異世界に召喚された二世俳優、うっかり本性晒しましたが精悍な侯爵様に溺愛されています(旧:神器な僕らの異世界恋愛事情)

日夏

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本編

-171- お土産と差し入れ

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「レン様から、皆さんへもお土産がありますよ」

牛型ケーキを食べ終わったタイミングでセバスがみんなに声をかけてくれた。
みんなが僕に驚いたような視線を向ける。
奥からワゴンで持ってきてくれたのは、みんなを驚かせるためにわざとかな?

「うん、僕も買ってきたよ?まだ皆の好みがわからなかったけど、セオも一緒に選んでもらったから安心してね。
セバスは赤ワインが好きだって聞いたから、黄色いチーズにしたんだ」
「ありがとうございます」
セバスは、目を細めて嬉しそうにお礼を言ってくれた。

「アニーはドライフルーツが好きだって聞いたから、たっぷり練りこんであるチーズにしたよ」
「まあ、ありがとうございます。いただくのが楽しみです」
「イアンは、ナッツと蜂蜜のクリームチーズにしたよ」
「レン様、ありがとうございます!これを使って美味しいジェラートを作ります!」
「ふふ、イアンも食べてね」

セオが仕事人間だって言った通り、イアンはこれを使ってジェラートを作りたいみたいだ。

「マーティンの分は、黒胡椒の油漬けチーズなのだけど、戻るまでイアンに預けてもいい?」
「はい、勿論です。こりゃあ色々使えそうですね!きっと喜ぶと思いますよ!」
「もー、自分で食べて良いんだからね?」

料理に使うだろうっていうのは、セオの読み通りだ。

「レナードは、黒いチーズにしたよ」
「黒いチーズ、ですか…」

あ、嫌そうな顔。
レナードってわりと顔に出るんだよね。
エリソン侯爵邸のみんな表情豊かだし、そういう中で育ったら正直にもなるかな?
僕相手ならその方が自然だしいいなとは思う。

「うん。食べるとびっくりするよ。あ、良い意味でね?同じびっくりを味わって欲しくて買ったんだ」
「…ありがとうございます」
「大丈夫だって、レオン。お前が気に入るだろう味だから」

セオがにっと笑う。
セオがいうならきっと大丈夫だ。
長く一緒に暮らしてるんだもん。

「ロブとロンとトムとジュードには、焼き菓子のセットにしたよ。
甘い物は好きだって聞いたし、休憩中にも手軽に食べられると思って」
「「ありがとうございます!」」
「レン様、ありがとうございます、大切に食べます」
「…俺にもですか?」
ロブとロンの声が重なり、トムはにこにこ笑顔でお礼を言ってくれた。

ジュードは意外な顔で僕を見る。
一緒に行ったのに、ってことだろう。

「うん。自分にお土産買わないって聞いたし、折角だから」
「俺も白いチーズを買ってもらいました」
「ありがとうございます」

笑って焼き菓子を受けとるジュードは嬉しそうだ。
皆に喜んでもらえてよかった。
美味しいものは正義だと思う。
それに、お土産や差し入れって、もらえると嬉しいよね。
今回はセオが一緒に居たから外れはないと思うけれど、万が一好みが外れてしまっても“お土産”や“差し入れ”は嬉しいものだ。
その人が自分のことを考えて、買ってきてくれた気持ちだし。
相手からの善意の気持ちだもん。

勿論みんながみんな、嬉しいと感じるとは思っていない。
中には、お返しが面倒だとか、好みじゃないもの貰っても困るだとか思う人もいるかもしれない。
実際、舞台のときに差し入れでぽろっとこぼしてるのを、聞いたことがある。




『蓮君って差し入れとか面倒って思ったことないの?ファンの子のとかってどうしてる?
手作りとか超迷惑だし、舞台祈願の守りとかマジで扱いに困るし、花も持ち帰るの面倒だし、菓子は期限があるしさあ』

僕が魔道士役、聞いてきた彼、玲治れいじ君は王子役でヒーローポジションだ。
とは言え、このミュージカル舞台のヒーローは実質二人、勇者もヒーローポジションだった。
若手アイドルグループのセンターを務めている玲治君は、自分の魅せ方をわかってる上に、他人から求められている自分というのも的確に理解している人だった。
その反面、裏表が激しいし、相手によって態度も全然違う。
歌もダンスも基礎がしっかりしているし、映画にも出ていて実力もあったけど、良く言えば向上心が高い、悪く言えばかなりの負けず嫌いだと思った。
僕は芸歴が長い上に同い年ということもあって、表面上は僕に対して好意的だった。

『手作りは受け取れないって予め公表してるよ。
スタンドのお花は届いたら一度は目にして、人の通りが多いところに飾らせてもらってる。
公演に来てくれる日が分かってるなら、札とお花はその日までは出してもらって、届いた日は写真も撮ってアップするよ。
花束は持ち帰るよ。
スタンドのお花は公演後回収まで手配してくれてる人もいるんだけれど、そうじゃないときは女性のスタッフさんとか、既婚者のスタッフさんとかを中心に分けちゃう。
全部マネージャー頼みになっちゃってるけど、毎回嬉しそうにやってくれるマネージャーだから助かってるよ』

花の数や差し入れの数が多くなるにつれて、彼女はとても嬉しそうだ。
嬉々として写真を撮って、同業者の場合はしっかり来る日付もチェックしてる。
ファンからのものも同様だ。

『お菓子は、量があったら、その日に開けるか次の日に開けて楽屋に出しちゃうことが多いかな。
少なかったら、スタッフさん分と出演者分と分けたりするよ。
お菓子の差し入れも、写真を撮ってもらってる。
お守りはね、事務所の箱…事務所っていっても家なんだけれど、入れる箱があるんだ。
そこに入れて、年の終わりにお焚き上げしてもらってるよ。
手紙は、持ち帰って公演後時間があるときに読むよ』
『へえ……、手紙は読んでどうすんの?』
『差し入れもだけれど、宛先が書いてあるのは、お礼のはがきを出してるよ』
「ふーん……」

自分で聞いてきたけれど、なんだか面倒臭そうな、納得してなさそうに返されたのを覚えている。

『僕はまだそこまでファンが多いわけじゃないから手が届いてるけれど、玲治君はファンが多いから大変そうだね?』
『そうなんだよなあ…。ほら、服とかは着れるから助かるんだけれどさー』

うーん…僕はファンから服をもらったら、無理してないかな?って心配しちゃうなあ。
玲治君の着てるのって、ブランド物だしカットソーだけでも5、6万するだろうし。
でも、僕自体がブランドにこだわりがないからかな。
考え方は人それぞれだと思うし。
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