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本編
-85- 信用 アレックス視点
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「体を触られた?」
「はい、下着の上からだそうですが、そうおっしゃっていました」
セバスの目の前に出ても、特に驚きはしなかったようだ。
魔力の気配を先に察知できるセバスは、俺がセバスのもとに来るのをわかっていたようだった。
にしても、体を触られた?
なぜ、俺のもとに来ない。
何のために、先に転移魔法を教えたと思ってる?
というか、なぜ、2人きりにさせたんだ。
「セオはレン様の意図を察してついたてのそばで控えていましたが、耳は良くとも透視は出来ません」
「ああ」
「招いたのはこちら。王族はともかく、貴族の場合、成人していれば、別室はともかくとしてついたての奥、通常採寸に見張りを出すことはしません」
「ああ、わかっている」
「ですが、レン様は、ちゃんと今後はアニーかセオに傍にいてもらえるようお願いしていましたよ」
「…そうか」
だとしたら、取引中止だけでは緩い。
「領への出入りを禁止する、勿論通行もだ。テイラー商会に関するもの全てだ」
「テイラー商会の奥方は、モリス公爵領の男爵出身だそうですが」
「禁止しろ。警備隊長と検問所へ直接命令書を出す。警備隊は、各自衛団へ通達するよう伝えろ。
それから、帝都の店舗と取引してる各商会にも命令書を出す」
「畏まりました」
「レンはどうしている?」
「セオに任せて書斎にいらっしゃいます」
「そうか…レオンは?」
「洋服店に先触れを出しに行かれましたが、そろそろ戻るころかと。
…ああ、帰ってきたようですね、先に話されますか?」
「ああ。あいつの口からも聞いておきたい」
「畏まりました」
厳しい視線をレオンへ向けると、レオンは硬い表情を俺に向け、頭を下げてくる。
「俺はレンを、神器様としてじゃなく侯爵夫人として扱うように言ったはずだが?言葉が足りなかったか?」
「…いえ」
「お前はよく効率化を求めるが、レンを試すと同時にテイラー商会を失脚させたかったのか?
自分が試した相手が誰だかよく考えろ。レンを気に入らない理由はなんだ?」
「申し訳ございません」
「謝ってほしいわけじゃない。あと、謝る相手が違う。で、理由はなんだと聞いている」
「レン様が、神器だから……それだけでした」
神器だから信用できない、か。
レオンらしいっちゃらしい。
だが、レオンは自分以外誰も信じないようなところがある。
もちろん、俺や、セオ、ジュード等は仕事に関しては信用しているんだろうが、人として信用しているかというと少し足りない気がする。
レオンは子供が嫌いだ、だから、孤児院に行くときには連れていかない。
場所が場所なので、乗馬だ。
セオとジュードがいれば十分だった。
だがもしかすると、理由は別にありそうだ。
一度無理矢理にでも連れて行った方が良いのか?
仕事は出来るし、見通しも良い。
だが、どこか信用していない。
人は裏切るもの、そう思っている節があるな……。
それだけです、ではなく、それだけでした、と口にしていることは、恐らくレンに対しての見方は変わったんだろう。
一応、確認しておくか。
「今はどう思う」
「ふふっ…ああ、すみません。…説教されました。ウィリアム様以来です」
「説教?レンに?」
「ええ…、偏見を直せ、と。あなたのそばにいるなら、もっと、人そのものを見て、今後は目を養えと。
私は…すぐには人を信じられません。
ですが、人そのものを見ることのできるように、精進します」
「わかった。…店を任されたようだな、どこにしたんだ?」
洋服店は、レンがレオンへ頼んだ、と聞いた。
出かけることになったが、領内だ、それは別に構わない。
だが、試された相手に対して、信用のおける店に先触れを出せ、とはなかなか言えないことだと思う。
言われた方もびっくりするだろうし、この店に、ではなく、店まで任されたのだ。
どの店にしたのかは、先に聞きたい。
万が一によっては……店を変える必要がある。
「クロッシェにいたしました」
「理由は?」
クロッシェという店は、確かに貴族向けの服も扱っているが、商家のお嬢様や庶民の服を扱っていてそちらが主流だ。
けして悪い店ではないが、三店舗の内一番規模が小さく、俺の服も普段着であってもそこで頼んだことは過去にない。
俺自身にとっては、店の情報が足りない。
「宝石でなく刺繍がいいと、そうおっしゃっていたので」
「レンが?」
「はい。演技ではなく、きっと本心からだと思いましたので。
刺繍とレースで定評のクロッシェを選ばせていただきました」
「そうか。…わかった、助かる」
「いえ…」
「飯食って出かける準備をしてくれ」
「はい。…アレックス様」
「なんだ?」
「おめでとうございます。心からの祝福を」
綺麗な笑みを浮かべて去っていくレオンを、俺は茫然と見つめてしまった。
「はい、下着の上からだそうですが、そうおっしゃっていました」
セバスの目の前に出ても、特に驚きはしなかったようだ。
魔力の気配を先に察知できるセバスは、俺がセバスのもとに来るのをわかっていたようだった。
にしても、体を触られた?
なぜ、俺のもとに来ない。
何のために、先に転移魔法を教えたと思ってる?
というか、なぜ、2人きりにさせたんだ。
「セオはレン様の意図を察してついたてのそばで控えていましたが、耳は良くとも透視は出来ません」
「ああ」
「招いたのはこちら。王族はともかく、貴族の場合、成人していれば、別室はともかくとしてついたての奥、通常採寸に見張りを出すことはしません」
「ああ、わかっている」
「ですが、レン様は、ちゃんと今後はアニーかセオに傍にいてもらえるようお願いしていましたよ」
「…そうか」
だとしたら、取引中止だけでは緩い。
「領への出入りを禁止する、勿論通行もだ。テイラー商会に関するもの全てだ」
「テイラー商会の奥方は、モリス公爵領の男爵出身だそうですが」
「禁止しろ。警備隊長と検問所へ直接命令書を出す。警備隊は、各自衛団へ通達するよう伝えろ。
それから、帝都の店舗と取引してる各商会にも命令書を出す」
「畏まりました」
「レンはどうしている?」
「セオに任せて書斎にいらっしゃいます」
「そうか…レオンは?」
「洋服店に先触れを出しに行かれましたが、そろそろ戻るころかと。
…ああ、帰ってきたようですね、先に話されますか?」
「ああ。あいつの口からも聞いておきたい」
「畏まりました」
厳しい視線をレオンへ向けると、レオンは硬い表情を俺に向け、頭を下げてくる。
「俺はレンを、神器様としてじゃなく侯爵夫人として扱うように言ったはずだが?言葉が足りなかったか?」
「…いえ」
「お前はよく効率化を求めるが、レンを試すと同時にテイラー商会を失脚させたかったのか?
自分が試した相手が誰だかよく考えろ。レンを気に入らない理由はなんだ?」
「申し訳ございません」
「謝ってほしいわけじゃない。あと、謝る相手が違う。で、理由はなんだと聞いている」
「レン様が、神器だから……それだけでした」
神器だから信用できない、か。
レオンらしいっちゃらしい。
だが、レオンは自分以外誰も信じないようなところがある。
もちろん、俺や、セオ、ジュード等は仕事に関しては信用しているんだろうが、人として信用しているかというと少し足りない気がする。
レオンは子供が嫌いだ、だから、孤児院に行くときには連れていかない。
場所が場所なので、乗馬だ。
セオとジュードがいれば十分だった。
だがもしかすると、理由は別にありそうだ。
一度無理矢理にでも連れて行った方が良いのか?
仕事は出来るし、見通しも良い。
だが、どこか信用していない。
人は裏切るもの、そう思っている節があるな……。
それだけです、ではなく、それだけでした、と口にしていることは、恐らくレンに対しての見方は変わったんだろう。
一応、確認しておくか。
「今はどう思う」
「ふふっ…ああ、すみません。…説教されました。ウィリアム様以来です」
「説教?レンに?」
「ええ…、偏見を直せ、と。あなたのそばにいるなら、もっと、人そのものを見て、今後は目を養えと。
私は…すぐには人を信じられません。
ですが、人そのものを見ることのできるように、精進します」
「わかった。…店を任されたようだな、どこにしたんだ?」
洋服店は、レンがレオンへ頼んだ、と聞いた。
出かけることになったが、領内だ、それは別に構わない。
だが、試された相手に対して、信用のおける店に先触れを出せ、とはなかなか言えないことだと思う。
言われた方もびっくりするだろうし、この店に、ではなく、店まで任されたのだ。
どの店にしたのかは、先に聞きたい。
万が一によっては……店を変える必要がある。
「クロッシェにいたしました」
「理由は?」
クロッシェという店は、確かに貴族向けの服も扱っているが、商家のお嬢様や庶民の服を扱っていてそちらが主流だ。
けして悪い店ではないが、三店舗の内一番規模が小さく、俺の服も普段着であってもそこで頼んだことは過去にない。
俺自身にとっては、店の情報が足りない。
「宝石でなく刺繍がいいと、そうおっしゃっていたので」
「レンが?」
「はい。演技ではなく、きっと本心からだと思いましたので。
刺繍とレースで定評のクロッシェを選ばせていただきました」
「そうか。…わかった、助かる」
「いえ…」
「飯食って出かける準備をしてくれ」
「はい。…アレックス様」
「なんだ?」
「おめでとうございます。心からの祝福を」
綺麗な笑みを浮かべて去っていくレオンを、俺は茫然と見つめてしまった。
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