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本編

-164- みんなの名前と絵本の読み聞かせ

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美味しいお昼ごはんを食べ終わったら、お昼寝のイメージだったけれど、お昼寝が必要なのはパーシーとネロだけだった。
パーシーとネロも、来年にはお昼寝は卒業するみたい。
お昼寝の時間も、30分と短めだ。
パーシーとネロは、お昼寝も僕と一緒が良いと言い出したけれど、本格的に愚図る前にリリーが引き取った。
本当にしっかりしたお姉ちゃんだ。
最終的には、『いい子にしないと、レン様が来てくれなくなっちゃうわよ』だ。
お昼寝から起きてもちゃんといるから、といって送り出すと、今度は早く寝なくちゃ!といってリリーの手を引っ張っていく。
やんちゃだけれど素直で可愛い子たちだ。

そうそうお昼の後、片づけをする前に一人一人僕に自己紹介をしてもらったよ。
まだ直接話をしていない子もいたから、提案してよかった。
僕がみんなの席を回って、名前と歳と好きなものや好きなことを教えてもらった。
将来なりたいものも言ってくれる子もいたよ。
一言二言しか声をかけられなかったけれど、皆のことが知れて良かった。

そして、このあとの時間は、ばらばらだ。

ルカは一度部屋に戻って、ひとり考える時間が欲しいそうだ。
10歳以上は、ひとり部屋なんだって。

ジュードはジャックを含む3人の男の子たちに、庭で剣を教えてる。
お昼の時にジュードにしがみついていた男の子は、ピッポで、7歳。
ジュードのように大きくて優しい人になりたいんだって。
彼も一緒に剣を習っている。

もうひとりは、お昼の時はアレックスの隣にいたビート。
彼も7歳。
孤児院に来たばかりなんだって。
好きなものはまだわからないと言ってたから、好きなことが見つかったら教えてねと伝えたよ。
体は小さいけれど、すでに体幹が良さそうに見える。
かなり真剣な様子だから、将来が楽しみだ。

アレックスは、ギーと、それからロッテという9歳になる女の子と一緒に話をしていた。
丸眼鏡で三つ編みのロッテは、本が大好きで将来は学校の先生になりたいって言ってた。


それから、セオは、髪の長い女の子たち二人ににせがまれて髪をアレンジ中だ。
因みに、執事ごっこでもある。
リサとキャシーは共に8歳で、リサはお菓子が大好きで、将来はカフェ店員になりたい子だ。
キャシーは、おしゃべりとお洒落が大好きで、編み物が得意な子だ。
8歳にして編み物?と思ったけれど、本当に綺麗なレースのコースターを見せてくれたよ。

「お嬢さま方、今日はどういたしますか?」

セオが投げやりに言葉を放ってる。
リサとキャシーは、ぷっと膨れてセオを見上げて不満げだ。
ちゃんとしたらセオも執事みたいに出来るんだろうけれど、それは本人のやる気次第だよね。

「私たちは、練習台になってあげてるのよ?もう少しありがたく思って」
「レン様が髪が長くなった時にアレンジの出来が悪かったら困るでしょ?もうちょっと優しくして」
「はいはい、優しくしてますよー。で?どんなのがいいの?」
「今日は頭に薔薇を作ってほしいの。太さの違う編み込をくるくる丸めたら薔薇みたいになると思わない?」
「私は、髪で大きなリボンを作ってほしいの。ポニーテールでお願いね」
「うええ?また面倒くさそうなのよく考えるねー」

口では色々言いながら、セオは丁寧にブラッシングしていく。
ふたりとも楽しそうだ。


「レン様、これ読んで」
「私はこれ」

セオの執事ごっこの近くで、僕は女の子二人に絵本を読むことになった。
モニカとエミー、共に6歳だ。
エミーは、お芋掘りの時にミミズを見せに来てくれた女の子で、虫が好きみたい。
持ってきた本も、みつばちのくらし、と書かれている。
モニカの持ってきた絵本は、お姫様のと王子様が描かれている絵本だ。
花姫さま、と書かれている。
貴族男性ばかりな世界だけれど、絵本のお姫様、女性なんだなあ、なんて思っちゃう。
二人とも読んで欲しい本を一冊ずつ選ぶように言ったんだけれど、悩みに悩んで持ってきてくれた。

「いいよ、じゃあ順番ずつね」
「「うん」」




めでたしめでたし、と終えようとしたところで、ふと気が付くと皆が僕の絵本の読み聞かせを聞いていたようだった。
僕の座っている左右には絵本を覗き込むエミーとモニカがそれぞれ座っているんだけれど、
庭にいた子たちも剣を片手に上り口から覗いていたし、ギーとロッテも近くに来ていたし、
ネロとパーシーとリリーは向かい側に、ルカもいつの間にか近くにに座ってる。

おしゃべりしていたリサとキャシーもこっちを見てる。
二人の髪型はしっかりセットされていて、より可愛くなっていた。
本当にセオは器用だなあ。

本を閉じたところで、皆からの拍手が鳴った。

「レン様、すげー!」
「姫も王子も別人みたいだ」
「何度も聞いた話だけど、とっても面白かった」

エミーとモニカが真剣に聞いてくれてたから、僕も調子よく本気を出して読んじゃった。
アレックスも聞いていたみたいだ、笑顔で拍手をくれた。
小さいことだけれど、俳優としての水原蓮も役に立つんだなって改めて思える。
侯爵夫人として貴族としてアレックスの横に立つのは勿論だけれど、エリソン侯爵領内でも発揮できる場所がある。
それが、凄く嬉しい。

「レン様は絵本を読むのがとっても上手ね!他には何が上手なの?」
エミーが興味津々で聞いてくる。
「ん?うーん…」

他には何が、かあ。
殺陣とカンフーなんて知らないよね。
あ、ここには大きなピアノがあるんだっけ。

「ピアノを弾くのは好きだよ」
「え?ピアノが弾けるの?聞きたい!」
「大きいのがあるのよ!グレース様が弾いて、皆でお歌を歌うの」

「みんなの歌聞いてみたいな」
「レン様弾いてー!」


「みなさん、ホールに移動しましょうか」

グレース様がぱん、と両手を合わせてにこやかに声をかけられた。
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