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本編

-167- 青い小鳥

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みんなに見送られて、孤児院を後にする。
大きく手を振ってくれるみんなに、僕も大きく手を振り返す。

「アレックス、連れてきてくれてありがとう!」
「俺からも。一緒に来てくれてありがとう、レン」
「ん?うん」

お礼を言うのはぼくの方だと思っていたけれど、アレックスから僕へ、ありがとうの言葉がやさしく降ってきた。
誰でもないアレックスに言われると、凄く嬉しくなる。

テンは相変わらず丁寧に歩いてくれてる。
来た道とは違う道だ。
野原を抜けて、森へと入っていく。

「歌、良い歌だったな」
「アレックスへ歌ったよ?」
「ああ、届いてた。ありがとう」
「よかった」
「また、歌ってくれ」
「うん。いつでも。……帰りは行きと違って、休憩なしって聞いてるけど、このままずっと森を抜けてくの?」

帰りの道は休憩なしで通りますよ、とセオから聞いていたけれど、森を抜けて薔薇農園に出るのかな?
地図がないから良く分からないや。
地図を見せて欲しいと言ったら、地図はアレックスが持ってるから聞いてみて欲しいと言われたんだ。
元の世界の感覚だと、地図なんて誰でも目に出来るけれど、この世界はそうではないみたいだ。
正確な地図も、他領の地図はないみたいだ。
道やざっくりした場所はわかるけれど、細部まで行き届いた地図はエリソン侯爵領だけみたい。
それも、厳重に保管して、目に出来るのは限られてる人だけ。
防衛のためにそうなってるんだって。

「や、森を抜けた先に、花卉栽培をしている農地に出る。
エリソン侯爵領は薔薇が有名なんだが、それ以外の観賞用の花も育てていて、帝都の花市場へ出荷をしているんだ。
今もまだ綺麗に咲く場所があるから、その間を進むぞ。
あとは、遠目で眺めるだけになってしまうが、比較的大きな学校が見えるからそれもレンに見て貰おうと思っている」
「そうなんだ、楽しみ。行くときは、侯爵邸から西に向かったけれど、帰る道は南から北に向かってるの?」
「ああ、そうだ。行きはバークレイ子爵の領地を通ったが、帰りはワグナー子爵の領地を通るルートだ。
孤児院は丁度バークレイ子爵とワグナー子爵との間にあるから、どちらの子爵家も孤児院を気にかけてくれてる」
「お芋も分けるって言ってたもんね」
「ああ」


森の道って言っても、凸凹していない道だ。
アレックスが整備してるって言っていた通り、馬たちも歩きやすそう。
森を切り開いている道だけれど、ちゃんと共存できている感じがする。
手を付けないところ、自然に任せるところは自然に、と、うまく残しているみたいだ。

少し日の影が出来る道で、暑くなり過ぎなくて、木漏れ日と時折優しく吹く風が心地いい。
あまり聞いたことないトゥルルンという可愛い鳴き声に上を見上げると、真っ青で綺麗な鳥がいた。
小さくて雀みたいな大きさなんだけれど、丸くてとっても鮮やかで可愛い。

「わあ、綺麗な鳥だね。あの鳥はなんていうの?」
「ああ、あれは、ルリアという鳥だ。
青い宝石のような美しい羽を持つ鳥として、ここエリソン侯爵領の森に住んでいる鳥の一種だな」
「エリソン侯爵領でしかいないの?」
「帝国で目撃されたのは、いまのところエリソン侯爵領のみだ。
昔は羽根が綺麗だからと乱獲が後を絶たず、一時期かなり減ってしまったんだ。
今は、領内で保護種として指定してる。
少しずつだが増えてきているから、今は、森で見かけるのもそう珍しくなくなった」

捕まえたり、まして他領へ持ち出すことは禁止されているんだって。
ペット目的で繁殖させたりすることも、だ。
それでも、街中や迷い込んでしまったものについては、届け出のもと領民が保護することも可能としている。

なんと、たまに人間の言葉を話すという。
やがて森に帰すことが義務付けられているけれど、それだと森に帰ったルリアが人間の声を放つときがあるのかな?

「いきなり人間の言葉を話したらみんなびっくりしないの?」
「や、そういう鳥だと認識されているからな。
保護したルリアだけじゃなく、こうやって森を抜けたり、木陰で休む人を聞いて覚えてしまうんだろう。
態と森で言葉を放って、喋ったらいいなと期待をする輩もいるみたいだが」
「例えば?」
「フィーテルいい街、是非お立ち寄りを、だとか、〇〇店は美味しいぞ、とか、な…そこは、まあ…黙認だ」
「アレックスはびっくりしたことないの?」
「あるぞ、頭上から名前を呼ばれて見上げたらルリアだった。その時初めてルリアが喋る鳥だと知ったんだ。さすがに驚いた」
「それはびっくりするね!」

今日見たルリアは、可愛い鳥の鳴き声だけだったけれど、いつか喋るルリアにも会ってみたいな。
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