異世界に召喚された二世俳優、うっかり本性晒しましたが精悍な侯爵様に溺愛されています(旧:神器な僕らの異世界恋愛事情)

日夏

文字の大きさ
上 下
138 / 445
本編

-138- フィーテル アレックス視点

しおりを挟む
「この街、フィーテルは、5、6年前にようやく今の形になった街なんだ。
祖父さんの代まで、ずっと道と住宅整備をしていてな、人が住めるようになって、そこで暮らす人が徐々に増えて、そうすると物が必要になって。
だが、最初から綺麗に整備し過ぎたせいか、今度は新たに店を増やす敷地が足りなかったんだ」
「お店がないの?」
「一階が店や事務所になっている建物は多いんだ。
雑貨や服、花屋やレストランもあるし、それから各ギルドの支店も区画のどこかに入っている。
警備隊の詰所もある。
暮らす場所と仕事場があっても、実際暮らしていく上で必要な食を調達する場所が少なすぎた。
菓子店とパン屋は複数あるんだが、小麦や野菜や果物、肉、調味料なんかが全く足りてなかったんだ」
「だから、マルシェに?」
「ああ。だが、最初からあの形になったわけじゃない。
最初は、勝手に路上でものを売り始める者が出てきて、それがどんどん増えていったんだ。
場所取りで揉める者が出てきたり、大広場や比較的幅の広い道があるんだが、そこで荷馬車が通れなかったりと、問題が起きてな。
ならば、そのための区画や時間帯も整備することになって、今の形に出来上がったんだ」
「だから建物が新しくて綺麗なんだね」
「今も少しずつ人が増えているから、それに合わせて区画も広がってる。
最初は朝だけ、野菜や果物や肉が多かったんだが、今は朝と夜に、決まった時間違う店が開かれて毎日賑わってる。
夜は、酒だとか、食べながら歩けるように工夫された料理が多い。
朝でも買い物客や出勤前の客を見込んで朝食を売りにしている店もちゃんとあって、人気店は朝から行列が出来るらしい」

「家で食べるのとはかなり違って庶民向けになるんだが、大丈夫そうか?」
「ん?うん、ファストフードも好きだよ」
「ファストフード?」

にこやかに答えるレンの言う、ファストフードというのは聞きなれない言葉だった。

「あー…こっちじゃ言わないのかな、その場で注文してすぐ食べられるようなごはん」
「ああ、普通に屋台飯って言い方をすることが多いかもしれないな。だが、抵抗がないなら良かった。
スープやパンが中心なんだが、ジュードとセオの方が店に詳しいだろうから二人に任せよう」
「アレックスは、食べたことある?」
「何度かあるぞ。ただ、店側もよく新商品を出すし、季節によって限定品を出してくるから、前に食べた商品がもう売ってないこともあるんだ。
客も美味しいものを求めてくるから、こうしたほうがもっと売れるだとか、もっと旨くなるだとか言ってくる奴もいる。
そうすると店側もプライドを刺激されて早いと次の日にはその商品を出してくる」
「え?次の日?」
「ああ。あまりにも気軽にほいほいやるもんだから、最初相談を受けたときには慌てたぞ。
マルシェで食べ物を出店している多くの人が、商人ではなくて料理人なんだ。
自分の独立した店舗を持ちたい者や、帝都からの出戻りも多い。
もう店を持ってるのに、この街が気に入って、週に一度だけ出店してる料理人もいる。
料理の知識は大きいが、特許権や食品登録に疎くてな。
だが、自由に売るために必要性を諭して、最近は食品登録もするようになってきた」

食品登録というのは、食べ物に関する特許権の一種で、真似して粗悪品が増えるのをさけるために作られた帝国の規則だ。
外から金儲けに目がくらむ商人や貴族が関わらないうちに、いくつかのギルドを巻き込んで領内で独自の取り決めも行った。

登録するには本来金がかかる。
本人が登録するのが一番いいが、金銭的に厳しい場合、ギルドや領主に権利を売ることで金銭負担を無くすことを出来るとした。
勿論査定はある。
権利の割合や負担も比較的自由に選べるようになってるし、各ギルド員と役人が合同で受持つ独自の食品登録専用窓口を設けた事務所も新しく作った。
知識に疎い者であっても、公平に正しい知識を教えた上で、双方納得した登録を選べるようになっている。
フィーテルの街は年々利益を生み出し、右肩上がりだ。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~

いちき
BL
王道学園で起こるアンチ王道気味のBL作品。 女の子大好きなチャラ男会計受け。 生真面目生徒会長、腐男子幼馴染、クール一匹狼等と絡んでいきます。王道的生徒会役員は、王道転入生に夢中。他サイトからの転載です。 ※5章からは偶数日の日付が変わる頃に更新します! ※前アカウントで投稿していた同名作品の焼き直しです。

処理中です...