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本編
-102- 魔法士としての在り方 アレックス視点
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「今度の補佐官は続きそうだと思ったが合わないか?」
「合わないっていうか……っ僕はね、これだけやってる僕と君を悪く言う奴とは、仲良しこよし出来ないだけさ。
君がいないと仕事が回らないのが現状なのはわかってるよ?わかってるさ、けれど、じゃあどうしろっていうんだい?
膨大な資料や品を管理してるのは僕だけど、実際保管してくれているのも君だ。
あいつが代わりにやってくれるのかい?無理だろう?僕にも無理だよ。
僕が上に立つ度量じゃない?当然さ!
自分が一番よーくわかっているよ!だから家も継いじゃいないし、こんなとこで副官なんてやってるんだろ!
無能な癖に、図体だけじゃなくて口も態度もでかいなんて、使える使えない以前の問題だね!」
ああ、地雷を踏んだか。
俺が頑張ってるか…はともかくとして、ユージーンは頑張っている。
それはもう、人一倍どころか何倍もだ。
やりたくてやっている仕事だろうし、就きたい仕事につけたのだろう。
だが、現状本来のやりたいこととは多少ずれてしまっているのも理解している。
頑張っている人間に対して、ダメ出しをするやつは世の中一定数いる。
だったらどうしたらいいんだ?お前がやってみろ、というと大概黙る。
出来ない上にするつもりもないからだ。
出来ないんなら文句を言うな、と言ったところか。
ダメ出しはないな、それも、ユージーンに対して。
だが、この分だと補佐官本人に対しても相当ブチ切れた後だろうなあ。
それでも潰れずに、何か思うところがあればいいんだが。
俺のことは、まあ、あの表情をされたから、大体は想像がつく。
「俺が化け物とでも言われたか?そんなん初めてじゃないし、ただのやっかみだ。
お前はそうやって毎回怒ってくれるが、今更気にすることじゃないぞ」
「っ君はそんな風に言われて悔しくないのかい?僕はとてつもなく悔しいね!」
ああ、やっぱりな。
こういう奴だから、俺の友人なんて続けられてるんだろう。
「お前は頑張りすぎなくらい頑張ってるさ、同じことを誰でも出来ることじゃない。
それは、俺にも言えるだろ?
自慢じゃないが、10人で分けたってこの量を片付けるのには一週間はかかるはずだ。
一日で修復出来てるのは俺だからだっていうのは理解しているさ」
「…一週間どころか一か月かけたって終わらないよ。
君を無理やりひっぱりこんだのは僕だ。
領主にしたって君は立派にこなしているだろ?あれだけ領民に慕われてるところなんて他領じゃ考えられないさ。
本来なら、領主一本で良いところを、僕がひっぱりこんだんだ。
でも、君に辞められたら困る」
弾丸のように勢いが良かったが、急にしおしおとしょげてユージーンが呟く。
まだ気にしているのか?
もう気にせずに、俺を使いたいだけ使ったらいいんだが、そう出来ないくらいには良い奴なんだ。
「確かに最初はひっぱりこまれた感はあるが、これでもやりたくてやってるから気にしないで良いぞ?」
「え?」
「魔法陣の修復と修正は、まあ最近特に量は多いが、出来高だしな。
ちゃんと手当で貰ってるんだ。
それに、お前の言う『こんなものが欲しい』というのは作り甲斐があるし、実際俺も使わせてもらってる。
家も領もより便利になってるから、気に病む必要はない」
「君は本当に優しくて懐が大きいよね……、僕は冷たくて心が狭い上にちっさい懐しか持ち合わせてないよ」
「お前のは懐が小さいわけじゃないだろ?
見栄を張るわけでも自慢話するわけでもないし、肩書じゃなくちゃんと人を見てるじゃないか。
他人のことに耳を傾けて動いてるからこそ忙しくなってるんだから、お前で心が狭いなら他の奴らは心もない奴らだ。
そうやって自分の非を認めてしおしおとしおれて、他人のことまで考えてぷんすか怒れるんだから、十分優しいと思うぞ」
確かに余裕がなくなるほど働きすぎてそれが顔と行動に出てはいるが、この仕事量じゃ懐の量が問題じゃない。
やはり、少しずつでもなにか現状打破に動かないとまずいのかもしれないな。
「でも、そうだな。もう少し俺も周りのことを考えてもいいのかと思った。
面倒かもしれないが今度から俺の片付けた魔法陣の修復と修正は、依頼した奴に戻してもらえるか?
今はそのまま処理してるだろうが、戻せば学ぶことがあるかもしれない」
「それは…いいのかい?」
「何が?」
「だって、これらを戻すってことは、君のその知識を盗まれることになるだろ?」
「知識なんて出し惜しみしたってしょうがないだろ、盗めるものなら盗んでなんぼだ。
俺が講義したところで人は集まらないだろうから、俺の修正と修復で学べるものがあるなら目で見て学んでほしい。
そうすりゃ、俺もお前も少しずつ仕事が減ってくかもしれないだろ?」
「………」
びっくりした目でユージーンが見つめてくるが、知識や経験は人に伝えるからこそ意味があるんだと思うんだが、違うのか?
隠し持つもんでもないだろうが。
「そういった知識や経験は、通常、子や弟子にくらいしか教えないよ。そうやって伝えて育てて、家の財産とするんだ」
「俺の知識は財産にするようなものでもないから良いぞ」
「君の知識の認識って、そういうものなの?」
「ああ、そういうもんだ」
「わかった。なら、そうする。…それと、来年新人採用後に、研修をしたいといったら、講師役を引き受けてくれるかい?」
「そうだな…、俺だけじゃ恐れられてなんも頭に入ってこない奴が出ても困る。助手でお前がつくなら」
「わかった。考えてみる」
「合わないっていうか……っ僕はね、これだけやってる僕と君を悪く言う奴とは、仲良しこよし出来ないだけさ。
君がいないと仕事が回らないのが現状なのはわかってるよ?わかってるさ、けれど、じゃあどうしろっていうんだい?
膨大な資料や品を管理してるのは僕だけど、実際保管してくれているのも君だ。
あいつが代わりにやってくれるのかい?無理だろう?僕にも無理だよ。
僕が上に立つ度量じゃない?当然さ!
自分が一番よーくわかっているよ!だから家も継いじゃいないし、こんなとこで副官なんてやってるんだろ!
無能な癖に、図体だけじゃなくて口も態度もでかいなんて、使える使えない以前の問題だね!」
ああ、地雷を踏んだか。
俺が頑張ってるか…はともかくとして、ユージーンは頑張っている。
それはもう、人一倍どころか何倍もだ。
やりたくてやっている仕事だろうし、就きたい仕事につけたのだろう。
だが、現状本来のやりたいこととは多少ずれてしまっているのも理解している。
頑張っている人間に対して、ダメ出しをするやつは世の中一定数いる。
だったらどうしたらいいんだ?お前がやってみろ、というと大概黙る。
出来ない上にするつもりもないからだ。
出来ないんなら文句を言うな、と言ったところか。
ダメ出しはないな、それも、ユージーンに対して。
だが、この分だと補佐官本人に対しても相当ブチ切れた後だろうなあ。
それでも潰れずに、何か思うところがあればいいんだが。
俺のことは、まあ、あの表情をされたから、大体は想像がつく。
「俺が化け物とでも言われたか?そんなん初めてじゃないし、ただのやっかみだ。
お前はそうやって毎回怒ってくれるが、今更気にすることじゃないぞ」
「っ君はそんな風に言われて悔しくないのかい?僕はとてつもなく悔しいね!」
ああ、やっぱりな。
こういう奴だから、俺の友人なんて続けられてるんだろう。
「お前は頑張りすぎなくらい頑張ってるさ、同じことを誰でも出来ることじゃない。
それは、俺にも言えるだろ?
自慢じゃないが、10人で分けたってこの量を片付けるのには一週間はかかるはずだ。
一日で修復出来てるのは俺だからだっていうのは理解しているさ」
「…一週間どころか一か月かけたって終わらないよ。
君を無理やりひっぱりこんだのは僕だ。
領主にしたって君は立派にこなしているだろ?あれだけ領民に慕われてるところなんて他領じゃ考えられないさ。
本来なら、領主一本で良いところを、僕がひっぱりこんだんだ。
でも、君に辞められたら困る」
弾丸のように勢いが良かったが、急にしおしおとしょげてユージーンが呟く。
まだ気にしているのか?
もう気にせずに、俺を使いたいだけ使ったらいいんだが、そう出来ないくらいには良い奴なんだ。
「確かに最初はひっぱりこまれた感はあるが、これでもやりたくてやってるから気にしないで良いぞ?」
「え?」
「魔法陣の修復と修正は、まあ最近特に量は多いが、出来高だしな。
ちゃんと手当で貰ってるんだ。
それに、お前の言う『こんなものが欲しい』というのは作り甲斐があるし、実際俺も使わせてもらってる。
家も領もより便利になってるから、気に病む必要はない」
「君は本当に優しくて懐が大きいよね……、僕は冷たくて心が狭い上にちっさい懐しか持ち合わせてないよ」
「お前のは懐が小さいわけじゃないだろ?
見栄を張るわけでも自慢話するわけでもないし、肩書じゃなくちゃんと人を見てるじゃないか。
他人のことに耳を傾けて動いてるからこそ忙しくなってるんだから、お前で心が狭いなら他の奴らは心もない奴らだ。
そうやって自分の非を認めてしおしおとしおれて、他人のことまで考えてぷんすか怒れるんだから、十分優しいと思うぞ」
確かに余裕がなくなるほど働きすぎてそれが顔と行動に出てはいるが、この仕事量じゃ懐の量が問題じゃない。
やはり、少しずつでもなにか現状打破に動かないとまずいのかもしれないな。
「でも、そうだな。もう少し俺も周りのことを考えてもいいのかと思った。
面倒かもしれないが今度から俺の片付けた魔法陣の修復と修正は、依頼した奴に戻してもらえるか?
今はそのまま処理してるだろうが、戻せば学ぶことがあるかもしれない」
「それは…いいのかい?」
「何が?」
「だって、これらを戻すってことは、君のその知識を盗まれることになるだろ?」
「知識なんて出し惜しみしたってしょうがないだろ、盗めるものなら盗んでなんぼだ。
俺が講義したところで人は集まらないだろうから、俺の修正と修復で学べるものがあるなら目で見て学んでほしい。
そうすりゃ、俺もお前も少しずつ仕事が減ってくかもしれないだろ?」
「………」
びっくりした目でユージーンが見つめてくるが、知識や経験は人に伝えるからこそ意味があるんだと思うんだが、違うのか?
隠し持つもんでもないだろうが。
「そういった知識や経験は、通常、子や弟子にくらいしか教えないよ。そうやって伝えて育てて、家の財産とするんだ」
「俺の知識は財産にするようなものでもないから良いぞ」
「君の知識の認識って、そういうものなの?」
「ああ、そういうもんだ」
「わかった。なら、そうする。…それと、来年新人採用後に、研修をしたいといったら、講師役を引き受けてくれるかい?」
「そうだな…、俺だけじゃ恐れられてなんも頭に入ってこない奴が出ても困る。助手でお前がつくなら」
「わかった。考えてみる」
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