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本編
-198- 洗浄具*
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セオは聞き上手だ。
一方的に根掘り葉掘り聞きだすんじゃないし、必要な情報だけを聞き出して次、ってわけでもない。
セオ自身のことは、聞かないと喋らないけれど、僕自身のことを聞かれてばかりって感じもしない。
リラックスした状態で、近しい人と日常会話を楽しんでいる感じがすでに出来上がってる。
セオの人柄なんだろうけれど、それってすごいことだと思う。
「季節ごとのイベントとか、その季節にしか味わえない、食べ物ややることも好きだよ」
「お芋掘りもとても楽しそうでしたもんね。年末年始もお祝いがありますし、来年の春にはお花見もしましょうね」
「うん。あとは、ダンスと歌とピアノは続けたいな、体術はセオから教えてもらうからいいとしてーー」
「見てからですー、まだ教えるって決定してませんー」
「もーわかってるよ。あ、ダンスは先生を呼んでくれるって言ってたけれど」
「ええ、打診中ですから決まったらお教えしますね」
「ありがとう」
僕が習ってきたダンスとは違うだろうけれど、アレックスと共にいて相応しいダンスを踊れるようになりたい。
ただでさえ、ぽっと出の、降ってわいた得体のしれない、神器様っていう存在なんだもん。
僕が、生粋の貴族男性だったらともかくとして、さ。
それに、闇属性のアレックスが結婚した相手、だ。
良くも悪くも注目されること間違いなしだ。
逆手にとって、印象を良くして、立場を有利にしておきたい。
「レン様、逆にやりたくないことってないんですか?苦手なこととか、物とか、これだけはご免だーってこと」
「え?やりたくないこと?うーん……」
「ほら、なんかあるでしょー?」
やりたくないことか……って何があるかな?
「意識の問題かもしれないけれど、苦手だとしてもやらなきゃならないことだって出てくるかもしれないでしょ?
立場上のこともだし、ここで暮らしていくためのことも。
そういう時に、逃げたくないんだ。
だから、それはもう、やりたくないんじゃなくて、やってみたいって言うんだと思うんだよね」
「……レン様は本当にいい子ですねえ」
「そうかな?あ、でも……うん。アレックスの嫌がることとか悲しむことはしたくないな。
それは、例え必要であってもやりたくない。
やらなくてすむ別の方法を考える」
「なるほど」
「答えになってる?」
「ええ、十分です。……あ、アレックス様帰ってきたみたいですね。
爺さまと話されてますが、すぐに、このままこちらに向かわれると思いますよ」
「わかった……あれ?」
「どうしました?」
「ねー、セオ、綺麗にしましょうって言ってたけど、浄化じゃいけないの?」
「んー……浄化だと全部取り去ってしまう可能性もありますからね、普通に洗浄具で綺麗にしましょ」
「え……シャワーとかじゃなくて?」
「お湯そのものよりお体の負担も少ないです」
洗浄具ってなに?って思ってると、こういうのです、と物を見せてくれる。
ナイトポーションのようにとくに装飾品はなくて、ただの真っ白な針のない注射器みたいに見える。
なんていうか、どっちかっていうと医薬品みたいな感じだ。
太さは人差し指一本分くらいで、てのひらに納まる大きさだった。
「これ、どうやってどうなるの?お尻の中に入れるんだよね?」
「ええ、押し出すと、中の洗浄液とスポンジが出るので、それで洗う感じですね。
その後、こちらで洗い流します」
そう言って、もう一つコトリと置かれたのは、大きな浣腸みたいな瓶だ。
えー……なんか怖い、あんまりやりたくない。
「これ使わないといけないの?」
「痛くないですよ?沁みたりもしません」
「でも……じゃあ、自分でやる」
「使い方わかります?」
「………」
そんなのわからないよ、初めて見たんだし。
でも、今セオが言ったようにやればなんとかなるものじゃないの?
僕が自分でやらないなら誰が誰にやるかって、アレックスが、僕にだ。
なんかえっちのときより恥ずかしくない?
ブラシで中を擦るんでしょ?
気持ちよくなっちゃったらどうしよう?その後ご飯なのに。
「セオも使うの?」
「俺は浄化です」
「ずるい」
「俺は妊娠しませんもん。苦手だとしてもやらなきゃならないことからは逃げたくないってさっき仰ってたばかりでしょ?」
「うー……」
確かに言った、言ったよ?
言ったけどさ……。
こういうことを言ったんじゃないよ。
一方的に根掘り葉掘り聞きだすんじゃないし、必要な情報だけを聞き出して次、ってわけでもない。
セオ自身のことは、聞かないと喋らないけれど、僕自身のことを聞かれてばかりって感じもしない。
リラックスした状態で、近しい人と日常会話を楽しんでいる感じがすでに出来上がってる。
セオの人柄なんだろうけれど、それってすごいことだと思う。
「季節ごとのイベントとか、その季節にしか味わえない、食べ物ややることも好きだよ」
「お芋掘りもとても楽しそうでしたもんね。年末年始もお祝いがありますし、来年の春にはお花見もしましょうね」
「うん。あとは、ダンスと歌とピアノは続けたいな、体術はセオから教えてもらうからいいとしてーー」
「見てからですー、まだ教えるって決定してませんー」
「もーわかってるよ。あ、ダンスは先生を呼んでくれるって言ってたけれど」
「ええ、打診中ですから決まったらお教えしますね」
「ありがとう」
僕が習ってきたダンスとは違うだろうけれど、アレックスと共にいて相応しいダンスを踊れるようになりたい。
ただでさえ、ぽっと出の、降ってわいた得体のしれない、神器様っていう存在なんだもん。
僕が、生粋の貴族男性だったらともかくとして、さ。
それに、闇属性のアレックスが結婚した相手、だ。
良くも悪くも注目されること間違いなしだ。
逆手にとって、印象を良くして、立場を有利にしておきたい。
「レン様、逆にやりたくないことってないんですか?苦手なこととか、物とか、これだけはご免だーってこと」
「え?やりたくないこと?うーん……」
「ほら、なんかあるでしょー?」
やりたくないことか……って何があるかな?
「意識の問題かもしれないけれど、苦手だとしてもやらなきゃならないことだって出てくるかもしれないでしょ?
立場上のこともだし、ここで暮らしていくためのことも。
そういう時に、逃げたくないんだ。
だから、それはもう、やりたくないんじゃなくて、やってみたいって言うんだと思うんだよね」
「……レン様は本当にいい子ですねえ」
「そうかな?あ、でも……うん。アレックスの嫌がることとか悲しむことはしたくないな。
それは、例え必要であってもやりたくない。
やらなくてすむ別の方法を考える」
「なるほど」
「答えになってる?」
「ええ、十分です。……あ、アレックス様帰ってきたみたいですね。
爺さまと話されてますが、すぐに、このままこちらに向かわれると思いますよ」
「わかった……あれ?」
「どうしました?」
「ねー、セオ、綺麗にしましょうって言ってたけど、浄化じゃいけないの?」
「んー……浄化だと全部取り去ってしまう可能性もありますからね、普通に洗浄具で綺麗にしましょ」
「え……シャワーとかじゃなくて?」
「お湯そのものよりお体の負担も少ないです」
洗浄具ってなに?って思ってると、こういうのです、と物を見せてくれる。
ナイトポーションのようにとくに装飾品はなくて、ただの真っ白な針のない注射器みたいに見える。
なんていうか、どっちかっていうと医薬品みたいな感じだ。
太さは人差し指一本分くらいで、てのひらに納まる大きさだった。
「これ、どうやってどうなるの?お尻の中に入れるんだよね?」
「ええ、押し出すと、中の洗浄液とスポンジが出るので、それで洗う感じですね。
その後、こちらで洗い流します」
そう言って、もう一つコトリと置かれたのは、大きな浣腸みたいな瓶だ。
えー……なんか怖い、あんまりやりたくない。
「これ使わないといけないの?」
「痛くないですよ?沁みたりもしません」
「でも……じゃあ、自分でやる」
「使い方わかります?」
「………」
そんなのわからないよ、初めて見たんだし。
でも、今セオが言ったようにやればなんとかなるものじゃないの?
僕が自分でやらないなら誰が誰にやるかって、アレックスが、僕にだ。
なんかえっちのときより恥ずかしくない?
ブラシで中を擦るんでしょ?
気持ちよくなっちゃったらどうしよう?その後ご飯なのに。
「セオも使うの?」
「俺は浄化です」
「ずるい」
「俺は妊娠しませんもん。苦手だとしてもやらなきゃならないことからは逃げたくないってさっき仰ってたばかりでしょ?」
「うー……」
確かに言った、言ったよ?
言ったけどさ……。
こういうことを言ったんじゃないよ。
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