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明かりが落とされて、満天の星空が見えるこの湯船は本当に温泉みたいで、なんだかお湯も柔らかい感じがする。
ただそう感じてるだけなのだけれど、本当に特別感があるお風呂だ。
その雰囲気も、今は僕を後押ししてくれるみたいに思える。
すぐ隣で湯につかるアレックスの左腕を両手でそっと引き寄せる。
僕とは違って、しっかりとした骨格。
筋肉が綺麗についていて、頼もしくも優しい腕だ。
アレックスは急かすことなく、僕が話すまで待っててくれてる。
そういうところも、優しい。
「セバスとセオに聞いておきたかったことはね、僕のできる避妊について、だったんだ」
「………」
アレックスの身体に、力が入ったのが分かった。
手元からアレックスへと視線を移す。
「向こうの世界では避妊は特別珍しいことじゃなくて一般的だったから、僕にも出来ることがあるならしておかないとって思って。
初めてで嬉しくてそういうのまで頭が回らなかったけれど、ちゃんとしなきゃって思ったんだ。
でも、セバスとセオに、こっちの世界では避妊は一般的じゃないって教えてもらって。
アレックス、子供必要ないって言ってたから、出来たら困るかなって思ったんだけど」
「………」
そこまで言って、僕は口を閉ざす。
アレックスは驚いた顔のままじっと僕を見ていて、何も言葉にしてくれない。
というか、出来ないのかもしれない。
「僕は神器だから、避妊しないでえっちしたら赤ちゃんが出来るかもしれない。
というか、そのための身体になったわけで、し続けたらきっといつかは出来ちゃうと思うんだ。
アレックスは、子供、欲しくない?」
「……すまない」
あ、そんなふうに苦しそうに謝れると、僕も苦しくなる。
セバスの言っていたように、アレックスは闇属性でずっと悩んで苦しんで寂しい思いをしてきた人だ。
僕との間に出来る子供は、100パーセントで闇属性。
同じように寂しい思いをさせたくないって思っても当然だ。
「ううん、良いんだ。でも、それならーーー」
それなら、僕はアレックスとしたいのは変わらないから、別の方法を考えなくちゃ、と伝えようとしたところで、アレックスに両手を包まれて引き寄せられる。
僕とアレックスを中心にして、ちゃぽんと、水面の波紋が綺麗に広がった。
両手に口づけを受ける。
優しい口づけだ。
でも、アレックスの表情は苦しそうに歪んだままだ。
「そんな風に悩ませてすまない。
確かに、子供は必要ない、跡継ぎは養子を取ればいいと俺は言った」
「うん」
「俺とレンとの間に出来る子供は、どうしても闇属性だ」
「うん」
「属性は変えられるものじゃない」
「うん」
「俺にはレンがいるからいい。
けど、同じ苦労をさせることが分かってて、俺が子供を望むなんて出来ない、そう思ってる」
「うん」
そっか、やっぱりそこは根深いみたいだ。
アレックスが欲しくないのに出来ちゃったら、やっぱり困るよね。
そこまで拒むのなら、えっち自体も難しいかな?
入れて抜き差しするだけが、全てじゃないって分かってる。
なにより、アレックスからの愛情を疑うなんて微塵もない。
「でも……欲しくないわけじゃない」
「ん?」
「本音を言えば、欲しくないわけじゃない。
欲しいっつーのは……どうしても言えない。
けど、欲しくないわけじゃない。
子供は必要ない、望むのはただのエゴだ、望んじゃいけない、そう思う。
情けないって、本当に自分でも思う。
けど……もし、もし、子供が出来たら、それはきっと、すげー愛しいものだと思う」
ああ、そっか。
僕は勘違いしていたみたいだ。
すまないって言ったのは、子供が出来たら困るか困らないかじゃなくて、ただ、本当に純粋に僕を悩ませちゃったことに対してだったみたいだ。
アレックスの葛藤と思いが伝わってくる。
優しいアレックスは、僕が考えるよりもっと先を、物事を深く考えちゃう人だ。
子どもが出来る神器の僕とのえっちも、拒む要素なんてない。
ちゃんと、求めてくれてるんだ。
アレックスの、今の本音が聞けて嬉しい。
きっと、大丈夫だって思う。
アレックスと同じような寂しい思いも辛い思いもしないと思う……というか、させないよ?
「それじゃあ、出来ても困らない?」
「ああ」
「じゃあ……もしこの先子供が出来たら、その時は、喜んでくれる?」
「ああ、もちろん」
「よかった。
……アレックス、大丈夫だよ」
「?」
きっとアレックスはいい父親になれると思う。
「アレックスがそう思ってくれるなら大丈夫。
僕だって、アレックスとの間に出来たらね、嬉しいって思うんだ。
だから、その時はたくさんふたりで愛してあげたらいいって思う。
アレックスと同じような辛いことにはならないよ?」
「……けど、俺らだって年をとるんだ。
いつかは先に亡くなるんだぞ?
そしたら、その先ずっとひとりでーーー」
「そしたら、ふたり目も頑張るよ」
「え?」
ひとりじゃ寂しいなら、ふたりいればいい。
そう思うのは、安易すぎるかな?
「ふたりなら寂しくないでしょう?」
僕も一人っ子だからきょうだいっていうのには少しだけ憧れがある。
アレックスが思ってもみなかったような顔で驚いた後、綺麗な笑みを見せてくれる。
アレックスは立派に大人だけれど、完璧じゃない。
人間だし、誰しもが完璧な人なんていない。
僕は、アレックスにとってみたら、まだまだ未熟なことばかりだ。
けれど、僕もアレックスも少しずつ成長していけるはずだ。
この先、僕らの未来が明るいものになるかは、僕とアレックスの行いにかかってる。
頼りにされたい、頼れる人でありたい。
僕らには、頼れる家の人たちがいて、友人がいる。
ひとりじゃないし、ふたりだけでもない。
きっと、大丈夫だ。
「アレックス、今日は最後までしてくれる?」
「っ……わかった」
ただそう感じてるだけなのだけれど、本当に特別感があるお風呂だ。
その雰囲気も、今は僕を後押ししてくれるみたいに思える。
すぐ隣で湯につかるアレックスの左腕を両手でそっと引き寄せる。
僕とは違って、しっかりとした骨格。
筋肉が綺麗についていて、頼もしくも優しい腕だ。
アレックスは急かすことなく、僕が話すまで待っててくれてる。
そういうところも、優しい。
「セバスとセオに聞いておきたかったことはね、僕のできる避妊について、だったんだ」
「………」
アレックスの身体に、力が入ったのが分かった。
手元からアレックスへと視線を移す。
「向こうの世界では避妊は特別珍しいことじゃなくて一般的だったから、僕にも出来ることがあるならしておかないとって思って。
初めてで嬉しくてそういうのまで頭が回らなかったけれど、ちゃんとしなきゃって思ったんだ。
でも、セバスとセオに、こっちの世界では避妊は一般的じゃないって教えてもらって。
アレックス、子供必要ないって言ってたから、出来たら困るかなって思ったんだけど」
「………」
そこまで言って、僕は口を閉ざす。
アレックスは驚いた顔のままじっと僕を見ていて、何も言葉にしてくれない。
というか、出来ないのかもしれない。
「僕は神器だから、避妊しないでえっちしたら赤ちゃんが出来るかもしれない。
というか、そのための身体になったわけで、し続けたらきっといつかは出来ちゃうと思うんだ。
アレックスは、子供、欲しくない?」
「……すまない」
あ、そんなふうに苦しそうに謝れると、僕も苦しくなる。
セバスの言っていたように、アレックスは闇属性でずっと悩んで苦しんで寂しい思いをしてきた人だ。
僕との間に出来る子供は、100パーセントで闇属性。
同じように寂しい思いをさせたくないって思っても当然だ。
「ううん、良いんだ。でも、それならーーー」
それなら、僕はアレックスとしたいのは変わらないから、別の方法を考えなくちゃ、と伝えようとしたところで、アレックスに両手を包まれて引き寄せられる。
僕とアレックスを中心にして、ちゃぽんと、水面の波紋が綺麗に広がった。
両手に口づけを受ける。
優しい口づけだ。
でも、アレックスの表情は苦しそうに歪んだままだ。
「そんな風に悩ませてすまない。
確かに、子供は必要ない、跡継ぎは養子を取ればいいと俺は言った」
「うん」
「俺とレンとの間に出来る子供は、どうしても闇属性だ」
「うん」
「属性は変えられるものじゃない」
「うん」
「俺にはレンがいるからいい。
けど、同じ苦労をさせることが分かってて、俺が子供を望むなんて出来ない、そう思ってる」
「うん」
そっか、やっぱりそこは根深いみたいだ。
アレックスが欲しくないのに出来ちゃったら、やっぱり困るよね。
そこまで拒むのなら、えっち自体も難しいかな?
入れて抜き差しするだけが、全てじゃないって分かってる。
なにより、アレックスからの愛情を疑うなんて微塵もない。
「でも……欲しくないわけじゃない」
「ん?」
「本音を言えば、欲しくないわけじゃない。
欲しいっつーのは……どうしても言えない。
けど、欲しくないわけじゃない。
子供は必要ない、望むのはただのエゴだ、望んじゃいけない、そう思う。
情けないって、本当に自分でも思う。
けど……もし、もし、子供が出来たら、それはきっと、すげー愛しいものだと思う」
ああ、そっか。
僕は勘違いしていたみたいだ。
すまないって言ったのは、子供が出来たら困るか困らないかじゃなくて、ただ、本当に純粋に僕を悩ませちゃったことに対してだったみたいだ。
アレックスの葛藤と思いが伝わってくる。
優しいアレックスは、僕が考えるよりもっと先を、物事を深く考えちゃう人だ。
子どもが出来る神器の僕とのえっちも、拒む要素なんてない。
ちゃんと、求めてくれてるんだ。
アレックスの、今の本音が聞けて嬉しい。
きっと、大丈夫だって思う。
アレックスと同じような寂しい思いも辛い思いもしないと思う……というか、させないよ?
「それじゃあ、出来ても困らない?」
「ああ」
「じゃあ……もしこの先子供が出来たら、その時は、喜んでくれる?」
「ああ、もちろん」
「よかった。
……アレックス、大丈夫だよ」
「?」
きっとアレックスはいい父親になれると思う。
「アレックスがそう思ってくれるなら大丈夫。
僕だって、アレックスとの間に出来たらね、嬉しいって思うんだ。
だから、その時はたくさんふたりで愛してあげたらいいって思う。
アレックスと同じような辛いことにはならないよ?」
「……けど、俺らだって年をとるんだ。
いつかは先に亡くなるんだぞ?
そしたら、その先ずっとひとりでーーー」
「そしたら、ふたり目も頑張るよ」
「え?」
ひとりじゃ寂しいなら、ふたりいればいい。
そう思うのは、安易すぎるかな?
「ふたりなら寂しくないでしょう?」
僕も一人っ子だからきょうだいっていうのには少しだけ憧れがある。
アレックスが思ってもみなかったような顔で驚いた後、綺麗な笑みを見せてくれる。
アレックスは立派に大人だけれど、完璧じゃない。
人間だし、誰しもが完璧な人なんていない。
僕は、アレックスにとってみたら、まだまだ未熟なことばかりだ。
けれど、僕もアレックスも少しずつ成長していけるはずだ。
この先、僕らの未来が明るいものになるかは、僕とアレックスの行いにかかってる。
頼りにされたい、頼れる人でありたい。
僕らには、頼れる家の人たちがいて、友人がいる。
ひとりじゃないし、ふたりだけでもない。
きっと、大丈夫だ。
「アレックス、今日は最後までしてくれる?」
「っ……わかった」
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