレックス様がおかえりになりました。今こちらに向かわれてますよ」
「そっか、ありがとう、セオ」
セオがそっと僕に告げてくれる。
お父さまと渚君の前だからか、セオはちょっと余所行きというか、いつもより対応が丁寧っていうか、気を遣ってる感じがする。
僕はもっといつものフランクさのある、さっきセバスと一緒に話していた時みたいな自然な感じで良いんだけれどなあ。
これからはお父さまも渚君も定期的に来られるから、その中で少しずつ慣れてくれると嬉しいな。
「おかえりなさい、アレックス」
「ただいま」
いつもと同じように出迎えて、いつもと同じようにアレックスの『ただいま』と、優しく緩やかな抱擁と口づけ。
オレンジの甘くすっきりした香りの口づけだ。
「ヒュ~やるねえ、お前」
「ほわああ」
アレックスのこの行為に気恥ずかしさがあったけれど、少しは慣れてきた……と思ったところで、お父さまの冷やかしと渚君の感動するような声が重なった。
とたん、恥ずかしさで頬が熱くなる。
僕を揶揄ったんじゃなくて、アレックスを揶揄ったんだけれど、そんな風に言われると僕が恥ずかしいよ。
渚君にとっては、“推しの蓮君“のキスシーンなのかもしれない。
ちらりとお父さまと渚君に目を向けると、お父さまはにやにやしてるし、渚君は顔を真っ赤にして喜んでる。
「……師匠、勘弁してください」
アレックスが呆れたようにぼそりと呟いた。
お父さまはとてもいい笑顔になる。
アレックスで楽しんでるみたいだ。
「なんだ、その言い草は。
それより、来てやったのに警報ならすとは随分な歓迎だったぞ」
「だから、勘弁してくださいって。師匠の魔力は登録してますよ、神出鬼没でも信頼してます。
今までと同様、自由に出入りしてもらって構いません。
けど、そちらの神器様の魔力は登録外なんですよ、屋敷の者を驚かさないでください」
「ふん……お前もセバスも相変わらずだ」
アレックスのこういう態度は初めてで新鮮だ。
お父さま、お師匠さまが相手だと、こういう感じなんだ。
お父さまは、口では色々と悪態ついてるけれど、すごく嬉しそうだなあ。
アレックスも、だ。
「お久しぶりです、師匠。レンの養子と俺との結婚、双方の助力に感謝します」
「ああ、良い良い、好きでやったことだ。にしても、お前は相変わらず俺に対して言葉が固いな」
満足そうに笑うお父さまに、アレックスも口元に笑みを浮かべる。
あ、今、ちょっとわかったかも。
きっと、お父さまは僕じゃなくても、たとえどんな人であっても、アレックスの望んだ人の後ろ盾になったはずだ。
アレックスのお師匠さまっていう関係だけじゃなくて、アレックスの義理のお父さまを望んだんだと思う。
渚君を見るのとも、僕を見るのとも違った瞳で、お父さまはアレックスを優しく見つめていた。
セバスはその後、セオにいくつか指示を出してから、すぐに部屋を出て行った。
「今日は、二人は何時までいられるの?」
うん、これはもっと最初に聞いておくべきだったな。
それによって、使用人たちの動きも変わってくる。
たぶん、念のために夕食もお泊りも出来るようにアニーが指示を出してくれているだろうけれども。
仕事において、そうなってもいいように対応してくれと言われるのと、そうなったから対応してくれと言われるのとじゃ全然違うもん。
代役として出られるように今から台詞を覚えてくれって言われるのと、代役になったから今から台詞を覚えてくれって言われるのとじゃ、後者の方が気持ち的にも気合が入る。
役者として例えるのはどうかなって思うけれど、気持ち的な部分は変わらないと思うんだ。
「そうだな……渚、いつまでいたい?泊りでもいいぞ」
「ぅえ!?っいきなりお泊りは迷惑だよ!それに、夕飯の下ごしらえしちゃったよ?」
「そこは、あまり気にしなくていいぞ」
「えー……でも、今日は夕飯はうちで食べようよ」
「わかった。なら、17時ごろに帰るのでいいか?」
「うん。……蓮君、今度是非僕らと一緒にご飯食べてくれる?」
「うん、勿論」
ご飯は渚君が作ってるのか。
にしても、お父さまは渚君優先に動いてるんだなあ。
かなり自由人な方だけれど、自分本位で動くんじゃなくて渚君の意見を優先してるのは、お父さまにとって渚君はとても大切な存在なんだと思う。
二人からは、旭さんとオリバーさんのような甘い感じは全くしない。
「ふえぇ!推しとご飯!」
「大げさだな、渚は」
「ルカにはわかんないかもだけど、すっごいことなの!」
「そーかそーか、良かったな」
「もー」
「ふふっ」
でも、やり取りが微笑ましくて、とてもいい関係だっていうのはよくわかる。
「お話し中失礼します。レン様、アレックス様がおかえりになりました。今こちらに向かわれてますよ」
「そっか、ありがとう、セオ」
セオがそっと僕に告げてくれる。
お父さまと渚君の前だからか、セオはちょっと余所行きというか、いつもより対応が丁寧っていうか、気を遣ってる感じがする。
僕はもっといつものフランクさのある、さっきセバスと一緒に話していた時みたいな自然な感じで良いんだけれどなあ。
これからはお父さまも渚君も定期的に来られるから、その中で少しずつ慣れてくれると嬉しいな。
「おかえりなさい、アレックス」
「ただいま」
いつもと同じように出迎えて、いつもと同じようにアレックスの『ただいま』と、優しく緩やかな抱擁と口づけ。
オレンジの甘くすっきりした香りの口づけだ。
「ヒュ~やるねえ、お前」
「ほわああ」
アレックスのこの行為に気恥ずかしさがあったけれど、少しは慣れてきた……と思ったところで、お父さまの冷やかしと渚君の感動するような声が重なった。
とたん、恥ずかしさで頬が熱くなる。
僕を揶揄ったんじゃなくて、アレックスを揶揄ったんだけれど、そんな風に言われると僕が恥ずかしいよ。
渚君にとっては、“推しの蓮君“のキスシーンなのかもしれない。
ちらりとお父さまと渚君に目を向けると、お父さまはにやにやしてるし、渚君は顔を真っ赤にして喜んでる。
「……師匠、勘弁してください」
アレックスが呆れたようにぼそりと呟いた。
お父さまはとてもいい笑顔になる。
アレックスで楽しんでるみたいだ。
「なんだ、その言い草は。
それより、来てやったのに警報ならすとは随分な歓迎だったぞ」
「だから、勘弁してくださいって。師匠の魔力は登録してますよ、神出鬼没でも信頼してます。
今までと同様、自由に出入りしてもらって構いません。
けど、そちらの神器様の魔力は登録外なんですよ、屋敷の者を驚かさないでください」
「ふん……お前もセバスも相変わらずだ」
アレックスのこういう態度は初めてで新鮮だ。
お父さま、お師匠さまが相手だと、こういう感じなんだ。
お父さまは、口では色々と悪態ついてるけれど、すごく嬉しそうだなあ。
アレックスも、だ。
「お久しぶりです、師匠。レンの養子と俺との結婚、双方の助力に感謝します」
「ああ、良い良い、好きでやったことだ。にしても、お前は相変わらず俺に対して言葉が固いな」
満足そうに笑うお父さまに、アレックスも口元に笑みを浮かべる。
あ、今、ちょっとわかったかも。
きっと、お父さまは僕じゃなくても、たとえどんな人であっても、アレックスの望んだ人の後ろ盾になったはずだ。
アレックスのお師匠さまっていう関係だけじゃなくて、アレックスの義理のお父さまを望んだんだと思う。
渚君を見るのとも、僕を見るのとも違った瞳で、お父さまはアレックスを優しく見つめていた。
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