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本編
-163- レンの美徳と浄化魔法 アレックス視点
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「アレックス、僕の不注意だよ?」
レンが、上目遣いにそっと告げてくる。
くそ可愛い顔だが、絆されるわけにはいかない。
それに、レンも、自分の責任で自分の従者が怒られることもあると、慣れて欲しい。
「ああ、それでもだ」
「ごめんね、セオ」
「良いんですよ。鎌もスコップもないからって油断したのは俺ですからねえ」
本当に反省したような顔で謝るレンに、セオはバツの悪そうな笑顔を向けた。
悪いと思ったら素直に謝れるのは、レンの美徳とするところだ。
その相手が使用人であってもだ。
思っていても、出来ない人間は多い。
貴族なら一緒に怒り出す奴も一定数いるだろう。
“お前のせいで、俺が汚れた”と。
そんな主人、仕えたくは無いだろうが。
「…セオもお芋ちゃんと選んだ?」
「はい、掘った人の特権って言われたら、有難くいただきます」
「なら良かった」
セオが手にしてるのは手頃な大きさの芋2本だが、しっかり美味いだろう芋を選んだようだ。
二人とも笑顔で、今回のことを引きずることもなさそうで安心する。
「それはそうと、そろそろ飯だな。切り上げて中入るぞ」
子供たちに向けて声をかけると、数人のちびっこ達が声をあげながら玄関へと向かって走り出す。
それを見たリリーが、声をはりあげながら、後ろから追いかけていく。
いつもの見慣れた光景だ。
「アレックス」
「ん?」
「子供たちに浄化したらダメなの?」
レンが囁き声で聞いてくる。
レンにしてみれば、その方が楽だし簡単だと思ったのだろう。
だが、小声で聞いてくるあたり、出来ない何かがあるのかを、疑問に思った結果なんだろうな。
「浄化魔法は、魔力が7から8はないと使えない魔法なんだ。リリー、ギー、ルカは比較的魔力が高いから使えるだろうが、他の子は3~5程度しかない。
毎回誰かの手を借りるのではなくて、自分で出来ることをやるんだ。
魔力が高いなら高いなりに使いこなせるようコントロールを磨くためなるべく使うし、低いなら低いなりの方法を身に着けていかなければならない。
浄化してやるのは楽だし早いが、そこは俺たちが手を貸しちゃならない」
「そっか」
納得して小さく頷くレンを堪能していると、奥からジャックの声がかかった。
「アレックス様ー!今日、ジュードは来てないの?」
「来てるぞ!剣を見てもらいたいなら、飯食ってからにしろー」
「わかったー!」
ジャックはジュードがくると必ず剣を習っている。
嬉しそうにかけて行った。
「レン様」
「ん?どうしたの、ルカ」
「レン様の浄化って、どうなってそうなるの?」
「ん?どうなってって、綺麗になあれって思うと、こうなるよ?」
「………」
ルカがレンに向かって興味津々な目を向けている。
レンは…、ルカの歳を誤解していそうだな。
綺麗になあれって思うと、こうなる、なんて答えで、11歳のルカが納得するはずない。
案の定、残念そうな顔を隠さないルカを目にし、それはそれで珍しいか、と思ってしまう。
レンは子供に対するあたりが柔らかい上に、なるべく同じ目線で接しているようだ。
他の子たちは引き上げても、足を止めたまま二人の会話は繰り広げられた。
「体を浄化するときは、お風呂上りを想像しながらやってるよ。
洋服は、洗濯後の洗いあがりを想像して浄化したよ」
なるほど。
…その風呂上がり仕様の浄化魔法は、家の中だけにしてもらわないと可愛すぎて俺が困る。
魔法に関しては少しずつ覚えていけばいいが、浄化に関してはなるべく急ごう。
「じゃあ、2回かけたの?」
「うん、そうだね」
「そっか、だからか」
「なんか、ルカ的に気になることあった?」
「普通、浄化は一度かけるだけだから全体が同じ色に包まれて見えるんだ。
けど、レン様は、服と体の色が違ったから、どうやったのかなって思って」
「え?普通一回で終えるの?」
「うん」
「でも、洋服と体は洗い方全然違うでしょ?」
「浄化って洗うんじゃなくて、汚れを取るって考えるけど…なんか、レン様の浄化って、他の人と違うね」
「えー、そうかな?」
「うん。いい匂いしてる」
「お風呂上りみたいなものだからね」
「うん…だから、違うなって。お風呂上りね……なるほど」
魔法のない世界ならではの観点なのだろうか。
自慢ありげにお風呂上りを主張するのは可愛すぎて困る。
ルカはレンに対して恋愛的感情は一切なさそうに見えるが、今後そういう奴が出てくるとも限らないだろ。
それにしても、子供相手でも適当に答えないレンは、本当に優しいな。
ちゃんと聞き返しているあたり、子供のペースに合わせるのも上手い。
途中からどっちが大人だか分からない会話になっているが…微笑ましい光景だ。
だが、このままだとずっと話を続けてしまうと昼飯に遅れてしまう。
「二人とも、その辺にして中入るぞ」
「はーい」
返事が良いのも、レンの長所だな。
レンが、上目遣いにそっと告げてくる。
くそ可愛い顔だが、絆されるわけにはいかない。
それに、レンも、自分の責任で自分の従者が怒られることもあると、慣れて欲しい。
「ああ、それでもだ」
「ごめんね、セオ」
「良いんですよ。鎌もスコップもないからって油断したのは俺ですからねえ」
本当に反省したような顔で謝るレンに、セオはバツの悪そうな笑顔を向けた。
悪いと思ったら素直に謝れるのは、レンの美徳とするところだ。
その相手が使用人であってもだ。
思っていても、出来ない人間は多い。
貴族なら一緒に怒り出す奴も一定数いるだろう。
“お前のせいで、俺が汚れた”と。
そんな主人、仕えたくは無いだろうが。
「…セオもお芋ちゃんと選んだ?」
「はい、掘った人の特権って言われたら、有難くいただきます」
「なら良かった」
セオが手にしてるのは手頃な大きさの芋2本だが、しっかり美味いだろう芋を選んだようだ。
二人とも笑顔で、今回のことを引きずることもなさそうで安心する。
「それはそうと、そろそろ飯だな。切り上げて中入るぞ」
子供たちに向けて声をかけると、数人のちびっこ達が声をあげながら玄関へと向かって走り出す。
それを見たリリーが、声をはりあげながら、後ろから追いかけていく。
いつもの見慣れた光景だ。
「アレックス」
「ん?」
「子供たちに浄化したらダメなの?」
レンが囁き声で聞いてくる。
レンにしてみれば、その方が楽だし簡単だと思ったのだろう。
だが、小声で聞いてくるあたり、出来ない何かがあるのかを、疑問に思った結果なんだろうな。
「浄化魔法は、魔力が7から8はないと使えない魔法なんだ。リリー、ギー、ルカは比較的魔力が高いから使えるだろうが、他の子は3~5程度しかない。
毎回誰かの手を借りるのではなくて、自分で出来ることをやるんだ。
魔力が高いなら高いなりに使いこなせるようコントロールを磨くためなるべく使うし、低いなら低いなりの方法を身に着けていかなければならない。
浄化してやるのは楽だし早いが、そこは俺たちが手を貸しちゃならない」
「そっか」
納得して小さく頷くレンを堪能していると、奥からジャックの声がかかった。
「アレックス様ー!今日、ジュードは来てないの?」
「来てるぞ!剣を見てもらいたいなら、飯食ってからにしろー」
「わかったー!」
ジャックはジュードがくると必ず剣を習っている。
嬉しそうにかけて行った。
「レン様」
「ん?どうしたの、ルカ」
「レン様の浄化って、どうなってそうなるの?」
「ん?どうなってって、綺麗になあれって思うと、こうなるよ?」
「………」
ルカがレンに向かって興味津々な目を向けている。
レンは…、ルカの歳を誤解していそうだな。
綺麗になあれって思うと、こうなる、なんて答えで、11歳のルカが納得するはずない。
案の定、残念そうな顔を隠さないルカを目にし、それはそれで珍しいか、と思ってしまう。
レンは子供に対するあたりが柔らかい上に、なるべく同じ目線で接しているようだ。
他の子たちは引き上げても、足を止めたまま二人の会話は繰り広げられた。
「体を浄化するときは、お風呂上りを想像しながらやってるよ。
洋服は、洗濯後の洗いあがりを想像して浄化したよ」
なるほど。
…その風呂上がり仕様の浄化魔法は、家の中だけにしてもらわないと可愛すぎて俺が困る。
魔法に関しては少しずつ覚えていけばいいが、浄化に関してはなるべく急ごう。
「じゃあ、2回かけたの?」
「うん、そうだね」
「そっか、だからか」
「なんか、ルカ的に気になることあった?」
「普通、浄化は一度かけるだけだから全体が同じ色に包まれて見えるんだ。
けど、レン様は、服と体の色が違ったから、どうやったのかなって思って」
「え?普通一回で終えるの?」
「うん」
「でも、洋服と体は洗い方全然違うでしょ?」
「浄化って洗うんじゃなくて、汚れを取るって考えるけど…なんか、レン様の浄化って、他の人と違うね」
「えー、そうかな?」
「うん。いい匂いしてる」
「お風呂上りみたいなものだからね」
「うん…だから、違うなって。お風呂上りね……なるほど」
魔法のない世界ならではの観点なのだろうか。
自慢ありげにお風呂上りを主張するのは可愛すぎて困る。
ルカはレンに対して恋愛的感情は一切なさそうに見えるが、今後そういう奴が出てくるとも限らないだろ。
それにしても、子供相手でも適当に答えないレンは、本当に優しいな。
ちゃんと聞き返しているあたり、子供のペースに合わせるのも上手い。
途中からどっちが大人だか分からない会話になっているが…微笑ましい光景だ。
だが、このままだとずっと話を続けてしまうと昼飯に遅れてしまう。
「二人とも、その辺にして中入るぞ」
「はーい」
返事が良いのも、レンの長所だな。
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